ヴォージュの山並みを映す、しずく形の一輪挿し
フランス・ロレーヌ地方の古都ナンシーで、アール・ヌーヴォーのガラス芸術を切り拓いたのが、巨匠エミール・ガレです。
本作は1920年頃にエミールガレの工房で制作された「ペイサージュ・ヴォージャン(Paysage vosgien/ヴォージュの風景)」文の花瓶です。高さ17.5cmの、ふっくらとした胴から細くすらりと伸びる首をもつ優美なフォルムに、ロレーヌ地方の東に連なるヴォージュ山脈の情景が描かれています。
本作は、無色透明のガラスの内側に黄色のガラスを被せ、さらに外側に淡い水色と紫の色ガラスを重ねた多層ガラスでつくられています。
その表面を、酸(アシッド)による腐食を何度も繰り返す「酸化腐食彫(エッチング)」で少しずつ彫り下げることで、手前の木立から湖、遠くの山並みへと続く景色を、色の濃淡だけで描き分けています。
黄色の下地: 内側の黄色が器全体をやわらかく照らし、夕暮れ時の澄んだ空気のような温かみを与えています。
青と紫の重なり: 彫りの深さによって色の見え方が変わり、近景は濃く、遠景は淡く、奥行きのある風景が浮かび上がります。
ヴォージュ山脈は、ナンシーの人々にとって身近な故郷の山々であり、湖と森と山が織りなすその景色は、エミールガレの風景文の中でも特に人気の高いモチーフでした。
器を回すと、湖畔の木々と山並みが途切れることなく続き、まるで一枚のパノラマ写真を眺めているかのような広がりを感じさせます。
小ぶりながら景色の奥行きがしっかりと表現されており、エミールガレの職人たちの確かな技量を物語っています。
丸みを帯びた下部から細い首がまっすぐに伸びるしずく形のフォルムは、一輪の花を挿すだけで絵になる、飾りやすさも魅力のひとつです。
底部には、吹きガラスの竿を外した跡(ポンテ跡)を丁寧に磨き上げた仕上げが施されています。
器の側面には、カメオ(浮き彫り)で「Gallé」のサインが入っています。
書斎の棚や玄関、ダイニングの一角など、限られたスペースにもさりげなく飾ることができ、ヴォージュの澄んだ空気を暮らしの中に届けてくれることでしょう。
高さ 17.5 cm
目立つ大きな欠け、割れ、傷なく、年代に対して良好なコンディションです。
カメオによる署名:Gallé があります。
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