黄金色に染まる木立と川面 ― 手のひらに収まる秋の情景
1900年代初頭、フランス・ロレーヌ地方の古都ナンシーは、自然の姿を芸術へと昇華させる「アール・ヌーヴォー」の中心地でした。
エミール・ガレと並び、その頂点に立ったドーム兄弟(ドーム・ナンシー)が、1910年頃に制作したのが本作「ペイサージュ・オートムナル(Paysage automnal/秋の風景)」文のボウルです。
直径15cm、高さ6.5cmの小ぶりな器の周囲を、秋色に染まる木立と静かに流れる川辺の風景がぐるりと取り囲み、ひとつの小さな額縁のような情景をつくり出しています。
1. 素材と技法:色ガラスの粉末とエナメル彩が描く、秋の光
本作は、無色透明のガラスの内部に黄色と淡い水色のガラス粉末を溶かし込み、さらに表面に黄色とマゼンタのガラス粉末を溶着させてつくられています。
ガラスの中と外に重ねられた色の層が、器全体にまだらで柔らかな色の揺らぎを生み、霞がかった秋の空気や、移ろう光の気配を表現しています。
その上に、酸(アシッド)による腐食で文様を彫り出す「酸化腐食彫(エッチング)」と、色とりどりの「エナメル彩」を組み合わせ、木々の幹や枝、色づいた葉を描き込んでいます。
2. モチーフ:秋の川辺の風景 ― ドーム兄弟が愛した季節の情景
ドーム兄弟は、四季折々のロレーヌ地方の風景を数多く作品に残しました。中でも、木々が色づく秋の景色は、エナメル彩の豊かな色彩が最も生きるモチーフのひとつです。
本作では、川辺に立ち並ぶ木々が黄金色やオレンジに色づき、その向こうに静かな水面と遠くの岸辺が広がっています。
器を回すと木立と川の景色が途切れることなく続き、まるで川沿いの小径を歩きながら、秋の午後の景色を眺めているかのような気分にさせてくれます。
3. 造形とサイン:愛らしいフォルムと、ドームの証
口縁がやわらかく波打つ愛らしいフォルムは、小ぶりながらも存在感があり、飾り棚やサイドテーブルに置くだけで、その場の空気を秋色に染めてくれます。
器の側面には、黒エナメルで「DAUM NANCY」のサインとロレーヌ十字が描かれています。
ロレーヌ十字はドーム兄弟が故郷ロレーヌへの誇りを込めて用いた紋章であり、本作がナンシーの工房で生まれたことを物語っています。
サイズ
状態
黒エナメルによる署名:DAUM NANCY、ロレーヌ十字があります。
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