クロノグラフ物語あれこれ=時計作りの裏方たち
クロノグラフ物語あれこれ=時計作りの裏方たち
時計は一人では作れません。
沢山の裏方さんがいます。
今回はクロノグラフ作りの裏話です
読んで行くうちに
その時計が欲しくなりますよ、きっと。
ほんの数年前、
パテック・フィリップ(PATEK PHILIPPE)
のスターン社長が、記者会見をしました。
話題は主に今後生産するパテックにはジュネーブシールのムーヴメントへの刻印を止め、
それに代えてジュネーブシールを上回る基準を自社で決めたPPシールにする話でした。
ある記者から理由を訪ねられたスターンさんは、一言
「ロジェ・デゥブイ」と答えました
何故でしょう
別に袂を分かったかって自分の部下だったロジェに恨みがあった訳ではないのです。
「ジュネーブシール」の権利を持つロジェがリシュモンクループに属し、
彼の作るムーブメントをカルティエ等に組み込まれ、
市販されるのが面白くないのです。ロジェはジュネーブの人で、勿論彼の製品は
ジュネーブシール認定品。
当然、カルティエの新製品はロジェのムーブを使う限りジュネーブシールが刻印されて来ます。
「ジュネーブシール、そんな、安っぽいものじゃないよ」というのがスターンさんの胸の内でしょう。
さて、記者会見はこれで終りではありません。
もう一つ話題はパテック社が渾身の力をふりしぼって
発表したクロノグラフの新作でした。実は今日の本題でもあります。
パテックが新作をとなりますと、多くの人が自社開発の
ムーブメントかなと想像しますが、新しいムーブメント・キャリバ―を
作るとなれば莫大な投資と時間がかかります。
いくらパティック社が大きくても、やはり独立系です。無理な事はしません。
そんなことをしなくても、
スイスには優秀なムーブメント製作会社はたくさんあります。
この新作はレマニア製のムーブメントをしています。
このムーブメントはブレゲには
アエロナバルとして使われているものです。
ブレゲはスォッチグループのトップブランドです。
そしてレマニアはブレゲの協力工房として同時期にグループに参入しました。
ある日、グループの会長のハイエクさんは「レマニア」を「ブレゲ」と改名させました。
「で、新作のクロノは何処のエボシュ使かっているのですか」
記者がスターンさんに質問しました。
スターンさんがどう答えたかは分かっていません。でもおそらく「ブレゲ」と答えたのでは。
となりますと、あのパテックがブレゲのムーブメントを使っているとなりますね。
これはニュースです。
皆さんが時計購入するときの重要なポイントは四つあると思います。
先ず時計のデザイン
次にブランド名
そして価格がブランド、デザインに相応しいかどうか.
最後に中味,
クォーツ、手巻き、自動巻き、ハイブリットか、後は機能がどうだろうか。
となりますでしょうか。
冒頭のジュネーブシールはだれも、
殆どの人はその存在を気にしていいません。
パテックがジュネーブシールから離れようがどうしようが、
それがあったとしてもそのために買う人は多分・・・・。いません。
その昔、
バセロンコンスタンチンの営業をやっていたころ
この凡そ100年前の遺物であるこのシール、ここぞとばかりに
お客様に説明しましたが、見向きもされなかったです。つまりジュネーブシールは
お客様の購入の決定要素にはなれなかったのです。
そもそもこのシールは100年まえ、当時世界中でジュネーブを騙る
粗悪品が出回りこれに手を焼いたジュネーブの参事会が
このシールを制定しました。以後今世紀に入るまではパテック・フィリップとバセロン
・コンスタンチンにしか使えなかったのです。それが州の法律を変える事によりかなり緩やかな
扱いになりました。
さて偉大なレマニアの話しの続きです。
オメガに有名なクロノグラフ「スピードマスター」があります。
アメリカの宇宙開発事業で実際に人が月に出かて行ったことがありますね。
その時に宇宙飛行士が宇宙船の外で活動する時のNASAの公式の計時装置が
オメガスピードマスター
いつかこの時計がNASA選ばれた経緯お伝えしたいと思っています。
「アポロ13th」
映画、もうご覧になられましたか。月に向かう途中、
宇宙船の電気系統に不具合があり、
宇宙船内の全ての電子機器は止まり、地球との交信も途絶え、地球に戻ることになりました。
宇宙船を地球に戻すためには、成層圏へ突入するときの角度が重要です。
もし、角度を少しでも間違えると宇宙船は燃えてしまいます。
決まった角度で成層圏に入るためにはエンジンの燃焼時間を正確に計らなくては
なりません。スピードマスターはきっちりこの仕事こなしました。
これは後世に語りつぐ話です。
このオメガスピードマスターに組み込まれているムーブメントはレマニア社製です。
手巻きです。
オメガは来る2020年の東京オリンピックにも公式計時担当になっています。
この手巻きクロノグラフの
6振動の比較的ゆったりとした動きは、使う人の安心感につながります。
何をいまさらと思われるかもしれませんが高級時計のムーブメント(機械式)の振動数を下記に示しました。
ムーブメント 一秒間あたりの 一時間当たり
のタイプ 振動数 振動数
5振動 5回 18000回
5.5振動 5.5回 19800回
6振動 6回 21600回
8振動 8回 28000回
10振動 10回 38000回
皆さん、ムーブメントの話がお好きですよね。
それにインターネットでネジ一本の
情報まで取れます。
それどころか、、キャリバ―がどうのこうの、
設計者の名前だとか、
その背景だとかまで読めます。
しかし、思いを寄せるということは、
相手の日常を知るという事より、
彼らが何を考えているかを知ることが重要です。
ムーブメントで最も如実にその性能を表すのは
振動数ではないでしょうか
高級と言われているブランドの看板商品は殆どロービートです。
ゆったりと時を刻み、安定した時間を私たちに教えてくれます。
購買要素の第一位がデザインであることは先に申し上げました。
そして時計のデザインの源は1940年~1950年
にあると以前、説明したこともあります。
現代の名器の殆どは1940年代から60年代のデザインの復刻です。
それを支えているのがムーブメント製作会社です。時計ブランドの大半はクロノグラフ
のムーブメントを自社では作りません。
バルジューやレマニア、エルプリメロなどの作るムーブメントを搭載します。
そして供給する側の彼らも自社ブランドの時計を作ります。
レマニアは素晴らしいムーブメントを作りましたし、
レマニアブランドの製品もあります。
こんなに美しい琺瑯引き文字盤を持つ時計を作っていました
今はアンティーク市場にしかありません。
この会社は19世紀の半ばにジュラで会社が興き、
2000年ころブレゲと共にスオッチグループに加わり、
ブレゲの一部門として残りました。
バルジュー
ルジュー
バ
汎用ではスイス最高のクロノグラフムーメント供給会社です。
スイス時計界で、ここのお世話になっていない時計ブランドはないです。
いいケースデザインもそれにマッチしたムーブメントがあってこそ
生きて来ます。
バルジュCAL.72
バルジュ7750
語り尽せない逸品
今月のおすすめ
二つ目のカウンターのやや丸み帯びた端正な顔付をもつジラールペルゴ。
お薦め逸品です
GIRARD PERREGAUX 1966
このブランドは自家製ムーブを使っています。
つまり外部の供給を享けなくてもいいのです、
スイス国内での評価は高いのですが。
ついでに個々の技術陣が今のクオーツの振動数の
世界基準を決めました。
しかしながら日本市場に於いて、セカンドグループと見られています。
さて如何でした。冒頭のパテックの話はどう受け止められましたか。、
ブレゲがクロングラフの名門・レマニアの名前を残さなかった考え
も面白いです。又ジュネーブのシールの問題は、今後どう変わるのか?
またブレゲの名前に変ったレマニアは今後、社外に安定してムーブメントを供給するのか。
お薦めの逸品、腕にフィットすること請け合います。
ありがとうございます。