クロノグラフ 腕時計 自動巻きムーブメントの傑作4点をご紹介

腕時計の動力機構、つまり心臓部であるムーブメント。機械式腕時計のムーブメントは、19世紀末から長きにわたって進化を遂げてきました。このムーブメントの性能はそのまま時計の精度に直結するため、高度な技術を用いて作られています。

これまで各社によりしのぎを削って開発され、機械式クロノグラフの盛衰を支えてきたムーブメントの中でも、今回は、現在でも名高い自動巻きムーブメントの名機4点とその作り手についてご紹介したいと思います。

 

ゼニス400(エル・プリメロ)

 

1865年創業のスイスの時計メーカー、ゼニス社は、ムーブメントから文字盤、ケースなど、すべて自社一貫生産を行っている“マニュファクチュール”です。

1969年に発表した世界初の自動巻きクロノグラフ「エル・プリメロ」に搭載していたムーブメントは、Cal.(キャリバー)3019PHCでした。「エル・プリメロ(El Primero)」とは、英語でいうと”The First”、スペイン語で「第1の」を意味しています。その名の通り、世界で初めての自動巻きムーブメントとして知られています。

 

機械式時計の歴史を大きく変える自動巻きクロノグラフ・ムーブメントの登場でしたが、1970年代のクォーツショックにより、一時期は生産中止にまでおいこまれます。

1980年代に生産を再開した際には、ゼニス社はCal.400として改良し、よみがえらせたのでした。

 

このCal.400は、36000振動/時という、驚異的に振動数の多いハイビート設計のため、振動の少ない時計よりも高精度を維持することができます。この世界トップレベルのムーブメントは、ロレックスが自社ムーブメントを搭載するようになるまで、デイトナにも搭載されていました。

 

現在では、このCal.400をベースとして、Cal.405、Cal.410などを搭載したモデルが発表されています。

 

 

 

 

レマニア5100

 

1884年にスイスで創業し、エボーシュ(ムーブメント部品)メーカーとして出発したレマニア社は、ブレゲ・グループの一部門となった現在でも、高性能なムーブメントを製造するメーカーとして知られています。

 

自社ブランドの時計の生産よりも、エボーシュの生産に重点をおいていたレマニアは、やがて、オメガ・スピードマスターのムーブメントとして知られるCal.321やCal.861などの名ムーブメントを開発します。また、ミニッツリピーターやトゥールビヨンなどの複雑機構も手がけるようになります。

 

1992年にブレゲのムーブメント製造を担うことになり、ブレゲを高級時計製造を支えています。

 

その中で代表的なムーブメントといえば、現在は生産中止で入手困難な希少アイテムとなっているCal.5100です。ジンやチュチマ、フォルティスなど様々なメーカーに供給していたものです。

12時の位置に24時間表示のインダイヤルが付いています。

フォルティス社が、ロシアのユリ・ガガーリン宇宙訓練センターと提携して製作した宇宙飛行士用腕時計「コスモノート・クロノグラフ」には、当初このレマニアCal.5100が搭載されていました。24時間表示のインダイヤルは、宇宙空間でも昼夜の区別がつくということで、重宝されました。

 

 

フレデリック・ピゲ1185

 

1858年にムーブメント製造メーカーとして創業したフレデリック・ピゲは、最高級、高精度の機械式ムーブメントを供給するメーカーとしてその地位を確立しています。

 

今回ご紹介する、フレデリック・ピゲCal.1185は、1987年に発表された手巻きムーブメントCal.1180に自動巻きモジュールを追加したもので、厚さ5.40?、世界最薄のクロノグラフ・ムーブメントとして注目されました。

12時間計、30分計、スモールセカンドなどを搭載した、ハイエンドなムーブメントで、名前を変えて、オーデマ・ピゲやブランパン、ヴァシュロンといった最高級クロノグラフに搭載されています。

 

フレデリック・ピゲ社というと、最近ではブランパンと大きな関わりをもっています。

クォーツショックにより時計製造の中止に追い込まれていたブランパンでしたが、フレデリック・ピゲ社の協力のもと、再興に乗り出しました。そして、伝統的な複雑機構を復活させ、ミニッツリピーター、トゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、ムーンフェイズ、スプリットセコンド・クロノグラフ、ウルトラスリムといった6大機構を1種ずつ搭載した「シックス・マスター・ピース」コレクション、さらに、6種すべてをひとつに収めた「1735グランドコンプリケーション」を発表します。

こうしてブランパン社だけでなく、機械式時計を見事に復権させたこのできごとは、ブランパンのフレデリック・ピゲの協力なくしては存在しえなかったのでした。

 

そして2010年には、ブランパンがフレデリック・ピゲを統合。高い技術をもった2社の統合は、今後の活躍をますます期待させてくれます。

 

 

 

バルジュー7750(ETA)

 

ETA社は、スウォッチグループに属し、機械式、クォーツ式両方のムーブメントを製造しています。

 

ムーブメントを開発・製造するには大変な労力と時間がかかるため、時計メーカーの多くは、コストを抑えるためにも、完成(あるいは半完成)ムーブメントを仕入れ、自社の時計に組み込んでいます。そのようなニーズに応えているのが、ETA社の製造しているムーブメントというわけです。

 

ETA社は、もともと10数社のエボーシュメーカーが集まったエボーシュグループでした。大小さまざまな企業が製造していたムーブメントが、このエボーシュメーカーの統合で淘汰され、いいものだけが生き残りました。

 

今回ご紹介するバルジュー7750は、そんな、かつての名前を今でも残している傑作ムーブメントです。

現在ETA社の傘下に入っている、エボーシュ(ムーブメント部品)メーカーのバルジュー社が1970年代に開発したもので、現在でも生産され続けています。

12時間計と30分計を装備し、耐久性に優れ、大量生産が可能なつくりになっています。オメガやブライトリング、IWC、ポルシェやハミルトンなど、多くの有名メーカーにも採用されています。

 



いかがでしたか? 機械式クロノグラフを選ぶときは、その中に組み込まれているムーブメントにもこだわって選んでみてくださいね。