風車が佇む、凍てつくオランダの冬
19世紀末から20世紀初頭にかけて、フランス・ロレーヌ地方の古都ナンシーは、自然の姿を芸術の源とする「アール・ヌーヴォー」の一大拠点として栄えました。
エミール・ガレとともにその頂点に立ったドーム兄弟(ドーム・ナンシー)が、1900年頃に制作したのが本作「ペイサージュ・イヴェルナル・ネールランデ(Paysage hivernal néerlandais/オランダの冬景色)」文の花瓶です。
器の周囲には、雪に包まれた村、凍りついた池、そして静かに佇む風車が描かれ、北国の冬の澄んだ空気が、そのままガラスの中に閉じ込められています。
技法:三色の粉末が描き出す、冬の空のグラデーション
本作は、透明なガラスを二層に重ね、その間に淡い水色・黄色・マゼンタの三色の色ガラス粉末を溶かし込み、さらに表面に白い粉末を焼き付けてつくられています。
水色と黄色、そしてほのかなマゼンタが溶け合う背景は、冬の夕暮れに空が淡く染まる一瞬の光景を思わせ、表面の白が、降り積もった雪のやわらかな質感を表現しています。
その上で、酸(アシッド)によるエッチングで家並みや風車、木々を彫り出し、エナメル彩で描き込むことで、遠景から近景へと続く風景画のような奥行きが生まれています。
粉末による「空気」の表現と、酸とエナメルによる「風景」の表現。その重なりが、手のひらに収まる器に一枚の絵画のような世界を宿しているのです。
モチーフ:オランダの冬景色 ― 絵画の伝統を受け継ぐ主題
凍った運河や池、風車の立つ村を描いたオランダの冬景色は、17世紀のオランダ絵画以来、ヨーロッパで愛され続けてきた伝統的な主題です。
ドームはこの絵画的な主題をガラスという素材に置き換え、季節と光の移ろいを、器を回すたびに異なる場面として楽しめる「巡る風景」へと昇華させました。
ドームの風景文の中でも、風車を配したオランダの景色は特に人気が高く、コレクターの間で高く評価されているシリーズです。
底面には黒エナメルで「DAUM NANCY」のサインと「ロレーヌ十字」が記されており、本作がナンシーの工房で制作された正真の作品であることを示しています。
歴史的価値:名声が世界に響いた時代の、オリジナルの姿
1900年頃は、同年のパリ万国博覧会でドームがグランプリを受賞し、その名声が国際的に確立された、まさに黄金期にあたります。
本作は後年の手直しなどのない、制作当時のままのオリジナルの状態を保っており、120年以上の時を経た作品として大変貴重な一点です。
高さ11cm、長さ15cmの横に広がる愛らしいフォルムは、窓辺や書斎の机、リビングの飾り棚などに置くと、空間に静かな季節感と物語をもたらしてくれます。
冬の情景を一年中手元で愛でるという、当時の富裕層が求めた「アンダーステート・ラグジュアリー(控えめな贅沢)」を、現代の暮らしの中でお楽しみください。
サイズ
高さ 11 cm
長さ 15 cm
状態
目立つ大きな欠け、割れ、傷なく基本的良好な状態です。
ドーム兄弟の歴史についての詳細はこちらから↓
フランス仕入れレポート動画はこちらから↓
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