アンティークジュエリーとヴィンテージジュエリー年代別特徴とを見分ける4つの方法

あなたは祖母から何かを譲り受けたり、最近ジュエリーショップを訪れたことがあるかもしれません。

そんな時には、手にしたジュエリーについてもっと知りたくなったとしても、その時点で分かることは、それが古いということだけです。

では一体、どこから始めればよいのでしょうか。

この記事では、アンティークジュエリーの識別の仕方を解説します。

 

アンティークジュエリー、ヴィンテージジュエリーとは?

ヴィンテージジュエリーは30年以上前のジュエリーを指しますが、アンティークジュエリーは1世紀以上前のものを言います。(100年以上前)

ファッショントレンド、製造スタイル、人気のある素材、ジュエリーの刻印に基づいて、さまざまな種類のヴィンテージジュエリーやアンティークジュエリーがあります。

 

4つの見分け方

1.ジュエリースタイルを理解する

一番わかりやすいジュエリーの見分け方は、特定の時期に存在するスタイルです。

最も人気のある、ジュエリースタイルの時代別の簡単な内訳は次のとおりです。

 

ジョージアン様式(1700-1830)

ジョージアン様式のアンティークリング

ジョージアン様式の宝石は、現在も販売されている最も古いスタイルのジュエリーとして存在します。

名前の由来は、当時イギリスを統治した4人の王にちなんで名付けられました。


このスタイルは期間が長いために同じ時代でも違いがありますが、その精巧なデザイン、カラフルで貴重な宝石、そしてイエローゴールドを多用していることが特徴となります。

ほとんどの品は、ネックレス、ブレスレット、指輪、イヤリング、ブローチ、さらには王冠を含むセットの一部です。

時代が古いので、これらの品の多くは高価になります。

 

ビクトリア朝時代(1830-1900)

ビクトリア朝時代のアンティークリング

ビクトリア女王の治世にちなんで、名付けられたこのスタイルのジュエリーは、当時のアイコン的存在として大衆に愛された、女王の個人的嗜好を表したものでした。

花、ハート、弓、鳥などのモチーフは、ビクトリア朝時代の職人の技が生かされた美しいジュエリーにインスピレーションを与えました。

この時代には、ガーネット、アメジスト、サンゴ、ターコイズ、シードパールなどの宝石や貴石がよく使われていました。

ビクトリア女王がオパールを愛用するようになると、その人気が高まりました。

ダイヤモンドは1867年に南アフリカで発見され、この時期に人気を博しました。

ビクトリア朝時代には、人間の髪の毛もジュエリーに取り入れられました。

このジュエリーは愛の証として贈られ、喪のジュエリーとしても着用されました。

ビクトリア女王が結婚した後数年間、夫であるアルバート王子から彼女に与えられたヘビの指輪は非常に人気がありました。

彼の死後、大衆は、ジェット(黒玉)、オニキス、およびガーネットなどの暗いイメージの宝石が使用されたジュエリーを身に着けることによって、女王と共に喪に服しました。

しかし、この時代のすべてのジュエリーが暗いイメージのものだったわけではありません。

ビクトリア女王は、エナメルを塗ったハート型の明るく生き生きとしたブレスレットを所有していました。

このことから、宝石商は自分たちの作品でもエナメルを試すようになりました。

他の斬新なスタイルとしては、アクロスティックジュエリー、つまり石の名前の最初の文字でメッセージを綴ったジュエリーがあります。

例えば、「親愛なる(REGARDS)」は、ルビー(ruby)、エメラルド(emerald)、ガーネット(garnet)、アメジスト(amethyst)、ダイヤモンド(diamond)、 サファイヤ(sapphire)を組み合わせて表します。

ビクトリア朝時代の後半にかけて、考古学が発展したことで、エジプトと古代ギリシャのデザインが流行しました。

カメオ、または肖像画に刻まれた硬い素材も、ビクトリア朝時代に始まっています。

ルビーの目とダイヤモンドのヘッドを持つヘビのリング

※ルビーの目とダイヤモンドのヘッドを持つヘビのリング

 

エドワード時代(1900〜 1910年)

エドワード時代のアンティークリング

この時代のジュエリーは、エドワード7世にちなんだものですが、彼の死後しばらく続きました。

エドワード7世とデンマークから嫁いできた妻のアレクサンドリアは、この活気に満ちた時代におけるファッションとジュエリーに国際的に通用するセンスをもたらしました。

宝石商はプラチナとダイヤモンドを使用して、レースに似た複雑で繊細な細線細工のパターンを作り上げました。

レースや花柄のデザインなど、ビクトリア朝時代の女性らしさを引き継いでいますが、よりシンプルなタッチになっています。


この軽くて風通しの良いデザインは、エドワードジュエリーの特徴となっています。

ホワイトゴールドとプラチナが流行し、弓や葉を取り入れた花輪のデザインも人気がありました。

アレクサンドリアは、エドワード時代に人気を博した「犬の首輪」と呼ばれるチョーカータイプのネックレスを好んで身に着けていました。

美しくぶら下がるタイプの真珠のイヤリングと、髪の宝石である「ティアラ」の組み合わせも、大流行しました。

エドワード王はスポーツを楽しみ、スポーツモチーフの使用を奨励しました。

彼はまた、彼のラッキーストーンであるペリドットの人気を高めました。

エドワードジュエリーの優雅さ、美しさ、そして優れた職人技は、時代を超えて比類のないものであり続けています。

エドワード時代の美学を体現した美しい細線細工の弓の部分

エドワード時代の美学を体現した美しい細線細工の弓の部分

 

アールヌーボー(1890-1910)

アールヌーボー時代のアンティークジュエリー

ビクトリア朝と、エドワード朝のスタイルを重ね合わせたアールヌーボージュエリーは、自然から着想を得たデザインと滑らかで流れるような曲線が特徴の非常に独特なスタイルです。

この時代は、世紀の変わり目と「現代」の到来を表しています。

色は、オパール、アンバー、ムーンストーンなどの石を含む、より落ち着いた自然なものになっています。

この時代には、美しく彫刻された流れるような髪の女性が頻繁に見られます。

自然のモチーフも根強い人気を保っていました。


蝶、トンボ、ヘビ、ポピー、ラン、アイリス、睡蓮などが主に使用されていました。

アールヌーボー時代に作られたジュエリーは、芸術のための芸術と、ファッションの劇的なトレンドの両方を具現化したものです。

自由に流れる非対称のラインが注目を浴び、デザイナーの革新なスキルを表していました。

素材はデザインや技術ほどは重要ではなかったため、さまざまな宝石が人気でした。


琥珀、オパール、ムーンストーン、シトリン、ペリドットは、ホーン、銅、べっ甲、象牙、彫刻ガラス、貝殻、真珠、カバションでカットされた宝石などの他のさまざまな素材とともに使用されました。

※典型的なアールヌーボー様式の真ちゅう製のリング(裸婦と流れるような有機的なラインが特徴)

 

アールデコ(1915-1935)

アールデコ時代のアンティークリング

アールデコ時代は、前の時代とは対照的なきらびやかなジュエリーを生み出しました。

映画「華麗なるギャツビーの映画」を見たことがあれば、このスタイルがどのようなものかわかるでしょう。


この時代、柔らかな色と流れるようなラインから、大胆で明るい色と直線へと重点が移りました。

女性は長い髪の毛を切り、短くボーイッシュな髪を好み始めました。


アールデコはまた、ジャズとフラッパーの時代でした。

アールデコジュエリーは、この時代の華やかで遊び心のある雰囲気を引き立てる、大胆でモダンなものでした。


エジプトの影響が強く、スフィンクスやハヤブサなどのモチーフが人気でした。


宝石の幾何学的なカットは、アールデコジュエリーの対称性と合理化された外観と密接に関連しています。

ダイヤモンドの時計、真珠、ビーズ、カクテルリングとともに、長いイヤリングが人気でした。

エメラルド、サファイア、ルビーはアールデコジュエリーに多く用いられています。

 

ダイヤモンドがセットされたホワイトゴールドのアールデコリング

※ダイヤモンドがセットされたホワイトゴールドのアールデコリング

 

レトロ(1930-1940)

レトロジュエリーの時代は、大恐慌時代の1930年代に始まり、1950年まで続きました。


レトロ時代のジュエリーは、大きなカラフルな宝石を特大の長方形のカットではめこんだ大ぶりのスタイルが特徴です。

この時代は物資が不足していたので、プラスチック、ラインストーン、ガラスなどの合成で安価な材料が普及しました。

中でも合成ルビーとサファイアは、シトリンとアクアマリンと共に人気がありました。

これにより、当時エルザ・スキャパレッリなどのハイエンドデザイナーによって人気を博したコスチュームジュエリーが誕生しました。

また第二次世界大戦中、ジュエリー業界ではプラチナが利用できなかったため、代わりにイエローゴールドが使用されました。

デザイナーは、ローズ、イエロー、グリーンゴールドの味わい深い組み合わせのマルチカラージュエリーを作りました。

チャームはこの時代に流行し、リンクブレスレットに大量に着用されました。

精巧に彫られた婚約指輪のイリュージョンカットは、手頃な価格ではるかに大きなダイヤモンドのような見た目をもたらしました。

この時代の美しい作品は、1930年代の経済志向の女性に支持され、今日でも同様に人気があります。

また、ティファニー、カルティエ、ヴァンクリーフ&アーペルは、ハリウッドのセレブたちにアピールするような、明るくファッショナブルなジュエリーで世界にその名を刻みました。

これらのデザイナー作品は、今日でも大変人気が高いコレクターアイテムとなっています。

 

これらの歴史的なスタイルに加えて、いくつかの地域固有のデザインを持つジュエリーもあります。

 

サウスウェスタンスタイル

ネイティブアメリカンや銀細工職人から着想を得て生まれたこのデザインは、通常、スターリングシルバーまたはレザーで作られているものが多いです。

一般的な素材として、ターコイズ、コーラル、マザーオブパール、マラカイトが使用されています。

羽のモチーフ、刻印されたパターン、コンチョ、および土着の芸術的モチーフがデザインされています。

サウスウェスタンリングの2つの例

サウスウェスタンリングの2つの例

 

ブラックヒルズ

サウスダコタ州のゴールドラッシュに端を発するブラックヒルズゴールドは、黄色、ピンク、緑などのさまざまなゴールドカラーを使用しているため、独特の見た目をしています。


ブドウの木とブドウの葉がこのデザインの特徴であり、簡単に識別できます。

ブラックヒルズゴールドと呼ばれるためには、サウスダコタ州で製造されている必要があります。

ブドウの葉が付いた署名入りのマルチカラーゴールドのブラックヒルズリング

ブドウの葉が付いた署名入りのマルチカラーゴールドのブラックヒルズリング

 

 

2.製造方法に注目する

製造方法は多岐にわたりますが、ジュエリーの年代測定に関しては、それぞれ特定の構成要素と特徴があるため非常に識別しやすくなっています。

 

たとえば、手彫りは、特にそれがシグネットリング(印形リング)にほどこされている場合、少なくとも1900年代にさかのぼる品であることを示しています。

ホワイトゴールドやプラチナと組み合わせた、信じられないほど複雑で細かいレースの細線細工の品は、エドワードやアールデコのジュエリーを指すことがよくあります。

石のカット方法も、時代の影響を受けている可能性があります。

 

マシンカットは1900年代初頭に導入され、今日でも最も人気のあるダイヤモンドカットであるラウンドブリリアントカットを生み出しました。

それ以前は、ジョージアン様式とビクトリア朝様式のジュエリーに見られるローズカットや、エドワード様式とアールヌーボー様式のジュエリーに見られるヨーロピアんカットなどが使われていました。

マシンカット以前の時代のジュエリーには、古いハンドカットの石がセットされていたのです。

 

国によって金属の基準も異なるため、ジュエリーの出所を知ることができます。


例として、米国は10K(41.6%)未満のゴールドを金の宝飾品とは見なしていません

ただし、英国では9kゴールドが非常に人気があり、これはある品が英国で製造されたことを示す指標となります。

所有者のイニシャルが手作業で彫り込まれた美しいシグネットリング

所有者のイニシャルが手作業で彫り込まれた美しいシグネットリング

 

 

3.素材に注目する

宝石や金属の他に、ぞれぞれの時代でさまざまな素材がジュエリーに使用されました。


こうした素材には以下のようなものがあります。

 

ベークライト

世界初の合成プラスチックであるベークライトは、1907年にニューヨークで製造されました。


家庭用品の生産における汎用性に加えて、その独特の外観と透明度、さまざまな色を持つことにより、ジュエリーにも使用されました。

今日では、人気のコレクターアイテムになっています。

 

カンファーグラス

すりガラス調の外観を持たせるために、フッ化水素酸処理から作られたガラスの一種です。


これは1800年代後半に喪用の宝石として最初に登場しましたが、最終的には一般的なものとなりました。

1800年代から1900年代初頭までの典型的な作品は、シルバーまたはホワイトゴールドで縁取られており、繊細な細線細工が施されています。

白鉄鉱または、ラインストーンのアクセントが付けられているものもあります。

カンファーグラスから作られたヴィンテージペンダント

※カンファーグラスから作られたヴィンテージペンダント

 

ペースト

ペーストとはラインストーンの古い用語です。

ペーストストーンの作成に使用される材料は、時代とともに、岩の結晶からクリスタルガラスやプラスチックに変化しました。

何で作られているかを知ることで、手持ちのアイテムのさらなる年代測定が可能になります。

アンティークジュエリーには、プラスチックなどの現代的な材料ではなく、手でカットされた水晶のペーストが使用されている可能性が高くなっています。

2世紀前のラインストーンから作られた美しいイヤリング

※2世紀前のラインストーンから作られた美しいイヤリング

 

フォイルオパール

天然のオパールの外観を模倣するために、キラキラ光る金属の薄いシートの上にガラスをかぶせた人造ジュエリーです。


フォイルオパールはビクトリア朝後期に開発され、プラスチックやキラキラ光るガラスで作られた他の合成オパールとは異なります。

ただし、「フォイルオパール」という用語は、現在、すべてのフェイクオパールを指すために一般的に使用されています。

これらの石は、特にメキシコのメーカーのヴィンテージコスチュームジュエリーに広く使用されています。

メキシコで製造されたと考えられる現代的なフォイルオパールを使ったリング

メキシコで製造されたと考えられる現代的なフォイルオパールを使ったリング

 

パラジウム

プラチナは戦争中に軍事用に確保されていたため、その代わりとして光沢のあるシルバーホワイトの金属であるパラジウムが1930年代に登場しました。


プラチナよりも軽いですが、摩耗すると黄色に変わる傾向があるホワイトゴールドよりもはるかに優れた色を保持します。

パラジウムで作られたジュエリーは、おそらく1930年代以降のものだと考えることができるでしょう。

モダンなパラジウムリング

 ※モダンなパラジウムリング

 

4.ジュエリーの刻印を探す

ジュエリーにほどこされた刻印やロゴマークは、多くの場合、アイテムの出所や、さらには製造された年を特定するのに役立ちます。

一部のメーカーは特定の年まで操業しており、他のメーカーは時代とともに会社のロゴマークを変更しています。

14k、18k、925(スターリングシルバーの場合)、PLATまたはプラチナの950などの金属の刻印も素材の識別に役立ちます。

 

国別の刻印は、アイテムの製造場所を特定するのに役に立ちます。

たとえばイギリスには、権威のある紋章、または金属の刻印や、アイテムの金属含有量が測定および認定された場所を示す記号が使用されています。

イギリスには、ロンドン、シェフィールド、バーミンガム、エジンバラの4ヶ所にジュエリーの分析を専門に行う機関があります。

これらの各機関には、それぞれ対応する独自の紋章があります。
ロンドン:ヒョウの頭、シェフィールド:バラ、バーミンガム:錨、エジンバラ:城です。

それぞれ国ごとに、アイテムに刻印を付けるための独自の基準と紋章があることがわかるでしょう。

バーミンガムの錨の紋章が彫られた9Kゴールド(37.5%)のリング

 

 

リバイバルジュエリーとイミテーションジュエリー

すべてのヴィンテージ、またはアンティークに見えるジュエリーが、実際にそうであるとは限りません。


古いジュエリースタイルをまねた偽物や、リバイバルジュエリーには注意が必要です。

見分けるのは難しいかもしれませんが、安価なものはたいてい、偽物である可能性が高いです。

 

古代ローマのリバイバルコインリング

※古代ローマのリバイバルコインリング

 

ここまで、アンティークジュエリーの見分け方をご紹介しました。