エミールガレのエナメルガラスが使われた初期作品 ダリア文水差し解説
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今回ご紹介する作品なのですが、エミールガレの初期作品エナメルガラスが使われたダリア文水差しでございます。
まずなんで、初期のころってドーム兄弟もそうなんですがエナメルガラスの作品が多いかって言いますと、まだ透明のガラスの方が美しいって価値観だったんですよね。
それでガレは、そこにこんな感じで透明のガラスの上から色彩豊かなダリアを描いたり、カマキリを描いたりして新しい芸術を生み出したわけですよ。
これはジャポニズムから影響を受けています。
それまでの西洋の芸術に、カマキリを芸術に取り入れるなんてありませんからね。
そういった感じで、エナメルガラスに絵を描いて世間から受け入れられるようになってくると、色ガラスで色々なバリエーションを増やしていったんですね。
だから、初期の作品はエナメルガラスが使ってあるんですね。
それで今回の作品なのですが、エナメル彩って技法が使われています。
これは低音で溶けるガラスの粉末と油脂を混ぜ合わせて、透明のガラスの上にモチーフを描いていく技法です。
そして、絵が描き終わった後に低温の窯に入れて焼きしめることによって、絵と色が浮かび上がるという仕組みなんですね。
では、次なんですがダリアの花の蕾の部分が浮き上がってるじゃないですか。
これはアプリカシオンといって、別にこの半球ガラスを準備しておいて土台のガラスを溶かして、そこにくっつけるんですね。
その後に、エングレービングっていってグラインダーで削ったりしていくんですが、おそらくこの作品は、最初の状態から模様が描かれていたのではないかと思いますね。
では、次なのですがパチネの技法について解説して参ります。
パチネとは、炭灰や酸化物を作品に吹きかけることによって、がさつきを表現する技法です。
1つの作品の中に、ここまでの技法を取り入れるというのは非常に手間のかかることです。
それを1900年代初頭の工芸家たちは、芸術のためにやっていたのかと考えると、やはり芸術とは奥が深いものですね。