ロンジン グリーンランダー

ロンジン・ミリタリーウォッチ「グリーンランダー」

ロンジン グリーンランダー




ロンジンのミリタリーウォッチ「グリーンランダー」は、第2次世界大戦中にイギリス国防省が定めた「W.W.W.」という基準に沿って製造された軍用時計「ダーティ・ダース」の1つです。

「W.W.W.」とは「Warch(時計)」「Wristlet(腕)」「Waterproof(防水)」の頭文字をとったもの。

この基準をクリアするには、正確で頑丈で信頼性があると同時に、クロノメーター基準を満たしたムーブメントを搭載し、水・粉塵や衝撃にも耐えられる必要がありました。

その他にも、黒のダイアル、アラビア数字インデックス、発光処理の施された時針・分針及びアワーマーカー、独立した秒針、線路をイメージしたミニッツトラック、飛散防止処理の施された風防、ステンレススチール製ケース、耐水性の竜頭など、細かくスペックが決められていました。

ムーブメントに関しては、クロノメーター基準を満たすのはもちろんのこと、11.75~13リーニュ(約26.5~29.3ミリメートル)と小さいサイズ、シンプルさ、石数15石であることも求められました。


ロンジン グリーンランダー



この「W.W.W.」基準をクリアしてイギリス国防省に時計を納入したのが、ロンジンを含む計12社のスイス時計メーカーでした。

その12社のスイス時計メーカーとは、アルファベット順に列記すると、ビューレン(Buren)、シーマ(Cyma)、エテルナ(Eterna)、グラナ(Grana)、ジャガー・ルクルト、レマニア、ロンジン、IWC、オメガ、レコード(Record)、ティモール(Timor)、そしてバーテックス(Vertex)です。

見た目もそっくりなこれらの時計はのちに、1967年に公開された戦争映画のタイトルをとって「Dirty Dozen(ダーティ・ダース)」と呼ばれるようになりました。



なぜ「グリーンランダー」と呼ばれているのか?


グリーンランド探検隊


ダーティー・ダースの中でこのロンジンの時計は、通称「グリーンランダー」と呼ばれています。

ミリタリーウォッチを紹介する本の中で、「イギリスが1952年から1954年にかけて北グリーンランドに派遣した探検隊がこの時計を腕につけていた」、と紹介されたのがきっかけです。

この探検隊はイギリス軍人と科学者から編成されており、イギリス軍も派遣に関わっていました。

しかしその後、この本の情報は間違いで、北グリーンランド遠征に携帯されていなかったことが判明しました。

実際に探検隊がグリーンランドに携帯したのは、「チューダー・オイスター・プリンス」という時計だったのです。


チューダー・オイスター・プリンス



グリーンランドに持って行っていないのだから「グリーンランダー」と呼ぶべきではない、という意見もあるようです。

しかしこの「グリーンランダー」という呼び方は広く浸透・定着しており、今でも使われ続けています。



「グリーンランダー」の特徴

ロンジン グリーンランダー


「グリーンランダー」の特徴としてまず挙げられるのは、38mmというケースサイズでしょう。

ダーティ・ダースの時計は、そのほとんどがケースサイズ36mm前後。

「グリーン・ランダー」はその中で一番サイズの大きな時計となっています。

竜頭も含めると41mm、ラグ幅は18mm、ラグの端から端まで縦に測ると48mmあります。

ケースはステンレススチールでできており、同時代のロンジン製時計の特徴であるステップベゼルが採用されているのが印象的です。


針にも特徴があります。

「グリーンランダー」が採用しているのはコブラ針。

コブラの頭に似た形をしているのでコブラ針と呼ばれていますが、海外では主に、教会にあるステンドグラスを連想させることから「カテドラル(Cathedral:大聖堂)針」と呼ばれています。

コブラ針はミリタリーウォッチによく見られますが、ダーティー・ダースの中で採用しているのはロンジンとジャガー・ルクルト(JLC)のみ。

ダーティー・ダースの中でも特にミリタリーウォッチらしいデザインとなっています。

ダーティー・ダース



そしてムーブメントにも特徴があります。

「グリーンランダー」に搭載されているのはロンジンの機械式手巻きムーブメント・12.68Z。

このムーブメントには金メッキが施されており、マイクロメーターレギュレータ、ブレゲ製のヒゲゼンマイが採用されています。

受け石は15石で、振動数は毎時18000振動、40時間パワーリザーブも付いています。

そして何より、ダーティー・ダースの中で唯一耐衝撃機能が付いているのが特徴です。

耐衝撃機能が付いていれば日常使いの時計として安心して使うことができるので、「グリーンランダー」はコレクターの間で特に好まれているのです。



このように、今の時代でも通用する38mmというケースサイズ、魅力的なステップベゼル、コブラ針、耐衝撃装置が人々を引きつけ、「グリーンランダー」はダーティーダースの中で特に人気の時計となっています。

ロンジン「グリーンランダー」は5000~8000個しか製造されていません。

そんな希少性も、「グリーンランダー」の人気を押し上げる理由の1つとなっているのです。