夕映えに浮かぶ、ヴォージュの山並み
フランス・ロレーヌ地方の古都ナンシーで、アール・ヌーヴォーのガラス芸術を切り拓いたのが、巨匠エミール・ガレです。
本作は1925年頃にエミールガレの工房で制作された「ラ・リーニュ・ブルー・デ・ヴォージュ(La ligne bleue des Vosges/ヴォージュの青い稜線)」文の花瓶です。高さ22cmの器全体に、ロレーヌ地方の東に連なるヴォージュ山脈の風景が描かれています。
1. 素材と技法:黄色の下地に重なる、水色と紫の遠景
本作は、無色透明のガラスの内側に黄色のガラスを被せ、さらに外側に水色と紫の色ガラスを重ねた多層ガラスでつくられています。
その表面を、酸(アシッド)による腐食を何段階にも分けて繰り返す「酸化腐食彫(エッチング)」で少しずつ彫り下げることで、手前の木立から湖、遠くの山並みへと続く景色を、色の濃淡だけで描き分けています。
2. モチーフ:「ヴォージュの青い稜線」― ロレーヌの人々の心の風景
「ヴォージュの青い稜線」という言葉は、遠くに青く霞んで見えるヴォージュ山脈の尾根を指し、ロレーヌの人々にとって故郷を象徴する特別な響きをもつ言葉です。
本作では、湖畔に立つ木々のシルエットの向こうに、水面と幾重にも重なる山並みが広がり、その稜線が淡い色で静かに描き出されています。
器を回すと、木立と湖と山並みが途切れることなく続き、まるでヴォージュの湖畔に立って、夕暮れの景色をぐるりと見渡しているかのような広がりを感じさせます。
3. 造形とサイン:風景を大きく映す、豊かなフォルム
大きく張り出した胴から、きゅっと締まった首へと続くフォルムは、胴の広い面に描かれた風景をパノラマのように見せてくれます。
底部には、吹きガラスの竿を外した跡(ポンテ跡)を丁寧に磨き上げた仕上げが施されています。
器の側面には、カメオ(浮き彫り)で「Gallé」のサインが入っています。
リビングの飾り棚や玄関に置けば、ヴォージュの澄んだ空気と夕映えの光を、暮らしの中に届けてくれることでしょう。
サイズ
状態
カメオによる署名:Gallé があります。
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