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クロノグラフ腕時計 タグホイヤー(TAG Heuer) モナコ 30年の時間を超えて復活した名品
1970年に公開されたのは「栄光のル・マン」という、スティーブ・マックイーンが出演した映画の中で彼はホイヤーモナコを着用していました。
世界初の自動巻きクロノグラフ・ムーブメント「クロノマティック」を、世界初の角型防水ケースに収めた状態で1998年と1999年に復刻版して、世間に再び登場しました。
そのデザインは、とてもダイナミックで印象的でした。
さらにモータースポーツと一緒に歩んできたタグ・ホイヤーの力が、ギュッと収められた話題のモデルです。
俳優マックイーンも愛したタグホイヤーのクロノグラフ
1860年にタグ・ホイヤーは、スイスのサンティエミにエドワード・ホイヤーが、エドワード・ホイヤー・ウォッチメーカーズを創ったことが、その歴史の始まりです。
1916年になると、エドワード・ホイヤー・ウォッチメーカーズは特許を取得します。
その特許とは、100分の1秒まで測ることができる「マイクログラフ」と呼ばれるストップウォッチです。
1882年には、すでにクロノグラフの生産をスタートさせていた同社だからこそできた
技術と言えるのではないでしょうか。
さらに、この「マイクログラフ」は、4年後のアントワープ オリンピックで公式計時時計として採用されるなど、計時機器メーカーとしては、着実に成長していっていました。
同社は、1969年になるとブライトリング、ビューレン・ウォッチ、そしてデュボイ・デ・デプラツという大手4社が共同で取り組んだのが、世界ではじめての自動巻きクロノグラフ・ムーブメントである「クロノマティック」です。
そして、1970年に大ヒットした映画と言えば「栄光のル・マン」ですが、この映画の中で俳優のスティーブ・マックイーンが着用したのが、クロノマティックを搭載した「ホイヤーモナコ」なのです。
このホイヤーモナコの着用は、マックイーン自らが選び、望んでのことだったと言われています。
ダイナミックなブルーのダイヤルを持ち、角型の防水ケースとモータースポーツを彷彿とさせる
モデルです。
早い時期からモータースポーツの世界にも、ホイヤー社は参入していたのです。
だからこそ、ホイヤーモナコ発表のあとも、ホイヤー社は積極的に世界のスポーツシーンに活躍の場を広げていったのです。
さらに、ホイヤー社はF1レース用の電子計時機器の開発にも携わります。
その代表がフェラーリ・モーターレーシングチームのF1公式計時の担当なのです。
ホイヤー社は、自他ともに認めるスポーツ・ウォッチ界のキングとして名を馳せているのです。
クロノマティック開発ストーリー
クロノマティックは、自動巻き機構とクロノグラフが合わさったものです。
クロノグラフはとても複雑な機構をしていますので、自動巻きとの合体は困難とされてきました。
しかし、長い構想期間を経て、ようやくそれが実現することができたのです。
それを実現したのが、ホイヤー=レオニダス、ブライトリングなどを含めた4つの会社の共同開発によるものでした。
1969年、ついに世界初の自動巻きクロノグラフ・ムーブメントは現実のものとなったのです。
クロノグラフへの過酷な要求と時間との戦い
自動巻きクロノグラフは現在では、当たり前のように使用されています。
しかし、クロノグラフの開発にあたっては、各メーカーの熾烈な争いがあったことを
忘れてはいけません。
1950年には、クロノグラフの売上が低迷していました。
だからこそ、多くのメーカーは新しいクロノグラフを開発しようと躍起になっていたのです。
ホイヤー社も、開発に躍起になっていたメーカーの1つです。
ホイヤー社は、ブライトリングや、ビューレン・ウォッチ(その後、ハミルトンと合併します)、デュボイ・デ・デプラツと、自動巻きクロノグラフの共同開発を始めます。
なぜなら、予算の面からも技術的な面からも、この開発を1社で取り組んでいくことは、困難であるとどのメーカーも感じていたからです。
しかし、当然ながらこのクロノグラフ開発に目をつけていたのは、共同開発に取り組むこの4社だけではありません。
アメリカ企業や日本のメーカーは4社にとって、大変脅威的な存在でした。
さらに、スイスのゼニス社が自動巻きクロノグラフ開発を始めているという情報もあったのです。
もう時間との戦いでした。
どこが先んじて開発に成功するのか、わからない状況だったのです。
そしてついに、ゼニス社がエル・プリメロを発表する半年前にの1969年3月3日。
直径31mm、厚さは7.7mm。
マイクロローター装備の自動巻きクロノグラフムーブメント、キャリバー11「クロノマティック」が誕生するのです。
その後、この共同開発に参加した4社はそれぞれ、このキャリバーを搭載した時計を発表していきます。
ホイヤー社は「カレラ」「モナコ」「オータヴィア」と呼ばれる3つのモデルを発表しました。
しかし、やがてクォーツの波がこのムーブメントを飲み込んでいきます。
膨大な費用と、気が遠くなるほどの時間をかけて開発したムーブメントでしたが、1979年、ホイヤー社はマイクロローター式ムーブメントの生産中止を決定します。
クロノグラフのクロノマティック採用のモデルたち
クロノマティック開発に携わったメーカーは、それぞれ自分たちのモデルを発表していきました。
左にリューズが付けられているのが、クロノマティックを搭載したモデルの特徴と言えます。
ハミルトン
「 FONTAINE BLEAU」と呼ばれるモデル。
ツートンのダイヤルを持っています。
「PAN-EUROP703」。
タキメーターと回転ペゼルを搭載。
ブライトリング
ブライトリング
ブルーダイヤルの「トランスオーシャン」。
パルスメーターを装備しています。
ブライトリング
クロノマティック搭載の「ナビタイマー」。
クロノグラフの傑作とも言われるモデル。
ブライトリング
ブライトリングのGMTモデル。
カレンダー、24時間表示の搭載したブライトリングのモデル。
デイトナ
デイトナ
デイトナ・インターナショナル・スピードウェイにちなんで名付けられたクロノグラフ。
これは、フロリダ州デイトナビーチにある、有名なサーキット場のこと。
シルバーストーン
シルバーストーン
1974年に発売されたモデル。
スクエアケースを持つ特徴的なもの。
名前は、イギリスにあるサーキット場の名前から取られている。
クロノマティックのムーブメントを採用している。
オータヴィア
オータヴィア
1933年に同じ名前のダッシュボード・クロノグラフを発表している。
自動車と航空機を組み合わせて名付けられた。
これは、計時機器が活躍している分野である。
カレラ
1950年代に開催されていたメキシコ横断のレース「カレラ・パンアメリカン・メキシコ」から名前を付けられたモデル。
タキメーター付きで1963年に発売。
インダイヤルの周りに縁がついている。
1999年にホイヤーカレラの復刻版として発表。
スポーティなデザイン。
レースやサーキット場から多く名付けられたクロノグラフ
モータースポーツ界に本格的に参入していったホイヤー社。
そのきっかけとなったのは、1933年に開発した世界ではじめてのレーシングカー用ダッシュボード・クロノグラフ「オータヴィア」でした。
参入後も、ホイヤー社はさまざまな場面でモータースポーツの世界を支えていくことになるのです。
そんなホイヤー社の多くのモデルには、世界各国にあるサーキット場の名前や、レースの名前などを冠したモデルがあります。
究極のクロノグラフモデルはGショック?
1879年にロンジンが発表したモデルが、「ルグラン」です。
これは、時計に計時機能を組み合わせたクロノグラフ機構を、最初に商品として販売したものでした。
この後、クロノグラフは機械式時計の進歩に従って、いくつかの積算系、フライバック、スプリット・セコンドなどの計測に欠かせない機能や、ムーンフェズにカレンダー機能、そしてGMTなど時計そのもの複雑な機能を追加しながら進化を遂げていきました。
そしてついに、スイスの2つのグループが力を合わせて、1969年に自動巻きクロノグラフを開発するのです。
それが、ホイヤー、ブライトリング、ビューレン=ハミルトンのキャリバー11とゼニス、モバードのエル・プリメロなのです。
ですが、同年にセイコーが世界ではじめてのクォーツ腕時計を発表してしまうのです。
なんとも皮肉な出来事でした。
精度の面で他を圧倒する実力を持っているクォーツ。
1970年代の世界をあっという間に、クォーツの波に飲み込んでいくのです。
その影響により、スイスの時計産業は大打撃を受けます。
ですが、クォーツの波は押しとどまりません。
あっという間に、デジタル液晶表示時計を発表したかと思えば、またすぐに1/100秒ストップウォッチを搭載させてしまいました。
誕生したばかりの自動巻きクロノグラフでしたが、クォーツの波には勝てず、次々にその生産を中止せざるを得なくなってしまうのです。
そして、ついに登場したのが時計の常識をはるかに超えた耐衝撃構造を持つGショック。
Gショックが誕生したのは、1983年のことでした。
Gショック
Gショックの機能は、どれほど機械式クロノグラフが性能を上げても、複雑な機構を開発しても、到底勝てるはずのないものばかりでした。
このまま、機械式時計は消滅するかに思われたのですが、1980年代後半になると、機械式時計は息を吹き返すのです。
この時代、新たな価値観が生まれます。
その結果、機械式とクォーツは共存することとなり、その2つを同じフィールドに載せることを可能としたのです。
クロノグラフというのは「ストップウォッチ機能付きの時計」ということです。
ということは、クォーツを使用したデジタル時計はほとんどすべてが、クロノグラフと言えるのではないでしょうか。
Gショックは、さまざまな機能をその1本に搭載します。
カレンダー、1/100秒ストップウォッチ、24時間表示、GMT、アラーム、カウントダウンタイマー、電話帳に温度計、気圧計、高度計など、本当に多種多様な機能が満載でした。
その上、どのモデルにおいても耐衝撃構造と、200mの防水性能まで持っているのです。
この機能だけみてみてください。
Gショックこそが、最強のクロノグラフと感じてしまっても仕方ないのではないでしょうか。
しかし、実は機械式クロノグラフとGショック。
このどちらを購入しようかと頭を悩ませる人はいないのです。
それは、まったく別物だからこそ、比較することがナンセンスということです。
大切なのは、必要性と価値観。
機械式クロノグラフにも、Gショックにも魅力的な部分はあります。
野球やゴルフ、スキーなどを楽しむときは、機械式のクロノグラフよりも耐衝撃や防水に優れたGショックのほうが望ましいでしょう。
ですが、オフィシャルな場面などでは機械式クロノグラフを身に付けるという人も少なくないはずです。
場面場面に応じて、適したものを身に付ける。
自己満足かもしれないが、それがもっとも望ましいのではないだろうか。