黄金色の地に咲く、紅紫のシクラメン
フランス・ロレーヌ地方の古都ナンシーで、アール・ヌーヴォーのガラス芸術を切り拓いたのが、巨匠エミール・ガレです。
1904年にガレがこの世を去った後も、その工房は「エタブリスマン・ガレ(ガレ工房)」として制作を続け、ガレが遺した意匠と技法を受け継ぐ数多くの名品を世に送り出しました。
本作は1920年頃に同工房で制作された「シクラメン」文の花瓶です。高さ20cmの、肩の張ったふくよかなフォルムの器に、反り返る花びらが愛らしいシクラメンの花と葉が、ぐるりと描かれています。
1. 素材と技法:黄色の下地に重なる、マゼンタと紫
本作は、無色透明のガラスの内側に黄色のガラスを被せ、外側にマゼンタ(紅紫)と紫の色ガラスを重ねた多層ガラスでつくられています。
その表面を、酸(アシッド)による腐食を何度も繰り返して少しずつ彫り下げることで、花や葉を浮き彫り(カメオ)のように立体的に表現しています。
2. モチーフ:シクラメン ― 冬から春を彩る花
シクラメンは、冬の寒い時期から春にかけて、蝶が舞うような形の花を咲かせる植物です。
自然を芸術の師と仰いだガレ工房では、身近な草花の姿を丹念に観察し、その特徴を意匠に落とし込みました。本作でも、上向きに反り返る独特の花びらや、ハート形の葉のかたちが見事にとらえられています。
器を回すと、花と葉が途切れることなく続き、見る角度ごとに異なる表情を楽しむことができます。
3. 造形とサイン:安定感のある、ふくよかなフォルム
肩が張り、裾に向かってすっと締まるふくよかなフォルムは、存在感がありながらも飾る場所を選ばない、使い勝手のよいかたちです。
底部には、吹きガラスの竿を外した跡(ポンテ跡)を丁寧に磨き上げた仕上げが施されています。
器の側面には、カメオ(浮き彫り)で「Gallé」のサインが入っています。
黄色と紅紫の華やかな色合いは、リビングや玄関に置くだけで空間を明るく彩ってくれます。季節の花を一輪挿して、ガレ工房の自然観を暮らしの中でお楽しみください。
サイズ
状態
カメオによる署名:Gallé があります。
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