ベストミリタリーウォッチ 17選
軍との契約のもとで発展を遂げたミリタリーウォッチ。
厳しい条件下でも正確に時間の管理をするために設計されたその特別な仕様は、長い時間をかけて一般の市場にも広がりを見せました。
今では政府がスペックを規定することや政府と契約を結んで腕時計の製造を行うことは稀であり、軍の特殊作戦隊員でさえロレックス サブマリーナーではなく既製品であるG-Shockを好んで着用します。
しかし、ミリタリーウォッチの機能を重視したデザインや、歩兵をはじめ潜水士、爆発物処理班員、特殊作戦隊員など日々命を危険にさらしている人たちの腕を飾っていたという歴史は、現在も時計コレクターを魅了してやみません。
必要な機能を果たすために大切なものだけが詰め込まれたデザインには、特別な美しさがあります。
ミリタリーウォッチのケースは、衝撃や腐食、そのほか厳しい環境にも耐えられる頑丈な作りである必要があります。
戦中の材料不足などでステンレススチールの使用が難しかった頃は、ニッケルでコーティングされた金属や硬貨を製造するための銀などが使用されていました。
現在では、スチールよりもプラスチックが使用されるようになってきています。
したがってミリタリーウォッチにはなんらかの発光する機能が備わっていました。
しかし発光する文字盤は敵軍に時間を知られてしまう危険性があったため、当時のミリタリーウォッチにはカバーがされているものも少なくありませんでした。
戦地が寒い場合も暑い場合も、また高地であってもムーブメントは正しく機能する必要があります。
電池式時計の場合は、電池が極端に長持ちするつくりでなければなりません。
厳しい環境下ではパーツが破損してしまうことも少なくありません。
そういったとき、例えばムーブメントなどが非常に複雑なつくりになっているとすぐに使用を再開することができなくなってしまいます。
例えば、文字盤のデザインが複雑すぎると時計が読みづらくなります。
また、ダイバーズウォッチのベゼルが回りづらい場合は水中での使用に非常に不便です。
ここでの紹介は決定版とは言えないかもしれませんが、できる限り多くの国と種類のミリタリーウォッチをご紹介しています。
19世紀終わりごろのドイツでは特定の目的専用の腕時計はほとんど生産されておらず、第一次世界大戦が始まったころに初めて使用されるようになりました。
それまでは指令を出す時間や大砲を打つ時間の計算をするのに懐中時計が使われており、両手を使った作業では一旦どこかへ置いておかなければなりませんでした。
そのため兵士たちは懐中時計にワイヤーをはんだ付けしてそこに革製のストラップをつけ、このデザインに時計店や宝石店が注目し始めます。
兵士たちが“トレンチウォッチ”を身に着けた状態で戦争から戻るとこの時計がブームとなり、それまで女性的と思われていた腕時計を男性が身に着けることが流行となりました。
アメリカ軍で少佐をしていたフィリップ・ヴァン・ホーン・ウィームスが設計したこちらの時計は、天測航行での使用を目的に発明されたウィームスの特許製品です。
この時計を無線から発せられる信号と同期させて水先案内人に正確な時刻を知らせるため、ウィームスは2つ目のリューズでベゼルを動かすことができるように設計しました。
こうしたことで、水先案内人は腕時計が示す時刻と無線信号が示す時刻の誤差を確認し、航行でのミスを最小限に抑えることができました。
このデザインは、のちのチャールズ・リンドバーグがデザインしたアワーアングルにも採用されました。
“Mk 7A (6B/159)”の称号を受けたこれらの腕時計は第二次世界大戦時、オメガ、ロンジン、ジャガー・ルクルトによってつくられ、イギリス海軍の航海士によって使用されました。
白い文字盤に黒いアラビア数字のインデックス、秒針を文字盤の中心に配置し、発光塗料の使用はなし、時計の針はブルースチール製で、ケースはクロムまたはステンレススチール製であることが規定されました。
戦中も使用されており、年代を経て文字盤が取り換えられた個体もあるものの、現在でもよい状態で残っているものが多数存在します。
手巻き式のオメガ12.68Nなど、非常に質の高いムーブメントが使用されていたことがその要因の一つと言えるでしょう。
現在ロンジンが展開しているヘリテージ ミリタリーと呼ばれるシリーズにも、ここで使用されたデザインが採用されています。
エルジン、ウォルサム、ブローバがつくりあげた大きさ30~32mmのこちらの腕時計は、米軍が設定した基準に基づいて繰り返し製造され、そのなかには“6B”の名で他の同盟軍にも支給されたものもありました。
黒い文字盤(実は、白い文字盤のものもわずかに存在します)、白いアラビア数字のインデックス、時計の針に60分の目盛りのみという、時刻を知るためだけに作られたシンプルなデザインが特徴です。
このモデルは戦時中の生産量が非常に多かったため、「勝利の時計」とも呼ばれています。
MkIIから、この時計のアップデート版ともいえるCruxible(約6,7000円)が発売されています。
映画のタイトルから名づけられたこちらの時計は、1945年にイギリス国防省と契約を結んだ12のスイスメーカーにより製造されたモデルを指します。
メーカーによりモデルはわずかに異なりますが、どの時計も直径35~38mmのステンレススチール又はめっき卑金属製のケースに、ラジウムの発光塗料が付された黒い文字盤、ムーブメントはクロノメーター級の手巻きで、スクリューダウン式の裏蓋(IWCモデルを除く)を使用し、軍事用であることを示すマークが施されています。
全体で15万点ほど生産されたこちらの腕時計は、現在でも数十万円ほどで手に入れることができます。
1930年代後半、爆撃機の乗組員に支給する腕時計としてBeobachtungs-uhren(ドイツ語で「観察用時計」の意)が生産されました。
ドイツ航空省がスペックを規定し、IWC、A. Lnage & Söhne (A.ランゲ&ゾーネ)、Wempe(ヴェンペ)、Laco(ラコ)、Stowa(ストーヴァ)の5社により生産されましたこれらの腕時計は、パイロットウォッチの代表的なデザインがなされています。
B-UhrensにはタイプAとタイプBの二種類があり、それぞれ文字盤のレイアウトは異なりますが、どちらもやや大きめの直径55mmケースの中に手巻きムーブメントが搭載されています。
こちらの腕時計はフライトジャケットに隠れてしまわないために大きめに作られたようですが、パイロットや航海士が両手を自由に使えるよう脚に巻き付けていたため大きい必要があった、とも言われています。
セイコー社が製造している腕時計の1つに、現在“カミカゼ”の名で知られている腕時計があります。
セイコー社は1930年代~1940年代にかけて日本軍に対し様々な腕時計を生産しましたが、こちらの“カミカゼ”は終戦直前の神風特攻隊に支給された腕時計として有名になりました。
したがって現存する個体数は非常に少ないことで知られています。
実際に神風特攻隊によって使用されていたかどうかは不明ですが、こちらの腕時計もケースが大きめに設計されており、同時期に製造されたB-Uhrenとの不思議な一致が見られます。
第二次世界大戦中の1952年、フィフティ・ファゾムズはフランス特殊作戦執行部のエージェントであったボブ・マルビエのアイデアから生まれました。
フランス海軍のクロード・リフォーとともに新たな潜水ユニットを秘密裏に作り上げようとしていたころ、マルビエは理想的なダイバーズウォッチのスケッチを作成しいくつかの企業へと持ち込みました。
ブランパンが製造を請け負うことになり、以来フィフティ・ファゾムズは腕時計会で最も有名なダイバーズウォッチとなりました。
ブランパンは、現在でも新しいバージョンのダイバーズウォッチを製造しています。
モノプッシャークロノグラフは、1940~50年代後半イギリス国防省との契約のもと、レマニア、ブライトリング、ロダニアが生産した腕時計です。
スタート、ストップ、リセット機能を備えたボタンが特徴的なこちらの腕時計はイギリス空軍のパイロットをはじめ、海軍にも支給されていました。
38.5mmのステンレススチール製ケース、17石のレマニアキャリバー15 CHTムーブメントにラジウムが使用された文字盤が使われています。
モノプッシャーの別モデルであるレマニア6BBには、40mmのアシンメトリーケースに、手巻き式のレマニア2220ムーブメントが使用されています。
これら二つのモデルは1960年代に米軍で使用が開始されたもので、ベトナム戦争中に米兵に支給された腕時計として有名です。
製造が開始されてから様々なバリエーションが生まれ、インターネット上のオークションサイトなどでもスチール製またはプラスチック製のケース、7石もしくは17石の手巻きムーブメントやクオーツ式のものまで見つけることができます。
生産量が多かったため、現在でもベンラス、ハミルトン、マラソンなどから2万円ほどで購入することも可能です。
リメイクされた現代版をお求めの方には、Military Watch Company(ミリタリーウォッチカンパニー)が販売しているGG-W-113もおすすめです。
こちらの腕時計が製造されたのは1957年でしたが、使用されるようになったのは10年後のことでした。
1967年、イギリス国防省はそれまで使っていたロレックス サブマリーナーの代替品としてオメガのシーマスター300の使用を決定しました。
商品名の300は水深300mを指しています。
ねじれのあるラグ、キャリバー522の自巻きムーブメント、分単位の目盛りのついたベゼルが特徴的なシーマスター300は、ミリサブと同じくダイバーズウォッチを象徴する腕時計の1つです。
特殊舟艇部隊の隊員が使用していた軍事マーク付きのものですと、百万円は下らない代物です。
オメガでは、現代版のリメイク品も販売されています。
W10は、1960年代後半~1970年代前半にかけて有名イギリス時計メーカーが手掛けた、ミリタリーウォッチとしては珍しい国内製の腕時計です。
大きさは直径およそ35mm、手巻きムーブメントは耐磁性のあるダストカバーに覆われており、黒い文字盤と時計針にはトリチウムが使用されています。
スプリングバーが固定されているのも特徴です。
文字盤に付されたブロードアローのマークは、イギリスの所有物であることを示しています。
陸軍と海軍用にそれぞれ異なるバージョンが製造されていますが、どちらも裏蓋に“6B”の刻印が見られます。
アメリカ軍が求めるダイバーズウォッチのスペックを実現するため1970年代にベンラスによって作られたタイプ1、タイプ2と呼ばれる腕時計は、水深366メートルまで耐えることができます。
タイプ1はインデックスの周りにマーカーとして夜光塗料が配置されているモデルで、これに対しタイプ2は24時間表示の文字盤に三角形の夜光塗料が配置されています。
タイプ2に関しては、原子力潜水艦などトリチウムの使用が問題となり得る場所でも使用できるよう、特別に夜光塗料が使用されていないモデルも生産されました。
Mk IIは現代版であるParadive(パラダイブ)を発売しており、またマラソンもプラスチック製のケースを使用したNavigator(ナビゲーター)という腕時計を販売しています。
1960年代~1970年代にかけてタグ・ホイヤー、レオニダス、ゼニスなどが生産したミリタリーウォッチで、ドイツ軍やイタリア空軍に支給されていました。
多くはドイツ軍に使用されていたことから“budeswehr(ドイツ語で「ドイツ軍」の意)”の名をとって“Bund(バンド)”の名でも知られています。
このモデルを手掛けたブランドは様々ですが、どのモデルもバルジューのフライバックムーブメントと目盛りのついた回転ベゼルが使用されているデュアルレジスタクロノグラフである点は同じです。
実は、初期に生産されたモデルにはSinn(ジン)が製造したものも含まれており、現在でもこのブランドの製品を入手することも可能です。
現在では、ギナーンが現代版を製作しています。
モノプッシャークロノグラフのあと、イギリス国防省はハミルトン、CWC、ニューマーク、プレシスタが生産したアシンメトリーケースのクロノグラフを使用しました。
これらは1970年代後半~1980年代前半に支給されたもので、2つのボタン、バルジュー7733のムーブメント、スチール製のケース、トリチウム使用の黒文字盤、支給先を記した軍事マーク(“RN(イギリス海軍)”、“RAF(王立オーストラリア空軍)”、“Royal Australian Navy (王立オーストラリア海軍)”のいずれか)が特徴です。
CWCが現代版となるリメイク製品を販売しています。
エテルナのコンティキ スーパーは軍事用モデルとして設計されたものではありませんが、その頑丈さ、文字盤の読みやすさ、無骨なエテルナマチックムーブメントから、イスラエルの特殊部隊S-13に重宝されていました。
一般用でありながらケースが直径44mmで軍事用のものとサイズがほぼ同じであり、軍用に用いられた個体には裏蓋に支給番号とヘブライ文字で“tzadi(ヘブライ語で「イスラエル国防軍」の意)”という刻印が施されました。
エテルナでは現代版のコンティキ スーパーを購入することができます。
1954年に初めて生産されてから、様々なロレックス サブマリーナーがイギリス国防省へ供給されましたが、市民用モデルの“5513”、市民用から軍事用への過渡期にあった“5513/5517”、軍事専用の“5517”の3つモデルは世界でも最も有名なミリタリーウォッチと言えるでしょう。
これらの特別な“ミリサブ”シリーズには、文字盤にトリチウムの使用を表す“T”のマークが描かれています。
水中での計測を正確に行うために目盛りがついているベゼル、剣のような形をした時計針、固定されたスプリングバーが特徴です。
オリジナル品は1,200点ほどしか生産されなかったため現在1千万円は下らないといわれていますが、スタインハートなどでリメイク版をお求めいただけます。
厳しい条件下でも正確に時間の管理をするために設計されたその特別な仕様は、長い時間をかけて一般の市場にも広がりを見せました。
今では政府がスペックを規定することや政府と契約を結んで腕時計の製造を行うことは稀であり、軍の特殊作戦隊員でさえロレックス サブマリーナーではなく既製品であるG-Shockを好んで着用します。
しかし、ミリタリーウォッチの機能を重視したデザインや、歩兵をはじめ潜水士、爆発物処理班員、特殊作戦隊員など日々命を危険にさらしている人たちの腕を飾っていたという歴史は、現在も時計コレクターを魅了してやみません。
必要な機能を果たすために大切なものだけが詰め込まれたデザインには、特別な美しさがあります。
ミリタリーウォッチの特徴
1. 頑丈さ
ミリタリーウォッチのケースは、衝撃や腐食、そのほか厳しい環境にも耐えられる頑丈な作りである必要があります。戦中の材料不足などでステンレススチールの使用が難しかった頃は、ニッケルでコーティングされた金属や硬貨を製造するための銀などが使用されていました。
現在では、スチールよりもプラスチックが使用されるようになってきています。
2. 発光
暗がりでも時刻を知るためには、文字盤がバックライトなどなんらかの形で発光しなければなりません。したがってミリタリーウォッチにはなんらかの発光する機能が備わっていました。
しかし発光する文字盤は敵軍に時間を知られてしまう危険性があったため、当時のミリタリーウォッチにはカバーがされているものも少なくありませんでした。
3. 信頼性
手巻き式でもクオーツ式でも、ミリタリーウォッチは常に信頼性の高い製品でなければなりません。戦地が寒い場合も暑い場合も、また高地であってもムーブメントは正しく機能する必要があります。
電池式時計の場合は、電池が極端に長持ちするつくりでなければなりません。
4. 有用性
ミリタリーウォッチは、必要に応じて仕様に変更や改良を加えられるよう、シンプルなつくりをしていなければなりません。厳しい環境下ではパーツが破損してしまうことも少なくありません。
そういったとき、例えばムーブメントなどが非常に複雑なつくりになっているとすぐに使用を再開することができなくなってしまいます。
5. 使いやすさ
時計を読みやすく、操作しやすい設計にするため、機能を阻害してしまうような要素は全て排除しなければなりません。例えば、文字盤のデザインが複雑すぎると時計が読みづらくなります。
また、ダイバーズウォッチのベゼルが回りづらい場合は水中での使用に非常に不便です。
時計の紹介
ここからは、世界で最も有名なミリタリーウォッチとその簡単な歴史をご紹介しましょう。ここでの紹介は決定版とは言えないかもしれませんが、できる限り多くの国と種類のミリタリーウォッチをご紹介しています。
WWI トレンチウォッチ
19世紀終わりごろのドイツでは特定の目的専用の腕時計はほとんど生産されておらず、第一次世界大戦が始まったころに初めて使用されるようになりました。
それまでは指令を出す時間や大砲を打つ時間の計算をするのに懐中時計が使われており、両手を使った作業では一旦どこかへ置いておかなければなりませんでした。
そのため兵士たちは懐中時計にワイヤーをはんだ付けしてそこに革製のストラップをつけ、このデザインに時計店や宝石店が注目し始めます。
兵士たちが“トレンチウォッチ”を身に着けた状態で戦争から戻るとこの時計がブームとなり、それまで女性的と思われていた腕時計を男性が身に着けることが流行となりました。
ウィームス セカンドセッティング
アメリカ軍で少佐をしていたフィリップ・ヴァン・ホーン・ウィームスが設計したこちらの時計は、天測航行での使用を目的に発明されたウィームスの特許製品です。
この時計を無線から発せられる信号と同期させて水先案内人に正確な時刻を知らせるため、ウィームスは2つ目のリューズでベゼルを動かすことができるように設計しました。
こうしたことで、水先案内人は腕時計が示す時刻と無線信号が示す時刻の誤差を確認し、航行でのミスを最小限に抑えることができました。
このデザインは、のちのチャールズ・リンドバーグがデザインしたアワーアングルにも採用されました。
6B/159
“Mk 7A (6B/159)”の称号を受けたこれらの腕時計は第二次世界大戦時、オメガ、ロンジン、ジャガー・ルクルトによってつくられ、イギリス海軍の航海士によって使用されました。
白い文字盤に黒いアラビア数字のインデックス、秒針を文字盤の中心に配置し、発光塗料の使用はなし、時計の針はブルースチール製で、ケースはクロムまたはステンレススチール製であることが規定されました。
戦中も使用されており、年代を経て文字盤が取り換えられた個体もあるものの、現在でもよい状態で残っているものが多数存在します。
手巻き式のオメガ12.68Nなど、非常に質の高いムーブメントが使用されていたことがその要因の一つと言えるでしょう。
現在ロンジンが展開しているヘリテージ ミリタリーと呼ばれるシリーズにも、ここで使用されたデザインが採用されています。
A-11
エルジン、ウォルサム、ブローバがつくりあげた大きさ30~32mmのこちらの腕時計は、米軍が設定した基準に基づいて繰り返し製造され、そのなかには“6B”の名で他の同盟軍にも支給されたものもありました。
黒い文字盤(実は、白い文字盤のものもわずかに存在します)、白いアラビア数字のインデックス、時計の針に60分の目盛りのみという、時刻を知るためだけに作られたシンプルなデザインが特徴です。
このモデルは戦時中の生産量が非常に多かったため、「勝利の時計」とも呼ばれています。
MkIIから、この時計のアップデート版ともいえるCruxible(約6,7000円)が発売されています。
The Dirty Dozen(ダーティ・ダース)
映画のタイトルから名づけられたこちらの時計は、1945年にイギリス国防省と契約を結んだ12のスイスメーカーにより製造されたモデルを指します。
メーカーによりモデルはわずかに異なりますが、どの時計も直径35~38mmのステンレススチール又はめっき卑金属製のケースに、ラジウムの発光塗料が付された黒い文字盤、ムーブメントはクロノメーター級の手巻きで、スクリューダウン式の裏蓋(IWCモデルを除く)を使用し、軍事用であることを示すマークが施されています。
全体で15万点ほど生産されたこちらの腕時計は、現在でも数十万円ほどで手に入れることができます。
B-Uhrens
1930年代後半、爆撃機の乗組員に支給する腕時計としてBeobachtungs-uhren(ドイツ語で「観察用時計」の意)が生産されました。
ドイツ航空省がスペックを規定し、IWC、A. Lnage & Söhne (A.ランゲ&ゾーネ)、Wempe(ヴェンペ)、Laco(ラコ)、Stowa(ストーヴァ)の5社により生産されましたこれらの腕時計は、パイロットウォッチの代表的なデザインがなされています。
B-UhrensにはタイプAとタイプBの二種類があり、それぞれ文字盤のレイアウトは異なりますが、どちらもやや大きめの直径55mmケースの中に手巻きムーブメントが搭載されています。
こちらの腕時計はフライトジャケットに隠れてしまわないために大きめに作られたようですが、パイロットや航海士が両手を自由に使えるよう脚に巻き付けていたため大きい必要があった、とも言われています。
セイコー社 “カミカゼ”
セイコー社が製造している腕時計の1つに、現在“カミカゼ”の名で知られている腕時計があります。
セイコー社は1930年代~1940年代にかけて日本軍に対し様々な腕時計を生産しましたが、こちらの“カミカゼ”は終戦直前の神風特攻隊に支給された腕時計として有名になりました。
したがって現存する個体数は非常に少ないことで知られています。
実際に神風特攻隊によって使用されていたかどうかは不明ですが、こちらの腕時計もケースが大きめに設計されており、同時期に製造されたB-Uhrenとの不思議な一致が見られます。
ブランパン フィフティ・ファゾムズ
第二次世界大戦中の1952年、フィフティ・ファゾムズはフランス特殊作戦執行部のエージェントであったボブ・マルビエのアイデアから生まれました。
フランス海軍のクロード・リフォーとともに新たな潜水ユニットを秘密裏に作り上げようとしていたころ、マルビエは理想的なダイバーズウォッチのスケッチを作成しいくつかの企業へと持ち込みました。
ブランパンが製造を請け負うことになり、以来フィフティ・ファゾムズは腕時計会で最も有名なダイバーズウォッチとなりました。
ブランパンは、現在でも新しいバージョンのダイバーズウォッチを製造しています。
モノプッシャークロノグラフ
モノプッシャークロノグラフは、1940~50年代後半イギリス国防省との契約のもと、レマニア、ブライトリング、ロダニアが生産した腕時計です。
スタート、ストップ、リセット機能を備えたボタンが特徴的なこちらの腕時計はイギリス空軍のパイロットをはじめ、海軍にも支給されていました。
38.5mmのステンレススチール製ケース、17石のレマニアキャリバー15 CHTムーブメントにラジウムが使用された文字盤が使われています。
モノプッシャーの別モデルであるレマニア6BBには、40mmのアシンメトリーケースに、手巻き式のレマニア2220ムーブメントが使用されています。
MIL-W-46384、GG-W-113
これら二つのモデルは1960年代に米軍で使用が開始されたもので、ベトナム戦争中に米兵に支給された腕時計として有名です。
製造が開始されてから様々なバリエーションが生まれ、インターネット上のオークションサイトなどでもスチール製またはプラスチック製のケース、7石もしくは17石の手巻きムーブメントやクオーツ式のものまで見つけることができます。
生産量が多かったため、現在でもベンラス、ハミルトン、マラソンなどから2万円ほどで購入することも可能です。
リメイクされた現代版をお求めの方には、Military Watch Company(ミリタリーウォッチカンパニー)が販売しているGG-W-113もおすすめです。
オメガ シーマスター300
こちらの腕時計が製造されたのは1957年でしたが、使用されるようになったのは10年後のことでした。
1967年、イギリス国防省はそれまで使っていたロレックス サブマリーナーの代替品としてオメガのシーマスター300の使用を決定しました。
商品名の300は水深300mを指しています。
ねじれのあるラグ、キャリバー522の自巻きムーブメント、分単位の目盛りのついたベゼルが特徴的なシーマスター300は、ミリサブと同じくダイバーズウォッチを象徴する腕時計の1つです。
特殊舟艇部隊の隊員が使用していた軍事マーク付きのものですと、百万円は下らない代物です。
オメガでは、現代版のリメイク品も販売されています。
スミス W10
W10は、1960年代後半~1970年代前半にかけて有名イギリス時計メーカーが手掛けた、ミリタリーウォッチとしては珍しい国内製の腕時計です。
大きさは直径およそ35mm、手巻きムーブメントは耐磁性のあるダストカバーに覆われており、黒い文字盤と時計針にはトリチウムが使用されています。
スプリングバーが固定されているのも特徴です。
文字盤に付されたブロードアローのマークは、イギリスの所有物であることを示しています。
陸軍と海軍用にそれぞれ異なるバージョンが製造されていますが、どちらも裏蓋に“6B”の刻印が見られます。
ベンラス タイプ1 タイプ2
アメリカ軍が求めるダイバーズウォッチのスペックを実現するため1970年代にベンラスによって作られたタイプ1、タイプ2と呼ばれる腕時計は、水深366メートルまで耐えることができます。
タイプ1はインデックスの周りにマーカーとして夜光塗料が配置されているモデルで、これに対しタイプ2は24時間表示の文字盤に三角形の夜光塗料が配置されています。
タイプ2に関しては、原子力潜水艦などトリチウムの使用が問題となり得る場所でも使用できるよう、特別に夜光塗料が使用されていないモデルも生産されました。
Mk IIは現代版であるParadive(パラダイブ)を発売しており、またマラソンもプラスチック製のケースを使用したNavigator(ナビゲーター)という腕時計を販売しています。
“Bund” フライバッククロノグラフ
1960年代~1970年代にかけてタグ・ホイヤー、レオニダス、ゼニスなどが生産したミリタリーウォッチで、ドイツ軍やイタリア空軍に支給されていました。
多くはドイツ軍に使用されていたことから“budeswehr(ドイツ語で「ドイツ軍」の意)”の名をとって“Bund(バンド)”の名でも知られています。
このモデルを手掛けたブランドは様々ですが、どのモデルもバルジューのフライバックムーブメントと目盛りのついた回転ベゼルが使用されているデュアルレジスタクロノグラフである点は同じです。
実は、初期に生産されたモデルにはSinn(ジン)が製造したものも含まれており、現在でもこのブランドの製品を入手することも可能です。
現在では、ギナーンが現代版を製作しています。
アシンメトリークロノグラフ
モノプッシャークロノグラフのあと、イギリス国防省はハミルトン、CWC、ニューマーク、プレシスタが生産したアシンメトリーケースのクロノグラフを使用しました。
これらは1970年代後半~1980年代前半に支給されたもので、2つのボタン、バルジュー7733のムーブメント、スチール製のケース、トリチウム使用の黒文字盤、支給先を記した軍事マーク(“RN(イギリス海軍)”、“RAF(王立オーストラリア空軍)”、“Royal Australian Navy (王立オーストラリア海軍)”のいずれか)が特徴です。
CWCが現代版となるリメイク製品を販売しています。
エテルナ コンティキ スーパー
エテルナのコンティキ スーパーは軍事用モデルとして設計されたものではありませんが、その頑丈さ、文字盤の読みやすさ、無骨なエテルナマチックムーブメントから、イスラエルの特殊部隊S-13に重宝されていました。
一般用でありながらケースが直径44mmで軍事用のものとサイズがほぼ同じであり、軍用に用いられた個体には裏蓋に支給番号とヘブライ文字で“tzadi(ヘブライ語で「イスラエル国防軍」の意)”という刻印が施されました。
エテルナでは現代版のコンティキ スーパーを購入することができます。
ロレックス ミリサブ
1954年に初めて生産されてから、様々なロレックス サブマリーナーがイギリス国防省へ供給されましたが、市民用モデルの“5513”、市民用から軍事用への過渡期にあった“5513/5517”、軍事専用の“5517”の3つモデルは世界でも最も有名なミリタリーウォッチと言えるでしょう。
これらの特別な“ミリサブ”シリーズには、文字盤にトリチウムの使用を表す“T”のマークが描かれています。
水中での計測を正確に行うために目盛りがついているベゼル、剣のような形をした時計針、固定されたスプリングバーが特徴です。
オリジナル品は1,200点ほどしか生産されなかったため現在1千万円は下らないといわれていますが、スタインハートなどでリメイク版をお求めいただけます。