フランスのガラス工芸家 ルネラリック(Rene Lalique)のジュエリー

フランスのガラス工芸家 ルネラリックのジュエリー

 

 

ルネラリックのジュエリー


1800年代後半、ルネ・ラリックはこれ以上なく良い時期にジュエリー作成のシーンに飛び込みました。

彼のビジョン、想像力、創造力は、アールヌーボーの流れに足りないものを完璧に埋めるとともに、ジュエリーのデザインに現れてきました。

 

 

もはやジュエリーは単に豊かさの象徴として扱われるものではなくなるのです。

新しいデザインは創造性と想像力への扉を開き、身に着けた人たちは豊かさよりもその趣きや型にはまらない美しさに魅了されていきました。


新しいスタイルは一般の人々から熱烈に受け入れられました。

 

そして、19世紀の終わりまでには、ルネラリックは、アールヌーヴォー様式のジュエリーデザインの確固たる地位を確立しました。

 

ラリックにとって、ジュエリーの素材の価値は、作品の芸術性には及ばないものでした。

彼は、作品のデザインを芸術的に引き立たせる効果がある場合に、ただ金、銀、ダイヤモンドなど貴重な素材を使っていただけでした。

 

貴重な宝石類は、それによって宝石の金銭的な価値を高めるというよりも、全体的な彫刻の質、独創性、美しさにどのように影響するかという観点で評価されたのでした。

 

ジュエリーデザインの新しいコンセプトの出現により、新しい形、材料、技術が登場しました。


伝統的な素材は新しい素材と組み合わされ、革新的な視覚効果を生み出しました。

そして、ルネ・ラリックは、彼の同世代はもちろん現在に至るまで、すべてのデザイナーの中で最も革新的なデザイナーの一人として認識されたのです。

ルネラリックのジュエリー

ルネ・ラリックのジュエリーは、シンプルでも複雑でも、大胆でも繊細でも、官能的でも野暮ったくても、どちらでも構わないのです。

 

デザインの卓越した美しさ、品質、独創性に加えて、彼の作品を特徴づけるいくつかの要素があります。

彼の作品の多くは、デザインを取り巻く対称的なフレームから始まります。

 

彼のフレームは、幾何学的な形状、あるいは、白鳥や孔雀のような動物の鏡像のような形状をしています。
 

また、彼は、揺れる宝石・原石とモチーフを用いてベースのデザインを飾り付けることをよく行いました。


チェーンもまた、後付けではなく、デザインの不可欠な要素でした。

 

ラリックはペンダントのチェーンに、その他のデザインすべてと同じくらいこだわりました。


デザインに応じて、チェーンは、バー・バトン・四角・楕円・円を含む異なる形でつなぎ合わせることができます。
 

チェーンはエナメル加工することも、金属のみで構成することもできます。

 

 

ラリックの強みの1つは、彼のデザインのインスピレーションを受けた構成でした。


彼は使用する素材を、どのように互いを補い合い、デザインに活かせるかをベースに決めていました。
 

伝統的な貴金属や宝石を超えて、彼はどれだけ貴重かという同じものさしではなく、美しさと芸術性を実現することができるユニークな素材も使いました。

アメジスト、シトリン、ペリドット、ムーンストーン、オパールなどの天然石が彼の作品によく使われます。

 

彼は、特に輝く性質を持つムーンストーンとオパール、そして真珠類を好みました。

ラリックはまた、真珠、カメの甲羅、象牙のような自然物に秘められた芸術性を見出しました。

彼は実際にナチュラル・ホーンをアーティストの素材として導入し、ヘア・コームやその他の作品に幅広く使用しました。

 

ルネ・ラリックのコーム

 

ラリックという名前はアートガラスの領域でも知られており、ガラスはラリックのジュエリーデザインの多くで重要な役割を果たしました。
 

デザインに応じて、透き通った鉛ベースのガラスが使われたり、着色・曇り・エッチング・彫刻・成形などが施されたガラスも使用されたりしました。

 

彼は多くの場合、ガラスの装飾のために、 「ロストワックス」技術を用いました。

このプロセスでは、作りたい形がワックスから彫刻され、金型を作るために使われます。
 

ワックスを溶かして注ぎ出すと、熔融したガラスが型に注がれて、バラ、トンボ、女性の顔、またはその他のデザインが生成されます。
 

この方法では、金型ごとに1つのデザインしか作成できなかったため、作品は個別で唯一のものとなりました。

 

ラリックが大量生産技術を使い始めたのは1905年になってからであり、そのころには、ラリックはジュエリーよりも、室内装飾品に用いるガラスアートに注力していました。

 

 

新たなアーティストとしてのルネラリック

アールヌーヴォーの動きは、クラシック時代の、凝りすぎて抑圧されたスタイルへの反発でした。


ヌーヴォーのアーティストは、創造性、新しいテーマ、テクニック、そして素材を強調するように努めました。
 

1890年までに、ラリックはフランスの一流アールヌーヴォーの宝飾デザイナーとして広く認められました。
 

彼のジュエリー作品は美しさと創造性だけでなく、品質の面でも有名でした。

 

彼は自分自身の作品の多くを手ずから作成したわけではありませんでしたが、彼のデザインを形にする職人の厳格な監督として、様々な装飾技術の使用に関して職人を導く存在でした。

 

 

ルネ・ラリック コウモリのブローチ

 

 

ラリックのデザインはアールヌーヴォー運動の自然主義の精神を体現しています。
 

ラリックの目を通して、自然界のすべての動植物は美しさの可能性を秘めていました。

 

控えめで、不愉快に見えるバット(コウモリ)は、エナメルとムーンストーンの輪に組み込まれた

とき、蝶やトンボ、カエルのようにエレガントになります。


白鳥、孔雀、蘭、ユリは、ハットピン、チョーカー、ブローチなどのアイテムにおいても、同様に印象的でした。

ラリックのペンダントは、小型化されてチェーンから吊り下げられた絵や彫刻であったかもしれません。

 

ラリックのデザインの多くは、神話からそのままテーマを持ってきたものでした。

魅惑的な女性、 人間の一部・動物の一部であった半人半獣、ドラゴン、

人魚やニンフは彼の作品の多くに登場します。

女性の人物はアールヌーヴォーで広く使用され、ラリックは優雅で屈曲したデザイン

の多くで、女性の顔やヌードを取り入れました。

ラリックのつたと枝の使用は、アールヌーヴォーのムーブメントのシグネチャー

デザインであるSカーブを含め、時代に適したカーブとツイストを輪郭づけた

と言えます。

 

当時の芸術の多くは日本の影響を受けていました。

ラリックのデザインでは、日本のアートでとても重要だったトンボやその他のイメージ

がよく見られます。トンボの複雑な羽は、ステレングラスに似た効果を生み出すために、

メタルバッキングを焼成した半透明のエナメルから取り除く「省胎七宝」エナメル技術

に特に適しています。

彼はまた、他のエナメルスタイル - クロワソネ、シャンデベ、バステール - を使って

独特の効果を生み出していました。

例えば、いくつかのエナメル加工法を1つに組み合わせることによって、

3次元的な効果を演出していました。

ルネラリック カエルのブルーのブローチ

 

ルネラリックジュエリーのコレクション

本当のルネ・ラリック作品と、息子作品・孫作品を区別することは重要です。


彼の既存作品のほとんどが個人のコレクターまたは博物館のいずれかであるため、コレクターにとっては、本物のルネ・ラリックの作品は非常に見つけ出すのが難しいでしょう。

 

リスボンのGulbenkiam(グルベンキアン)博物館では、最大145点のコレクションがあります。


場合によっては、博物館は短期間のコレクションの小ロットを世界中の博物館に貸し出すこともあります。

 

ルネ・ラリックのジュエリーは、サザビーズやクリスティーズなどのオークションで実際に登場することがあります。


そしてそれは大イベントとなります。


大量生産されたことのないユニークなラリックジュエリーは、通常1000万円単位の数字で落札されます。
 

2009年のニューヨークで開催されたサザビーオークションでは、ダイヤモンド、パール、ガラス、エナメルで作られたラリックのバラのブローチが、約200万円~300万円という出品前見積もりの数倍の約1000万円で落札されました。

 

2010年11月、ジュネーブのクリスティーズのオークションで、さらに劇的な見積もり金額超えを果たしました。
 

1900年頃に作られた、真珠、茶色のガラス、白いエナメルを添えた金の40cmのネックレスが、約3700万円の驚異的な額で落札され、約900万円という高見積もり額の4倍以上の高値をつけました。

 

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