クロノグラフ腕時計 現代人の象徴クロノグラフの歴史

18世紀からこれまでのクロノグラフについて

まだ時計で計測することが可能な最小単位というのが、1秒だった時代がありました。

世界にいる時計師たちは、その1秒を割ることを夢見て、大型時計を使い、日々開発に取り組んできていたのです。

そして、彼らの夢が現実のものとなるときが来ます。

それが、クロノグラフ・ウォッチの登場でした。

クロノグラフの機能は、実に優れています。

その機能性の高さは、最近でもコレクターの間で需要の高まりを見せています。

クロノグラフを持つことが、コレクターたちの中でステータスシンボルにまでなっているのです。

最初に、1/4秒ずつ時を刻む柱時計を開発したのは、ジョージ・グレアムでした。

ジョージは18世紀のはじめにイギリスで活躍していた、技術者なのです。

彼は、直進脱進機を発明していました。

その後、ジョージのこの偉業をもとにして、”独立(直進)秒針”ウォッチを発明したのが、ジャン・モアズ・プゼでした。

ジャン・モアズ・プゼは、スイスのジュネーブで時計師として活躍したました。

彼は、1775年に秒針を通常の時計の動きから独立させるために、開発していた”独立(直進)秒針”ウォッチの誕生に成功したのです。

プゼが発明した、この”独立(直進)秒針”ウォッチには、2つの独立した伝送装置がついています。

1本が通常通り時計を動かし、そして残りの1本が秒針を動かしたのです。

秒針は、動いている間ガンギ車のカナと離れるようになっている4番車の上にある、ツメを使い、1度に1秒ずつ動かすことを可能としたのです。

時計のケースについているレバーを動かすと、秒針を停止させて記録することができていました。

しかし、記録することまでは出来ても、一度秒針を停止させてしまうと、秒針をリセットすることはできないままでした。

そして、止まった秒針は、押していたレバーを放すと、秒針は再び動き出すのです。

クロノグラフの発明において、欠かせない人物の存在がありました。

それは、リューゼックというパリで有名だった時計師です。

このリューゼットという名時計師は、なんと1882年にクロノグラフの本来意味するモデルを開発することに成功したのです。

クロノグラフという言葉には、ギリシアの言葉で”時間を記録する”という意味があるのです。クロノグラフにはその言葉の通り、最初は印をつけて記録することが可能だったのです。

リューゼックが発明したのは、小さなペン先を中央の秒針についたウォッチを発明したのです。

この中央秒針は後に”トロトーズ”という通称を得て呼ばれていました。

さらに、この中央秒針を抑えると60秒というメモリがついたダイヤルの上に印をつけることが可能となっていたのです。

そして、このクロノグラフははじめて馬術大会で試用されていました。

現在のクロノグラフが完成したのが1844年のことでした。

スイスにいたアドルフ・ニコールという時計師が、ハート型のカムをクロノグラフ用に発明したことにより、完成したのです。

そして1862年にロンドンで開催されていた世界博覧会でスイスのジュラ渓谷地方の出身であり、同じロンドンでニコライ・アンド・キャプト社を経営していた時計師たちがクロノグラフをはじめて出店したのです。

そのクロノグラフは、秒針の”トロトーズ”をリセットすることができ、さらに時間を記録することもできるものでした。

その上、このクロノグラフは1/5秒まで計測することもできたのです。

クロノグラフには、そのすぐあとには、分積算計まで搭載されるようになりました。

19世紀も終わりのころになると、さらに時間積算計まで加えられるようになったのです。

ジュラ渓谷地方出身の多くの天才時計師たちは、その特徴的なアイディアを駆使して、クロノグラフをどんどん先へ進化させていったのです。

そんなクロノグラフ開発に携わった時計師たちの中でも、特に大きな功績を残したことで知られているのが、ルイ・エリゼー・ピゲです。

ピゲの類まれな技術と、13型のムーブメントを使ってパテック・フィリップが1927年に製作したスプリット・セコンド・クロノグラフはあっという間に、世界中で販売されるようになったのです。

その間、わずか2年という短い期間でした。

クロノグラフの便利なその機能は、凄まじい勢いで評判になっていきました。

その機能性の高さは、スポーツ界や軍用としても人気が高く、引っ張りだこになっていくのです。

初期の頃のクロノグラフについていたのは、シングルボタンで、プッシュボタンだけが備わっていました。

それが、1920年代の終わり頃になると、ボタンが2つに増えるのです。

これまでのシングルボタンだけのクロノグラフは、時間計測を継続して測ることは可能でした。

しかし、一度クロノグラフの秒針を止めてしまうと、秒針が止まったその場所から、再スタートさせることはできなかったのです。

ボタンを一度押してしまうと、秒針のスタート、ストップしかできず、ストップしたあとはゼロの位置に戻ってしまっていたのです。

しかし、ボタンを2つ備えた新しいクロノグラフは計測の途中に、何度ボタンを押しても、時間を継続して計測することが可能となりました。

片方のボタンを押すと、針はその動きを止め、再び同じボタンを押すと、針はゼロの場所に戻ることなく、止まったその場所からの動きをスタートさせてくれるようになったのです。

そして、ゼロの場所にリセットさせたいときは、もう一方のボタンを押せばいいのです。

そんなクロノグラフの中でも、王様とまで言われるものがあります。

それが”スプリットセコンド”です。

別名”割ケン”とも呼ばれるものです。

このタイプのクロノグラフには、スプリットセコンドと呼ばれている秒針が2本ついているのです。

ボタンを押すことで、片方の秒針が止まり、そこまでの経過時間を表示していても、もう片方の針は止まることなく動き続けているのです。

そして、ボタンを再度押すと、それまで止まっていた秒針は動き出します。

止まらずに動き続けていた秒針のところまで、一気に進み、スタートするのです。

このような機能を搭載することで、クロノグラフは一度に異なる時間の計測をすることが可能となりました。

それは、リュウズを含めた3つのボタンが搭載され、2本の秒針があることにより可能となったのです。

このころのスプリットセコンド・クロノグラフで計測できていたのは、1/5秒まででした。

ダイヤル上のメモリが5等分されていたのです。

しかし、現在のクォーツモデルの中には、さらに精巧に出来ています。

1/100やそれ以上に小さい単位まで計測することが可能なものもあるのです。

このように、クロノグラフのこの精密さは、よりこまかな時間の管理を任されている現代の人間にとって必要不可欠なウォッチとなってきているのです。

クロノグラフというのは、一般的にスポーツ選手やパイロット、軍人、技術者が持つものとして知らせていました。

これは、たまたまそのような人たちが多く使っているというわけではなく、実際にそういう分野の人たちが多く使っているのです。

そもそも、最初にクロノグラフが作られたのは、第一次世界大戦のころでした。

1915年にブライトリングが開発した30分積算計と秒積算計を搭載したクロノグラフウォッチは、軍用として、大変な評価を得ることができたのです。

さらに、オメガのクロノメーターを試用したスポーツ競技の役員は、この時計がスポーとに役立つということを認めたことが、カナダの古い文献をめくると見つかるのです。

これらのクロノグラフにはすべて、15型もしくは17型のムーブメントを搭載していました。

大きくてとても堂々とした印象があったものです。

時計学の用語では1型(1”リーニュ”)は2.56mmと同じで、フランスのインチの1/12なのです。

これは、時計の大きさを表す単位で、時計のベースとなる”地板”(PLATE)の直径を表す数値なのです。

10型というのは、地板の直径がおよそ22.5mmのものになります。

クロノグラフは、どんどんそのサイズを小さくしていきました。

特に1940年代に製造された婦人用のクロノグラフは非常に小さいサイズとなっています。

クロノグラフを選ぶときに、気をつけなくてはいけないのは、やはりそのクロノグラフの持つ機能と、ダイヤルの見やすさなのではないでしょうか。

しかし、それよりももっと気をつけなくてはいけないのは、その品質です。

特にオークションなどのように古い時計を購入する際は、品質チェックを欠かすことはできません。

古い時計は価格も高いので、念入りにチェックするようにしましょう。

購入する前には、信頼することができる専門家のアドバイスをもらうことが大切です。

後悔しないためにも、それらの手間を惜しまないようにしましょう。

 

クロノグラフのムーブメントには、ストップウォッチの機能も搭載されています。

通常の時計のメカニズムと連動していますが、分離することも可能なのです。

このメカニズムは大変美しいものです。

色彩はとても豊かですし、各所に設置されているレバーもアクセントになっています。

モデルそれぞれに、違った顔を見せてくれるのも魅力の一つなのではないでしょうか。

そして、技術躍進に伴ってこのウォッチはデザイン面でも多様な変化を見せてくれるようになりました。

初期のクロノグラフと言えば、ダイヤルはエナメル。

スタート、ストップ、リセットという3つの機能をシングル・プッシュボタンで操作していました。

このシングルボタンというのは、3時か6時の位置に存在していたものです。

巻真とも同軸になっていました。

しかし、そののちにはこのボタンは、2時の場所に移動するのです。

そして2つのボタン式になると、1つは2時の場所に。もう1つは4時の場所に付けられるようになりました。

一般的には、中央の秒針を操作するときは、スタートと、ストップの作業は2時のところにあるボタンで、リセットは4時の場所にあるボタンで操作するのです。

変化したのは、ボタンだけではありません。

リュウズもボタンやケースと同じように時代の流れに従って変化を見せてきました。

リュウズとボタンというのは、そもそも埃や湿気などから貴重なメカニズムを保護するためのものでした。

これは、気候の変化が激しい土地などでは重要な意味を持つ、役割だったのです。

この役割は、1930年代に入ると、さらにさまざまな改良が加えられていきました。

 

名時計師たちは、現状に甘んじることなくその持ち前の豊かな想像力と、増加していく需要に対応するべく新しいタイプのモデルの製作に打ち込み、続々と多種多様なクロノグラフの開発をしていくのです。

その種類を紹介していきましょう。

まず、中央には分積算計だけ、もしくは分積算計と時積算計の両方を備えたもの。

カレンダー機能を備えているもの。

日付を日付窓に表示させたり、ダイヤルに刻まれたメモリを1から31とし、日付メモリを針で指すことにより、日付を表示させたりするダイヤル式のもの。

カレンダーとムーンフェイズを搭載したもの。

これら2つを搭載した見事なスプリットセコンド・クロノグラフなどもあります。

他にも、特別な機能を有したクロノグラフもあるのです。

それはタキメーター。

これは、物体の速度を計測するための機能です。

最近の代表として名前のあがるタキメーター搭載のクロノグラフは、ロンジンのフォーミュラー1ではないでしょうか。

次にテレメーター。

これは、雷鳴のような音、稲妻のような光はそれぞれ観測する人がいる場所によって、その到達する時間は異なります。

しかし、このテレメーターを使用することによって、稲妻が走り、雷鳴が聞こえるまでの時間差を測定し、観測者から雷が発生した場所までの距離を割り出すことが可能となるのです。

他の高機能としては、脈拍をカウントすることができる医療用のモデル。

エンジニアのための計算尺がついたモデル。

そして特定の事柄の時間を記録するための小さなメメント・ダイヤルを備えたモデルなどがあります。

このモデルには、ダイヤルに時間をセットするためのリュウズが別についています。

それを使うことで約束の時間やスケジュールの予定時間などを表示しておくことができるのです。

他にも、潮の満ち引きを表示することができるタイド・クロノグラフ。

方位計が搭載されたモデルなどもあります。

このようにクロノグラフには、長い歴史があり、多くの時計師たちが苦心した機能も多くあります。

そしてそんなクロノグラフの歴史の中で、もっとも偉大な発明ともいえるスプリットセコンド・クロノグラフの特許をはじめて取得したのは、スイス・フリューリエのBovet Freres社でした。