日本のガラス ガラス用語集(氷コップ)3

ガラスについての用語集

ちろり

酒の燗をするための道具です。

本来は、真鍮や銅、錫などでできています。

上部には取っ手と注ぎ口がつきます。

ガラスのちろりは、土瓶形をしているのです。

注ぎ口と取っ手を持つものをさして、冷酒を入れるために使用したと考えられています。

江戸時代の製品としては、福砂屋が所蔵しているものが大変優美であるとして、有名となっています。

ガラス問屋加賀屋久兵衛の引札には同じものが掲載されています。

そこには「薬罐」として、横に取っ手のついた急須型の製品が「器瓶子」として載っているのです。

銅赤ガラス

暗い赤色をした色ガラスのこと。

銅の酸化物を加えて発色させています。

薩摩切子の赤色は、この銅赤ガラスであると言われています。

トンボ玉

模様のあるビーズ一般のことを、トンボ玉といいます。

江戸時代から使われていた言葉です。

語源は明らかになっていません。

紀元前の時代から、トンボ玉というのは装飾品、護符、もしくは交易の道具として世界中で特徴のある製品が作られています。

その伝播を辿っていくことで、交易や文化交流についてを知ることができる貴重な情報源ともなっているのです。

日本でも古墳からトンボ玉が出土しているのです。

このとき、出土していたトンボ玉は、西アジア方面のものであると考えられています。

トンボ玉の模様は、大変多くさまざまな変化が見られます。

中には目玉模様をしているものもあり、これは魔除けとして各地で大変な人気となっていました。

モザイク・ガラスを埋め込んだトンボ玉も地中海方面で大変多く作られていました。

しかし、このトンボ玉はとても複雑で手がこんでいるのです。

ヴェネツィアやオランダで作られたビーズは、貨幣の代わりに奴隷貿易を支えたという歴史があります。

植民地へと大量に運ばれていたのです。

日本では江戸時代に、大阪を中心に作られていました。

そこで作られていた製品は、根付や帯締め、髪飾りなどに利用されていて、珍しい玉はとても人気が高かったのです。

長崎ガラス

江戸時代に長崎で作られていたガラスのことを、長崎ガラスといいます。

日本のガラス製造の技術は中世の頃に、一度完全に断絶してしまっていました。

しかし、近世以降になると、長崎を基地として再び発展をはじめたのです。

長崎から京へ、大阪へ、江戸へと技術が伝わったと考えられています。

18世紀になると長崎ガラスは、長崎土産の一つとしてもあげられるようにもなっていて、その発展具合が推し量れます。

無文で、濃い藍色を使うことが多く、宙吹き技法を生かした形態を持っているのが長崎ガラスの特徴としてあげられます。

鶴首徳利やちろりのように、滑らかな美しいラインを持っているものが、長崎ガラスの代表的な製品と言われています。

しかし、長崎ガラスだけではなく、江戸時代に作られていたガラスの、生産地や時代を判別するための詳しい基準というものは、まだ明らかにはなっていないのです。

鉛ガラス

大量に鉛を含んでいるガラスのことをいいます。

透明度の高い鉛クリスタルガラスは、17世紀のイギリスでレイヴァンズクロフトが開発したのです。

しかし、古代中国や江戸時代の日本でも作られていました。

これは、ソーダガラスよりも低い温度で熔かすことができるのです。

しかも、柔らかいのでカットのような加工を行うときも適しています。

光沢があり、曲折率が高いのでカットを施すと、深みのある輝きを放つようになるのです。

江戸時代に作られていた鉛ガラスの場合は、製品によってはなんと50%もの鉛を含んでいることもあるのです。

大変重いのが一般的で、叩いてみると金属のような音がすることが多いです。

乳白色ガラス

骨灰、酸化錫、蛍石というような乳濁剤を入れて、コロイドを発生させたガラスのことです。

「石笠」と呼ばれる乳白色のガラス製の笠が、明治時代のランプや電灯の笠として使われていました。

これには、蛍石や輸入のクライオライト(氷晶石)が使用されました。

乳白色の色々な模様が入った氷コップなどの製品は、模様のついた型に温度変化によって反応をする組成ガラスを吹き込みます。

すると、型に触れている部分と凹部分との色を変える仕組みになっているのです。

フランスのラリックにおいても、骨灰を入れたガラスを再加熱することにより、白くする方法が取り入れられています。

舶来吹き

西洋式のガラス製法で、明治時代になって新しくはじまった方法でもあります。

品川硝子に招かれた英国人硝子技師たちが、伝習生たちに伝え、そこから各地へと広がっていきました。

伝えられたのは、この方法のテクニックや道具だけではありません。

窯の構造やガラスの組成、燃料というようにガラス製造に関係する近代的なシステム全般が導入されていきました。

具体例としては、ソーダガラス、石灰燃料、連帯窯、グラインダーによるカットやグラヴュールに、型押しなどがあげられます。

花切子

カットで使われることが多い、石製のグラインダーをうまく使い、花模様などを彫り込む技法のこと。

グラヴュールのようにも見えるのですが、それよりも、もっと簡単に花模様を彫ることができます。

タンブラーなどによく利用されています。

バラスター・ステム

主にイギリスでよく見られていた形の杯です。

杯の脚部(ステム)が建築などでよく使われている、手摺り子(バラスター)のように見えるものことです。

ゆるやかな曲線で膨らんでいるのが特徴です。

バリ

ガラスの余分にはみ出ている部分のことをこう呼びます。

プレガラス製品の型を合わせたときに、はみ出る部分です。

同じ単語でも、場所によっては、まったく違う意味を持つものもあります。

火切り

吹き竿から、容器の口縁部を切り離して、窯の火にかざすと、なめらかな仕上がりになり、その技法のことを火切りと呼びます。

平切子

平摺りのことをこうも呼びます。

まず回転する砥石や、鉄板などの側面に、水と研磨剤を付けます。

そして、ガラスを押し付けて摺ると平面状にカットされるのです。

ビリ、肌荒れ

実際に、人の肌が荒れることではありません。

プレスガラス製品におこることが多い欠陥のひとつです。

表面にシワなどがよってしまい、平滑ではなくなった状態のことをいいます。

和製のプレスガラスによく起こります。

ガラス種を加工するときに、型の温度が適切でないと、発生してしまいます。

地方によっては、ビリというと、ガラスのヒビのことをいう場合もあります。

ファセット

カット文様の種類の一つです。

彫り込むときに深い溝ではなく、浅い平面状にガラスを彫り込みながら模様を施していく技法のことをいいます。

ファン・スカラップ

カット文様の種類の一つです。

小さな扇をめぐらしたように、ボウルなどの口縁部をカットしていく技法のことをいいます。

火舎

ガス灯や石油ランプの口金(バーナー)にセットされる筒状をしたガラスのことをいいます。

空気が口金から入り、温めて燃焼するのを助ける大切な役割を持っています。

バーナーの種類によってさまざまですが、竹ボヤや、いもボヤというように違う形のものが使われることもありました。

ホヤはすぐに煤けてしまいます。

そのため、こまめな掃除が欠かせないのです。

さらに、壊れやすいこともあり、明治時代ではガラス産業において、重要な品目だったのです。

この上に、笠(シェード、グローブ)をかぶせて光を和らげます。

この笠のことを外ホヤと呼ぶこともありました。

ポンテ

ポンテ竿のことをいいます。

棒状の道具のことで、無垢の金属でできています。

焼けたガラスの小塊かリングを先端に付けて、吹き竿を利用して成形したガラスの底に付けます。

そして、それを切り離し、口部を仕上げたり、最後の成形を行うために使用されるのです。

この棒を取り外したあとに、ザラザラとしたものが残るのですが、このことをポンテマークと呼びます。

マーブル模様

エジプトやメソポタミアで古くから行われてきた技法です。

地となるガラスの上に紐状になった色が違うガラスを何重にも巻きつけて、鉤状になっている道具で軟らかいあいだに等しい間隔で引っ掻くと、美しい縞模様ができるのです。

水金

陶磁器の上絵付けにも使用される絵具のことです。

硫黄や、金の塩化物、そしてテレピン油などを混ぜたものとなります。

低温で焼成することで、色を定着させます。

脈理

筋状の不均質がガラスの内部に現れてくることをいいます。

調合する材料の不良や、温度や時間の不足からおこる熔解不良、そして耐火物の侵蝕などが原因で発生します。

矢来文

斜めの格子を広い間隔で切り込んでから、竹矢来のような模様を表すため、あいだに地の部分を四角く残したもののことをいいます。

魚子文を地の部分に彫っていますが、イギリスではストロベリー・ダイヤモンドと呼ばれているのです。

日本では江戸時代のカットグラスにもよく使われていました。

熔着

別のガラスを本体のガラスがまだ熱いうちに接着させる技法のことをいいます。

取っ手や脚をつけたり、紐状のガラスを巻きつけたりするときに行うのも熔着なのです。

ガラスにガラスをくっつけるときは、両方のガラスの温度が同じでなくてはいけないので、高度な技術が必要となってきます。

ラスター彩色

金属酸化物を含んでいる顔料をガラスの表面に塗って、焼きつけることで、玉虫色の色彩を表現したもののことをいいます。

近代では、ティファニーやロェツの作品が有名となっていますが、10世紀前後ではイスラム・グラスに多く使われています。

旭硝子合資会社や橘硝子製造所では明治の末頃からこの技法が使われています。

和吹き

江戸時代から伝わるガラスの作り方を表現した言葉です。

対しているのは舶来吹きとなります。

坩堝がひとつ入った小さな窯で、木炭を使い、少しの鉛ガラスを溶かします。

ちいさな瓶やぽんぴんを吹くというような、小規模で家内工業的な生産の方法のことです。

割型

型吹きに使う型やプレスガラスの一種です。

複雑な形を一度に作るときに使うものです。

蝶番などで留められた、複数にわけられた型を成形してから、簡単にガラスから取外すことができるようになっています。

ガラスの着色

ガラスに、さまざまな金属、非金属、金属酸化物などを加えると、コロイド着色やイオン着色などにより、多用な美しく華やかな色を発色するようになるのです。

たとえ着色剤が同じであっても、鉛ガラスとソーダガラスのように、ガラス素地の種類が違うと、酸化や還元条件によっても色は変わってきます。

ここにいくつかの種類をあげておきましょう。

  • 青 コバルト(濃紺)、銅(スカイブルー)
  • 赤 金(ルビーレッド)、銅(黒みがかった赤)、セレン(オレンジがかった赤)
  • 緑 クローム、鉄
  • 紫 マンガン
  • 乳白 骨灰、蛍石、錫
  • 黄 銀、硫化カドミウム

ガラスの種類

ガラスには、それぞれの主成分である珪砂に加えて、熔融促進剤として使われるアルカリの他に、多くの原料の組み合わせによって特徴的な性質を持つようになります。

現在作られているガラスの種類や用途などを少しご紹介していきましょう。

  • ソーダ石灰ガラス (原材料)珪砂、炭酸カルシウム、炭酸ソーダ (用途)窓ガラス、瓶ガラス
  • 硼珪酸ガラス (原材料)珪砂、硼砂、炭酸ソーダ (用途)医療用ガラス、理化学、耐熱ガラス
  • 鉛ガラス (原材料)珪砂、酸化鉛、炭酸カリウム  (用途)高級食器用鉛クリスタルグラス