アンティークシルバー イギリスやフランスのホールマークの見方や保管方法をご紹介
アンティークシルバーにあるホールマーク(刻印)の意味は?
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アンティークの銀器や銀器のジュエリー,アクセサリー等の美術品を手に取ってみると、小さな刻印が打たれていることにお気づきでしょうか?
これはホールマークといって、銀の純度、製造年、作者名などを表すもので、銀製品の品質を証明するために作られました。
時代、国や地域によって様々な刻印のパターンがありますが、銀器ならば基本的になんらかの刻印を見つけられることでしょう。
それでは、イギリス(英国)アンティークシルバー(銀器)等をコレクションする時に役立つ、ホールマークの基礎知識や、購入時のコツをご紹介いたします。
<イギリス製シルバーのホールマークの歴史>
ホールマークが銀製品に付けられたのは1300年。
当時、銀に混ぜ物をする行為が横行し、銀の品質低下が問題になっていました。
そんなシルバー(銀器)の品質を、管理する為にゴールドスミスホールという会社によって作られました。
その全てのシルバー製品は、アセイオフィスと呼ばれる機関にて鑑定されます。
その検査に合格したものは純銀であるとして、ライオンのマークが押されました。
これがホールマーク制度の始まりです。
これは、シルバー(銀器)製品の品質を保証するためで、認証された製品は各製品のパーツごとに印が刻印されていくのです。
このスタンプまたはシルバーホールマークは、過去数百年から今日までのシルバー製品の生産された場所と年を示すとともに製作者が分かります。
シルバー(銀器)製品のホールマークに関する法律は、大変厳しいもので、条件に合わない製品は、ホールマークの刻印はされず廃棄されます。
偽のホールマークは歴史上、法律でとても厳しく取り締まられてきました。
このような厳格な処罰が行われていたのは、銀や金の製造には貨幣の製造が関係していたからです。
ですから、銀や金の価値を下げる違反者は、領地の通貨の価値を下げてしまうことになるのです。
アンティークシルバー(銀器)のホールマークの見方
ホールマークには
・スタンダードマーク、
・アセイマーク(タウンマーク)
・デイトレター
・メーカーズマーク
・デューティーマーク
の5種類があります。
ここでは、それぞれのマークについて詳しく説明していきます。
・スタンダードマーク(The Standard Mark)
純銀には、2つのパターンの刻印があります。
ブリタニアの像とライオンの刻印です。
時代や地域によって様々な純度の銀製品が存在しますが、イギリス(英国)のスタンダードマークは、以下の2つを覚えておけば充分でしょう。
・ 歩くライオン(The Lion Passant)
スターリングシルバーマークと呼ばれることもありますが、ライオンが左を向いてる姿のマークは、純度92,5%の銀であることを示すマークです。
初めて金銀に使用されたのは1544年でした。
最初の2年間は王冠がありましたが、それ以降のものでイングランドのアセイオフィスで使用されている刻印には王冠はありません。
銀は柔らかい金属で、純度100%だと食器として強度に問題があるため、通常は銅を混ぜて強度を出しています。
この数値が92,5%より小さくても、スターリングシルバーとは認められません。
2つ目がブリタニアのマークです。
イギリスでは、1619〜1719年の間の100年間純銀の基準が950となりました。
そして、その時に押されていたのがこちらのブリタニアの刻印なのです。
純度が高いブリタニアシルバーは値段が高く、この改定に反対する職人もいました。
しかし一方で、純度が高い銀は加工しやすいため、支持するものもあり、職人の間でも賛否両論だったと言われています。
結局、1720年6月1日付けで旧基準が復活し、マークも以前のライオンマークに戻されることとなりました。
当時、これらのマークの信頼度は絶対的で、”銀貨が純銀でなくても、ライオンやブリタニアマークが付いている物は純銀だ”、と人々が言った程でした。
英国のシルバーアセイオフィスマーク
純銀の刻印と同時に、どこで検査されたかを証明するための刻印も押されるようになりました。
これをアッセイオフィスといい、銀が925以上であることを検査する施設になります。
そして、この基準に合格したものだけがアッセイオフィスマークの刻印を打たれるのです。
それでは、現在稼働している5つの施設をご紹介して参ります。
ロンドン 豹の頭
ロンドンで鑑定された商品には、ヒョウの顔が刻印されています。
このマークに1478年から1821年まで王冠がありました。
1821年以降、王冠がついていない豹の頭がロンドンのマークとなっています。
シェフィールドローズ(かつては冠)
シェフィールドのマークは王冠で、1733年のシェフィールドアセイフォイス創立当時は王冠が使用されていました。
しかし、1798年以降18ct金のクラウンマークと混同するのを防ぐために、シェフィールドのアセイオフィスはマークを1975年1月1日以降薔薇へと変更しました。
薔薇のマークは、シェフィールドのアセイオフィスが金製品のアセイマークとして、1904年3月1日以降使用していたものでした。
1708年から1853年の間、王冠は日付を示す文字と一緒に刻印されています。
バーミンガム いかり
バーミンガムのアセイオフィスはイングランド中部の実業者、マシュー・ボウルトンの影響により、1773年に設立された時から錨を街のマークとして使用してきました。
バーミンガムと、シェフィールドのアセイオフィスの推進者たちは、ロンドンにて王冠と錨のマークのどちらが良いか一緒に決めたという説もあります。
1973年の製品には、アセイオフィスの創立200年を記念して、錨の両側に特別な“C”をあしらったデザインのマークを刻印がされています。
エジンバラ お城
スコットランドのホールマークは1457年から制定されていますが、現存するものは、1556年から1557年以降のものしかありません。
エジンバラの金細工職人は、1490年代から会社設立をしたとされていますが、現存する資料は1525年以降のものです。
ダブリン ハープ
ダブリンのアセイマークはハープです。
アイルランドのシルバーのホールマークは、17世紀中頃から刻印されるようになりました。
当初、アイルランドのマークは、王冠がついたハープと日付の文字と製作者のマークのみでした。
1731年、ヒバーニアが追加されました。
・ デイトレター(The Date Letter)
アセイオフィスで検査された年号を示すマークです。
これを製作年を表しており、アルファベット1文字で年号を表します。
15世紀の終わり、粗悪な銀製品が出回ったため、「アセイオフィスの親方は品質維持の責任を取るべき」として、デイトレターが義務付けされたのが始まりです。
アルファベットは、J、V-Zを除外した20文字のみを使い、20年を1サイクルとします。
最初のサイクルは、1478年にAの文字からロンドンオフィスで始まりました。
20年毎にアルファベットの書体や縁取りを変えるなどして、アルファベット表記は今日まで続いています。
実際のところ、ここを調べるには、下記の『English Silver Hall-Marks』が必要になりますので、デイトレターは製作年を表してるんだなぁ。
程度の認識で問題ないと思います。
English Silver Hall-Marksのご購入はこちらから
・メーカーズマーク(The Maker’s Mark)一部抜粋の写真
※製作者またはメーカー(工房)を示すマーク
銀製品の品質維持のため、1363年に職人の親方は自身のマークを刻むように命じられました。
ほとんどのメーカーが、工房のイニシャルを採用しています。
・デューティーマーク(The Duty Mark)
納税したかを示すマーク。
高価な銀器は財産と見なされ、税金がかけられていました。
1784年から1890年までに作られた銀器には、税金が払われた証として、当時の国王のシルエットが刻印されています。
下記に一部を載せておきますね。
他にもたくさんデューティマークは存在します。
例えば、ジョージ4世、ウィリアム4世は右向き。
ヴィクトリア女王は左向きのシルエットです。
ここを見ればジョージアンかビクトリアンかは判別できます。
しかし、ロンドン以外の地域では、ウィリアム4世のマークがヴィクトリア時代の作品に使われた事もあったようで、他のマークと合わせて注意深く確認すると良いでしょう。
よって、デューティマークが入ってるか入ってないかで刻印が4つバージョンと5つバージョンが存在することを覚えておきましょう。
ここまでが、イギリス製スターリングシルバーのホールマークの解説になります。
フランス製シルバーのホールマークの歴史
イギリス(英国)のホールマークは4つ(5つ)の刻印からなるのに対して、フランスのシルバーホールマークは1つで完結します。
なので、イギリス(英国)製のホールマークと比較して非常に、簡単で見やすいのが特徴です。
覚えるのも簡単なので、ここでしっかりと知識を身につけておいてくださいね。
そんなフランス製のシルバーなのですが
フランスでは銀は800/1000から認められており
年代によって様々なマークが打たれています。
- フランスシルバーのホールマーク(800/1000)
- フランスシルバーのホールマーク(左向き横顔)(800/1000)
- フランスシルバーのホールマーク(800/1000)
950/1000のマークの種類。
注意・1枚目のマークに2と書いてあるマークは800/1000です。
- 左:フランスシルバーのホールマーク ミネルバ(右向き横顔)(950/1000) 右:フランスシルバーのホールマーク(800/1000)
- フランスシルバーのホールマーク(950/1000)
- フランスシルバーのホールマーク 左向き横顔(950/1000)マーキュリー
- フランスシルバーのホールマーク 右向き横顔(950/1000)
こちらのマークは、気づかれたと思いますが
純度の高い950は1で
純度の低い800は2と
マークの中に書かれています。
そして、全て人物の顔が描かれている刻印は横顔が
描かれているのが特徴です。
この部分を見るだけでもアンティークシルバーカトラリーや
銀器のジュエリー,アクセサリー等の美術品の銀の純度が
自分1人でも分かるので、マークの意味を理解して知識を付けていれば
分かりやすいマークになっていますよね。
カトラリーであれば、それはもちろん全てが同じ素材であることが
安易に考えがつくのですがポットなどの大きな物はいくつかのパーツで
構成されています。
・本体
・取っ手
・足
・蓋
基本的にはこの4つで構成されてるんです。
そして、そのパーツごとにマークが刻印されていて
全てのパーツを純銀保証してるんですね。
純度が低いからといって品質が悪いわけではなく純度が低いという事は
その他の銅等の含有量が高く使用用途によって含有量を変えているのです?
また、フランスのアンティークカトラリーはほとんどが950/1000で
作られているので逆に800の商品は珍しいと言えます。
いかがでしたでしょうか?
イギリス(英国)でもフランスでも作られていた銀製品なのですが
それぞれ独自の文化で発展していったんですよ。
<シルバー製品の購入時の注意点>
コレクターにとっては大変ありがたいものです。
しかし、残念ながら贋作が出回っているのも事実で、
ホールマークから得た情報をそのまま鵜呑みにするのはとても危険です。
本物のホールマークは、高品質のダイスという道具で入れられるため、
入れた時はもちろん、昔のものでもはっきり鮮明に見えることが多いです。
詐欺師は、その道具のためにお金をかけないので、
もしすり減ったマークを見つけたら一度は疑ってみましょう。
もちろん、すり減っているからといって全てが贋作だとは限りませんが、いい状態のブリタニアマークとすり減ったデイトレター・メイカーズマークが,一緒に刻印されてある場合は、贋作の可能性が高いので注意しましょう。
さらに、贋作を見極める判断材料として、マークされている場所も重要です。
例えば、
17世紀に作られたタンカード(蓋つき大型ジョッキ)は、
ハンドルの右、淵の近くにマークがありますが、
18世紀中頃になると底に見られます。
スプーンやフォークは、
1780年までは汁をすくうボールの近くにありましたが、
後に柄の部分に見られるようになります。
銀器のジュエリー,アクセサリー等の美術品等も
各時代に見られる特徴や知識を知っておくのも重要です。
コレクターにとって、ホールマークは正に神の恩恵とも言えます。
始めは読み解く事に難しさを感じる事もあるでしょう。
しかし、そこがアンティークシルバー(銀器)の醍醐味。
難しさはありますが、先人たちが何百年もの長い歳月をかけ築き上げてきた想いに触れる、そういう素晴らしさがあるのです。
人々の想いが込められたアンティークシルバーや銀器のジュエリー,アクセサリー等の美術品は、
きっと皆さんの生活を豊かに彩ってくれることでしょう。
◯銀食器(アンティークシルバー)は手入れが難しい…
確かに銀器の手入れって面倒だし難しそうなイメージがある。
そんな思いがある方もいるかもしれません。
その悩みを一番簡単に解決する方法は
『毎日使う!!』
ってことが一番ですね。
「銀製品はいつのまにか変色してしまい、
使いたい時に使えない(ー ー;)」
という声をよく聞きますね。
これは銀の性質上、酸化してしまうので避けては通れません。
ですが、毎日の食卓に銀製品のカトラリーを使うならどうでしょうか?
そう!
変色を防ぎ、ピカピカの状態を保つのは、毎日使うことが一番なんです。
気をつけるポイントは、
・食事後は早めに洗う
・傷がつきやすいので、お湯で振り洗いしスポンジは柔らかいものを使用する
・洗浄後は乾いた布でよく水気を拭き取る
日常の生活に銀食器を取り入れることで、贅沢な気分で食事の満足度も高くなります。
簡単なお手入れも苦になることもありませんよ。
◯観賞用の銀食器の手入れ
デイリー使いの銀食器は毎日使って変色を防げるのですが、
インテリアとしても楽しんでいるような、
アンティーク銀食器はどうでしょうか。
銀の輝きは常に保っておきたいですよね?
アンティーク銀食器の観賞用は、
黒ずんだりくすみを感じてから磨くのではなく
1週間に1回の簡単なケアがベストです。
シルバー(銀器)専用のネル生地素材のクロスなどは、
ホームセンターなどで売っています。
これらを常備しておき、毎朝、掃除機をや拭き掃除と同様に
やさしく磨いてあげることが大事なんですよ。
こまめに磨くことで簡単に輝きが蘇ってきますよ。
あまりにも放置しすぎて黒ずみがひどくなってしまった時には、
専用のシルバークリーナーなどを使わなくてはなりません。
傷がつく原因にもなりますから、
普段のお手入れを忘れずに行いましょう。
下の写真は銀を磨く布です。
◯銀は毒味に使われたってホント!?
最後にこんな豆知識。
西洋・東洋問わず、昔の権力争いでは、
毒を盛って暗殺することが横行していた時代があります。
その毒の多くは「硫化ヒ素」でした。
スープなどにこっそり混入させた毒を銀のスプーンですくう…
すると化学反応を起こし変色を起こすのです。
毒の種類も単一的であった中世ならではの方法です。
最近でも人気となった、韓国の宮廷ドラマ「チャングムの誓い」の中で
女官が王子の食事の毒味に銀の匙を使った話があるぐらい
ポピュラーなことであったようです。
現代では、毒味に銀のカトラリーを使う必要はなくなりましたが、
歴史と気品あふれる銀食器を日々の生活取り入れることで、
忙しい生活の中にも上品で優雅な時間をもたらしてくれること間違い無しです。
安価で見栄えのいいカトラリーが手軽に買える今だからこそ、
こだわりたい銀食器を持ち、ディリーに使い、
丁寧にお手入れをするということが自分にとっての大事な時間にもなります。
そして、お気に入りのアンティークシルバーを見つけ出し、
使うこと、鑑賞することは一生をかけて楽しむことのできる趣味にもなるでしょう。