水辺に咲くアイリスを閉じ込めた、エミールガレの小品
フランス・ロレーヌ地方の古都ナンシーで、アール・ヌーヴォーのガラス芸術を切り拓いたのが、巨匠エミール・ガレです。
本作は、1905年から1908年頃にエミールガレの工房で制作された「アイリス」文の花瓶です。
高さ11.5cm、直径13.5cmの、ころんとした丸みのある器の周りに、すらりと伸びる葉と、紫の花を咲かせるアイリスがぐるりと描かれています。
本作は、無色透明のガラスの内側に黄色のガラスを被せ、外側に白・薄紫・緑の色ガラスを重ねた多層ガラスでつくられています。
その表面を、酸(アシッド)による腐食を何度も繰り返して少しずつ彫り下げることで、花びらや葉を浮き彫り(カメオ)のように立体的に表現しています。
黄色の下地: 内側の黄色が器全体をやわらかく照らし、春の陽だまりのような温かみを与えています。
薄紫と緑の重なり: 彫りの深さによって色の濃淡が生まれ、アイリスの花びらのしなやかさや、葉の重なりが繊細に描き分けられています。
アイリスは、ガレが生涯を通じて繰り返し取り上げた、最も象徴的なモチーフのひとつです。
日本の美術からも大きな影響を受けたガレにとって、すっと伸びる葉と気品ある花姿をもつアイリスは、ジャポニスムの美意識とナンシーの自然が重なり合う特別な花でした。
器を回すと、葉と花が途切れることなく続き、まるで水辺に群生するアイリスの中を歩いているかのような景色が広がります。
器の側面には、カメオ(浮き彫り)で「Gallé」のサインと星印が入っています。
この星付きのサインは、ガレの死を悼んで一定期間だけ用いられたもので、ガレ没後まもない時期の作品であることを示す特徴として、コレクターの間でも特に好まれています。
底部には、吹きガラスの竿を外した跡(ポンテ跡)を丁寧に磨き上げた仕上げが施されています。
手のひらに収まるほどの小品ながら、エミールガレの技と美意識がしっかりと詰まった一点です。書斎の棚やサイドテーブルに一輪の花を挿して飾れば、空間に気品ある彩りを添えてくれることでしょう。
高さ 11.5 cm
直径 13.5 cm
目立つ大きな欠け、割れ、傷なく、年代に対して良好なコンディションです。
カメオによる署名:Gallé(星印付き)があります。
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