機械式腕時計とクオーツ式腕時計について

はじめに

腕時計には大別して2つの種類があります。

1つは機械式、もう1つはクオーツ式です。

機械式は様々なゼンマイやテンプといった部品の組み合わせによって動いています。

電気の力は使いません。

そのため、電池の交換の必要がなく、何度も修理して半永久的に使うことができます。メーカーによって部品の仕上げ方や、仕組みに差異があり、ひとつひとつ個性のあるものとなっています。

髪の毛より細い部品なども使っているため、4~5年に一度はオーバーホール(分解掃除)をして、磁気帯びをとったり、歯車に注油したりする必要があります。これが大体5万円ほどするので、なかなか維持費はバカになりません。

しかしメーカーには修理するための交換部品が保管されており、機械式時計の技術が費えることがない限り、修理してまた時を刻むことが出来ます。

毎日ゼンマイを巻き、シースルーバックのものでは、中のムーブメントを見たりすることもできるので、持ち主との対話を楽しめます。

自分と共にする時の流れを小さなケースの中に閉じ込めた、機械式時計は命も感じる、とても神秘的なものなのです。

 たいして、クオーツ式はどのメーカーでも構造に違いはありません。

電気によって制御されているため、機械式とは比べ物にならないほど精度が高いのが大きな特徴です。ハッキリ言ってしまうと、100万の機械式腕時計よりも、スーパーに売っている1000円程度のクオーツ式のほうが精度ははるかに良いのです。

そのためリューズを巻いたりして時間の調整をする必要もほぼないのがメリットです。

しかし、2~3年で電池は切れ、その交換用の電池も2~3年のうちになくなってしまうことも少なくないので、永い間共にすることが出来ないのが最大の欠点です。

また、歯車などは機械式時計同様注油をする必要があるため、電池を交換するのと一緒に分解掃除をしないといけません。これも値段は大体3万円以上になってくるので、永く使うという観点から言うと、あまりコストパフォーマンスは良いとは言い切れない部分があります。

機械式腕時計について

機械式腕時計は巻き上げられた主ゼンマイがほどける際に生じる動力で針を動かしています。

手巻き式と自動巻きは主ゼンマイを巻き上げるメカニズムが違うだけなので、大きく構造は変わりません。

では、どのような仕組みで動いているのでしょうか?機械式時計は大きく4つの機構から成り立っています。

動力機構…香箱、主ゼンマイ

輪列機構…香箱車からガンギカナまで

脱進機構…ガンギ車、アンクル

調速機構…テンプ、ヒゲゼンマイ、振り石

まず動力源となる主ゼンマイは香箱(車)の中に入っています。まさにエンジンに相当する部分です。

まさに言葉通り「動力機構」となります。

この主ゼンマイが手巻き式時計の場合はリューズによる手による巻き上げ、自動巻き式時計の場合は腕の動きを利用して動くローター(回転錘とも)によって巻き上げられた時、そのほどけようとする力で香箱車が回転し始めます。カナを介して各歯車に力が伝わっていきます。

これが「輪列機構」です。

しかし主ゼンマイがそのまま勢いでほどけきってしまうと各歯車は制御がきかないまま高速で回転し続けてしまいます。

例えばきちんと秒針が1分間に1回転するように限りなく精密に回転数を調整していますが、調整していなければ秒針が1分間に2回転も3回転もしてしまうということです。

これでは正確な時間を刻めません。

 そこで出てくるのが、「脱進機構」のガンギ車とアンクル、「調速機構」のテンプ、ヒゲゼンマイ、振り石です。

 「輪列機構」を介してきた回転運動はガンギ車に到達します。

ガンギ車の回転運動はアンクルを動かし、アンクルは回転運動を、往復回転運動へと変換してテンプに伝えます。

「脱進機構」の役割は主に3つあります。1はテンプに対してエネルギーを与えること。2は「輪列機構」からなる回転運動をテンプの往復回転運動に変換すること。

3はテンプから与えられる「振り子の等時性」を利用した規則正しい運動を「輪列機構」に伝えるということです。この「脱進機構」がなければ主ゼンマイはほどけきってしまいますので、大変重要な仕組みなのです。

そして「脱進機構」から伝わってきた運動は「調速機構」であるテンプによって言葉通り「調速」されます。

まさに時計の心臓部といえるところで、ここで時計は精度を保っているのです。

それを担っているのがテンプです。テンプに付けられたヒゲゼンマイは振り子と同じく等時性を持っています。

アンクルからテンプが右に回ると、ヒゲゼンマイの力によって元に戻ろうとして左に回っていきます。

そしてまたヒゲゼンマイに引っ張られて元に戻ろうとします。この動きに等時性があるため、今度はテンプの運動が逆に「脱進機構」のアンクル→ガンギ車と通じて「輪列機構」に伝わっていくのです。

こうして機械式時計は精度を保っているのです。

すべて振り子などの原理を利用したこの仕組みは、1000分の1ミリ単位で設計されて、職人たちの細かい調整を受け、初めてそのボディーに時を纏い、命が誕生するのです。

この繊細さこそクオーツ式時計にはない、機械式時計の魅力なのです。

クオーツ式時計について

クオーツ式時計の最大の特徴はその正確さです。

クオーツはそもそも石英を意味します。石英の透明な結晶を水晶といいます。

クオーツ式時計は水晶の往復運動を利用した仕組みになっています。電池から発生する電気を、電子回路を介して人口水晶に伝えます。

人口水晶は1秒間に32,768回振動します。

この振動にあわせて、60秒で1回転するように歯車を作れば、規則正しい運動を続けます。動力源が時計の中に電池として組み込まれているため、機械式時計のように、ゼンマイをわざわざ巻き上げる必要もなく、装着せず放っておいても、電池が切れるまではずっと動き続きます。

クオーツ式時計は1969年我が日本国のセイコーが発明しました。

そしてこの発明はいわゆる「クオーツショック」とも呼ばれ、世界中のメーカーがこぞって真似たのでした。

オメガのデ・ビルなどはクオーツショックが起きてからしばらくの間はすべてクオーツ式で売られていたほどです。

クオーツ式時計は大量生産に向いており、職人の技術も要しません。

安価なものも多いです。

使用する側も手間がかかりませんし、気を使う必要が機械式時計に比べればあまりありません。

しかしクオーツ式時計は2~3年で電池を交換しなければなりません。

また電子回路が壊れてしまった場合、メーカーでも当時の部品がなくなってしまって修理を受け付けられない場合がほとんどです。

ですから、10年、20年と使うのはとても難しいのがクオーツ式時計の最大の難点です。実際アンティークのクオーツ式時計はそのほとんどがジャンク品となっています。

最後に

以上2つの時計の仕組みについて説明してきました。どちらの時計にもそれぞれ良いところがあります。

もしあなたが何よりも精度を大切にするのであれば、Gショックなどのクオーツ式時計でもいいですし、値段を抑えたいのであれば、スーパーのクオーツ式時計などで良いでしょう。

 逆に自分の人生を一緒に歩むパートナーを探しているのであれば、選ぶべきは機械式時計でしょう。

 これが皆さんのパートナー選びのお力になれれば幸いです。