チェコ製パイロットミリタリーウォッチ ロンジン Tartarugone エルテナ Majetek

チェコ空軍に納品した素晴らしきパイロットミリタリーウォッチ

ロンジン Tartarugone

ロンジン Majetek Tartarugone ミリタリーウォッチ


1930年代、ロンジンは軍事時計用として大きくがっしりとしたマルチパーツケースを作り出し、ヨーロッパ空軍、特に当時高度に発展していたチェコ軍への販売を計画していました。
 
懐中時計用として使われていた15リーニュ(34.7 mm)のムーブメントが使用されているため、当時のスタンダードなミリタリーウォッチに比べケースのサイズが非常に大きくなりました。
 
しかし、このサイズ感のある腕時計は急速に発展し始めた航空時計の市場にはぴったりでした。
 
そのフォルムから“Tartarugone(大きなカメ)”と呼ばれているこちらのスチール製のケースですが、サイズに加えてさらに珍しいのは複数パーツからできているという点です。
 
ムーブメント、文字盤、風防を包むように作られてたクッション型インナーケースが、ラグが取り付けられている同様の形状をしたアウターケースにぴったりと収まっています。
 
裏蓋は、伝統的なスナップ式です。
 
この二重構造のケースが、抜群の強度と耐磁性を実現しています。
 
この構造は、1970年代にジェラルド・ジェンダが生み出した有名なクッションケースの腕時計にも利用されました。
 
 
ロンジン Majetek Tartarugone ミリタリーウォッチ


チェコ空軍との契約のもと、ロンジンはこの腕時計の量産を開始します。
 
裏蓋には「軍の所有物」を意味する “Majetek Vojenské Správy”の刻印があり、ここからこのタイプの腕時計がMajetekと呼ばれるようになりました。
 
しかし戦時中に需要が高まったことで、この刻印の工程は途中から省かれるようになりました。
 
生産初期の製品には当時一般的だった厚さ5.65mmのキャリバー15.94が使用されていましたが、第2シリーズではそれより薄い厚さ4.5mmのキャリバー15.26が使用されるようになりました。
 
この新しいムーブメントには金メッキを施したブリッジが使われていましたが、軍事用品に使用するには上質すぎる材質でした。
 
しかし、大恐慌が訪れたためにそれほど多く生産されることはありませんでした。
 
そしてチェコ軍がスペックを設定すると、ロンジンはより安価なキャリバー15.68を使用するようになりました。
 
このムーブメントは“Tartarugone”と呼ばれるロンジンのミリタリーウォッチのほとんどに使用されています。
 
コインの縁のようにギザギザとしたベゼルやエナメルの文字盤など、ロンジンのTartarugoneは非常に装飾的と言えます。
 
文字盤が割れてしまう問題を解決するためエナメルの層が特別厚くつくられているのですが、それでも長年着用してきたことがわかる経年劣化の跡が見られます。
 
また、時計の針も軍事用品にしては装飾的と言えるでしょう。
 
第二次世界大戦中に製造された多くのミリタリーウォッチと同様に、Majetekにも供給量を増やす目的で第二のメーカーが現れました。
 
当時、ロンジンと同じくスイス国内最大手の時計メーカーのひとつであったエテルナがMajetekの生産を開始します。

エテルナ Majetek

エテルナ Majetek ミリタリーウォッチ

エテルナのMajetekは、ロンジンのMajetekとは全くの別物でした。
 
14リーニュ(約31.6 mm)のキャリバー852Sのムーブメントが使用されている秒針は文字盤の中心に配置されており、ケースもクッション型である点はロンジンのTartarugoneと似ているものの、二重構造にはなっていません。
 
裏蓋もロンジンとは異なりスクリューバック式で、ベゼルの表面がギザギザとしていることもなく、文字盤のデザインもシンプルです。

 
裏蓋にある“Majetek”の刻印で有名なこの腕時計ですが、エルテナ、ロンジンどちらの製品にもこの刻印がないものが多数存在します。
 
有名な逸話が残っている一点ものでさえ、シリアルナンバーの刻印がないものもあるかもしれません。
 
さらに、Majetekには実際の製造年度よりも最大で10年も前のシリアルナンバーが打たれていることもあり、MajetekやTartarugoneの査定は非常に難しくなっています。
 

もちろん、中のムーブメントもしっかりと動くことを確認しましょう。
 
エテルナのMajetekは、ロンジンのものに比べさらに入手が困難です。