グリシン　戦地から宇宙まで　選ばれた時計の歴史

アメリカのミリタリーウォッチブランド『グリシン』の歴史

1955年～1975年のベトナム戦争で、アメリカ軍パイロットと共に戦場の空を舞った時計、グリシン「エアマン」。


遠い異国の地に派遣され、勝利のために命をかけた戦士たちが、肌身に付けていた時計にはどんな特徴があったのでしょう。


今回は、戦地で重宝されたミリタリーウォッチを製造し、現在もスイス・ビエンヌの旧市街の中心に「La Cave (ラ・ケイブ)」というギャラリーを構える、GLYCINE(グリシン)の歴史をたどります。


1914年、創業者のユージーン・メイランがブランド名をGLYCINEと名付けました。

その名前は、フランス語、イタリア語、ポーランド語などで「藤づる」を意味します。

その花の特徴のように、わずかな手入れでも、多様な場所で美しい花を咲かせる事ができるようにという想いを込めて、名付けられました。

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https://www.glycine-watch.ch/history

 

GLYCINE時計の特徴は、精密さは勿論のこと、時計の着用が必須とされていた軍のパイロットが必要とした機能を備えていた事でした。

 

一つは、どこにいてもGMT(Greenwich Mean Time:イギリスのグリニッジを標準とした時間帯)を元に、2つのタイムゾーンが確認できること。

 

もうひとつは、一般の時計には珍しい仕様である、24時間表記の文字盤です。

軍事時間である24時間が一目で分かり、午前・午後を見間違う事がないためです。

 

文字盤の周りの回転ベゼルを回せば、２ヶ国の時間が分かり、日付も確認ができ、ハック機能もあるため、戦地に赴く兵士に好まれました。

https://www.hodinkee.com/articles/the-glycine-airman-no-1

ここで、グリシン時計が実際に活用されたシーンのいくつかを挙げてみましょう。

代表例には、ベトナム戦争の際、空軍に人気のあったエアマン。

 

時計本体はステンレス製で、敵に時計の光の反射で位置がばれることないマットな光沢に仕上げられています。

 

また、飛行機の中でも太陽の光を反射せず、眩しくないことが好まれました。耐久性にも優れ、壊れにくく、軍用に適していた時計です。

https://medium.com/@howardlau2816/watches-worn-by-usaf-in-vietnam-an-american-icon-and-the-precursor-to-the-gmt-watch-98b32bdbb545

 

グリシンは宇宙開発にも歴史を刻みます。

1965年、アメリカのNASAが宇宙へ送った「Gemini(ジェミ二)5号」の有人の長期飛行実験の際、7日と22時間という飛行記録を樹立しました。

そのフライトで宇宙飛行士のチャールズ・コンラッドの腕に付けられていたのが、グリシンの「エアマン」です。

https://www.24hourwatch.org/airman_in_space/

ミッション後、地球に帰還したジェミニ5号。

大西洋の海に着水するも、グリシンのエアマンは、宇宙飛行士らと共に無傷で地球に戻りました。

 

ちなみに宇宙にいる際、コックピットのドアの修理のために、コンラッド宇宙飛行士とともに、約2時間、実際の宇宙空間に出たエアマン。

この時、「初めて宇宙遊泳をした時計」となり、無事にミッションを達成したのでした。