ユニバーサルジュネーブの隠れた名品:シャドウシリーズ
ユニバーサル・ジュネーブの腕時計はコレクター界隈の間でも特に愛されている作品を多く生み出しています。【コンパックス】や【トリコンパックス】といったモデルはコレクターの欲しいものリストの上位に君臨しているとも言われています。
そのなかでも今回注目するのはユニバーサル・ジュネーブの名を広めたマイクローターを搭載した1950年代から1960年代にかけて作られた時計たちです。
隠れた名品- シャドウシリーズ
戦後のユニバーサル・ジュネーブの代名詞となった時計に有名デザイナー、ジェラルド・ジェンタが手掛けた1954年の【ポーラールーター】があります。
そして翌年、名前を少しだけ変えた改良版【ポールルーター】が発表されました。ポールルーターは北極上を飛行した際、身につけられていた時計だったことからその名前がつけられました。
ポールルーターは飛行の際,北極圏特有の電磁波の影響を受けずに正常に作動し続けたことから、その性能の高さに注目が集まりました。のちにスカンジナビア航空はポールルーターを自社の公式時計に採用しました。
このポールルーターの大活躍の裏で生まれた時計に【シャドウ】と呼ばれたシリーズがありました。ユニバーサル・ジュネーブの他のシリーズと比べると性能的にもデザイン的にもわかりやすい派手さはないものの、その美しいデザインは今でも多くのコレクターを虜にしています。
初めてホワイトシャドウが発表されたのは1965年。
当時わずか2.3mmという世界最薄のムーブメントを実現したユニバーサル・ジュネーブはこれを搭載した時計を新たにデザインしたのでした。1960年代までのものにはキャリバー2-66が搭載されていました。
シャドウというのはケースの素材によってその名前が変わります。ホワイトシャドウはステンレス、ゴールドシャドウは金無垢、そしてギルトシャドウは金張りのものを指します。これらをまとめてシャドウシリーズと呼ぶ人もいます。
シャドウシリーズの最初の時計- ホワイトシャドウ
この写真はホワイトシャドウの初期のものです。デザイナーはジェラルド・ジェンタです。
この時計の盤面を見ると、そのシンプルさが際立っているのがわかります。
時間を示す針は細めのデザインとなっています。時間を示すダイヤルはシンプルな一本の線で表現しています。時間を伝えるという時計本来の役割に加えて、どのような場面やファッションにでも自然となじみ、かつ品の良さを演出してくれる時計です。
そして写真を見てもわかる通り、ホワイトシャドウはステンレスでできたケースのものを指します。
この時計の品のある白い輝きは手首にエレガントな印象を添えてくれます。また着け心地の良さも人気を支えている一つの大事なポイントです。ユニバーサル・ジュネーブのこだわりとその高い技術力で実現した薄型のマイクローターは腕時計のデザイン性に新たな風をもたらしました。
ユニバーサル・ジュネーブはすべてのパーツを自社で開発していました。20世紀半ばでは多くのスイスの有名ブランドは各バーツ会社が製造した部品を組み合わせて一つの時計を作っていたため、ユニバーサル・ジュネーブのような形は稀だったと言えるでしょう。
ホワイトシャドウもほかのユニバーサル・ジュネーブの時計同様、自社でムーブメントの自動巻きの機械部品をすべて手掛けられた時計です。
上の写真はギルトシャドウの時計。
上の写真はゴールドシャドウの写真。
時計界のピカソ― ジェラルド・ジェンタ
ホワイトシャドウのデザインそのものにもまた、特筆すべきことがあります。
それがこの写真の人物です。
ユニバーサル・ジュネーブの時計の歴史を語る上で欠かすことのできない人物の一人にデザイナーのジェラルド・ジェンタがいます。
彼の代表作をインターネットで検索するだけで名だたる名品の名前が出てきます。
オメガのコンステレーションC
パテック・フィリップのノーチラス
ジラール・ぺルゴのロレアート
さらに幅広く知られているデザインとしてはミッキー・マウスシリーズがあります。
1931年、スイスのジュネーブで生まれたジェンタは10代の頃にジュエラーとして修業を始めました。その後時計のデザインに目覚め、様々な時計メーカーと仕事をしたのちに自身の会社、ジェラルド・ジェンタ社を設立しました。
彼の時計のデザインの特徴を一言で表すなら独創性でしょう。これまでの腕時計の持つ既成概念にとらわれることなく、自由に創造し、数多くの名品を生み出しました。
彼はポールルーターのデザインのアイディアを出した人でもあります。洗練されたデザインは彼の特徴の一つであり、多くの彼のファンもまた、ユニバーサル・ジュネーブのホワイトシャドウを名品として語り継いでいるのです。