静かな池に咲く睡蓮と、すらりと伸びるオモダカ
フランス・ロレーヌ地方の古都ナンシーで、アール・ヌーヴォーのガラス芸術を切り拓いたのが、巨匠エミール・ガレです。
本作は1910年頃にエミールガレの工房で制作された「ネニュファール・エ・サジテール(Nénuphars et Sagittaires/睡蓮とオモダカ)」文の花瓶です。高さ24.5cmの器全体に、睡蓮とオモダカが茂る池の情景が描かれています。
1. 素材と技法:淡い黄色の下地に重なる、水色と紫の層
本作は、無色透明のガラスの内側に淡い黄色のガラスを被せ、さらに外側に水色と紫の色ガラスを重ねた多層ガラスでつくられています。
その表面を、酸(アシッド)による腐食を何段階にも分けて繰り返す「酸化腐食彫(エッチング)」で少しずつ彫り下げ、色ガラスの層を削り残すことで、水辺の植物を浮き彫りのように表現しています。
2. モチーフ:睡蓮とオモダカ ― ガレが愛した水辺の植物
自然をこよなく愛したガレにとって、池や沼に生きる水生植物は、生涯を通じて繰り返し取り上げた大切なモチーフでした。
本作では、水面に浮かぶ睡蓮の花と葉のあいだから、矢じりのような形の葉をもつオモダカ(サジテール)がすらりと伸び、静かな池の情景をつくり出しています。
器を回すと、睡蓮の丸みを帯びた花と、オモダカの鋭く伸びる葉が交互に現れ、やわらかさと緊張感が心地よく調和した、奥行きのある水辺の景色を楽しむことができます。
3. 造形とサイン:水辺の景色を包み込むフォルム
ふっくらとした胴からゆるやかに口へと向かうフォルムは、器を一周する池の景色を途切れることなく見せてくれます。
底部には、吹きガラスの竿を外した跡(ポンテ跡)を丁寧に磨き上げた仕上げが施されています。
器の側面には、カメオ(浮き彫り)で「Gallé」のサインが入っています。
花を挿さずとも一つの風景画として成立する本作は、リビングや書斎に飾れば、静かな水辺の涼やかな空気を暮らしの中に届けてくれることでしょう。
サイズ
状態
カメオによる署名:Gallé があります。
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