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ルネラリックの偽物と本物の見分け方
ルネ・ラリックの業績とガラス事業
ルネ・ラリック(1860年~1945年)は、過去の歴史上最大の成功を収めた芸術家・デザイナーのひとりです。
彼が手がけて実績を残した分野は、宝石デザイン、壁紙、繊維品や商品のパッケージと多岐にわたります。
中でも、最も名声を博したのが、ガラス工芸でした。
1905年頃からラリックは自身のガラス作品の商業生産に着手し、
1945年に死去するまでその制作活動を続けていました。
その後、ガラス事業は、息子のマルク(1977年没)、そして孫娘のマリー=クロード・ラリック(2003年没)へと受け継がれました。
この記事では、本物のラリック製ガラス作品・そのサインと、初期及び現在の模造品、贋作、コピー品、複製品との比較を行っています。
また、オリジナルと偽造のサインについての説明、典型的なデザインの特徴、作品のディテール、ガラスの成分についても併せて言及しています。
ルネラリックのサインの特徴と偽造偽物品の多さ
1945年のルネ・ラリック死没以前においては、そのイニシャルのRの文字がほぼすべてのサインに使われ、『R. Lalique, France』と表記されていました。
それが1945年より後の時代になると、イニシャルであるRの文字を取り去った『Lalique, France』というサインが用いられるようになりました。
このRの文字ただ一つの有無により、作品の価格がときに何100万円分も変わってきます。
そのため、ラリックのサインは、アメリカのカットグラス等と並び、偽造がとりわけ目立って多くなっています。
ラリックの偽造サインの種類は千差万別で、そのすべてをここで網羅することは出来ません。
以下に列挙したのは、本物のサインと、よく見られる偽造の典型例になります。
ラリックのサインと偽造の手法
偽造の可能性があるのは、サンドブラストや酸を用いたエッチング加工でなされたサインのみ、
と信じている人々も多いようですがそれは誤りです。
偽造サインには、鋳型を使用してそこに流し込む方法でつくられたものもありますし、その中には文字を隆起させたものも、文字を陰刻したものもいずれも存在します。
また別な方法としては、本物のサインを型どりし、そこにレジンを流し込んだものを鋳造した複製品に使用するというやり方もあります。
作品を購入する際は、サインの手法がどのようなものであれ、たとえ鋳型サインであっても偽造は可能であるということ、その手法によって製作年や本物の保証が得られるものではないことは頭に置いておかなければなりません。
もっとも、偽造サインに最もよく見られるのは、線刻とエッチングの手法です。
これらはコストがかからず安価で、高度な技術も必要としません。
サインの線刻には、先端にダイヤモンドを用いたペン、回転式グラインダー金属製ペン先が振動するタイプのペンといったものが用いられます。
エッチングによる偽造サインの多くは、ゴム製のスタンプと酸を使用して作られています。
より工夫を凝らしたものだと、ステンシルとサンドブラストの手法を用いてエッチングを施したサインも存在します。
ルネラリックのイニシャルRの法則
一般的な話としては、1945年以前のラリックのガラス作品の場合、サインの最初にRの文字が含まれているのが純正の商品のしるしと言えます。
ルネラリックは1945年に没し、それより後のサインでは、この最初のRが脱落しているからです。
(ルネラリックの作品と明確に区別するため、ラリック社がRを先頭に入れないようにしたため)
1945年以前のサインの多くは、それ以後はイニシャルのRを除いた形で用いられ続けました。
1945年より後に作られた本物のラリック製品の中には、サインにRの文字が付いた「強化版」もあることには注意しておきましょう。
それは当該作品が比較的早い時期に製作されたことを示し、大変な希少価値のあるものだからです。
ルネラリックの影響をまだ受けている作品ということですね。
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ルネラリックの作品のマークの文字列 R. Lalique France
1945年以降 ラリック社のマークの文字列 Lalique ®France
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Rのある場所が違うのが分かりますね。
先頭にRが来ている作品が、ルネラリックの作品であると覚えておけば良いでしょう。
Franceの表記は、1945年以前のサインだとあったりなかったりまちまちです。
しかし、1945年以降は、ほぼすべてのサインにFranceが入れられています。
ルネラリックのサインのフォント
一般的に、1945年以前の本物のラリックのサインは非常に小さく、文字の高さが1/8インチ(約3mm)を超えることはめったにありません。
フォントは非常にシンプルで、文字幅は一定、文字の最後に装飾が加えられていることもありません。
また、真作の場合、そのサインは下縁部といった目立たない場所にあるか、デザイン自体に組み込まれた形になっています。
これに対し、偽造サインは目立つような形で置かれています。
人目を引く部分に配置されていたりすることはよくありますし、高さが1/2インチ(約2.5cm)に及ぶ比較的大きなサイズであったりもします。
また、偽造サインの場合、頻繁に手の込んだ装飾的な字体が用いられています。
ルネラリックの典型的な偽造の表記
偽造サインの多くには、オリジナルでは決して使われなかった単語や表記が含まれています。
例えば、『Made in France』という表記がラリックの作品で用いられたことは、1945年以前以後を通じて一切ありません。
『France』と併せて『Paris』という単語が記載されたり、『Rene』という名前が綴られたり、といったこともオリジナルの作品ではあり得ないことです。
また、限定生産品の表示に『NO. XX/XXX』や『#XX of XXX』といった表記が用いられたこともありませんでした。(1945年以降のラリック社の作品には限定生産があります)
イニシャルRの法則の例外
一般的な法則には常に例外がいくつか存在するものですが、判明している点はすべて記載しています。
それに関連し、クリスタル・ラリックとして展開された新製品についても見直してみる必要があります。
例えば、フードクレストマーク(カーマスコット)の限定生産品は、過去の古い鋳型を元に作られています。
そのため型に刻まれたR.Laliqueのサインが作品にも付いています。
その作品の多くは1950年代に製作され、ペーパーウェイトとして販売されていたものです。
1970年代後半には、聖クリストファーのオーナメントがR.Laliqueの鋳型サイン付きで再生産されました。
しかし、これら1945年以降の作品については、次に述べるとおり、その使用されているガラスの違いによって判別が可能となっています。
ガラス成分の違い(ブラックライトを使用した判別法)
1945年以前は、ラリックのガラスにおける酸化鉛の含有率は12%程度、フランスでセミクリスタルガラスに分類されるものでした。
それが1945年以降、酸化鉛の含有率は2倍の24%に増え、フランス法令下においてフルクリスタルとしての認定基準を満たすものになりました。
この鉛含有量の増加によって、1945年以前のガラスと比べ、それより後の時代で用いられているガラスはより重厚かつ透明度を増しています。
肉眼でも確認は比較的容易ですが、長波長のブラックライトによるテストも可能です。
1945年以前のラリックの無色(透明)ガラス作品は、長波長のブラックライトを当てると黄色く光ります。
これが1945年より後のラリックのガラス製品の場合、青白色または青色に発光します。
ただし、ブラックライトのみを用いて真贋判定を行うことは避けなければなりません。
1920年代頃のラリック作品を当時の業者が模造した中にも、黄色い蛍光を発するラリックのサイン付きのものがあります。
もっとも、チェコ共和国製のフロステッドガラスといった現代の模造品や類似品のほとんどは、長波長のブラックライトを当てても何の反応も示さないか青白色や青色に光ります。
カッティング装飾の有無
1945年以前のラリックの真作には、カッティングによる装飾がほとんど見られません。
しかし、カッティングは東欧においてそのガラス製品に広く用いられており、そこでラリックの模造品も多数生産されています。
底周りと上部の縁に見られる広く大きなカット面(図11、17、19参照)は、たいていの場合、それがチェコ共和国、ルーマニア、トルコ、ユーゴスラヴィアといった東欧の製品であることを見分ける目安になります。
ルネラリックのサインについての小括
約100年に及ぶ歴史の中で、ルネラリック製のガラス作品の数は数万点にのぼります。
真贋を見分けるための以上の一般的な法則にも、常に細かな例外が存在する可能性はあるものです。
したがって、サインの手法だろうとブラックライトだろうと、ただ一つの基準に従って真贋や製作年を判定することは慎まなければなりません。
製作年の特定は、幅広い事実と根拠に基づいて行いましょう。
ルネラリックの真贋の見分け方 図による具体例
図1 偽物の香水瓶 |
図2 ラリック製香水瓶 |
図1~2
図1は、図2のラリックのオリジナル作品をコピーしたものです。
1920年代から、ラリックのデザインはコピー品や模造品が作られていました。
図1のボトルは1993年台湾製です。 サインは紙のラベルに記載されたものしかありません。
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図3 1990年代中ごろにチェコ共和国で製作されたヴィクトワールの模造品です。
フロステッド加工したガラス製、全長10インチ(約25cm)。
黒いガラス製の土台に固定されています。 サインの刻印はありません。
顔部分から髪の天辺にかけて、型の継ぎ目が垂直に走っているのがはっきりと分かります。
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図4 1920年~1930年代に制作されたラリックのヴィクトワール(勝利の女神)真作。
全長約10インチ(約25cm)。鋳出し文字で『R.LALIQUE FRANCE.』のサインが刻まれています。
型の継ぎ目はほとんど見えません。
ここに挙げた例はフロステッド加工のガラス製です。
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図5
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図6
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図7
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図8
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図5~8
ラリックオリジナルのロンシャンラジエーターオーナメント(カーマスコット)。
フランスのロンシャン競馬場にちなんでこのように呼ばれています。
オリジナル(図7)には、鋳出し文字による『R. LALIQUE FRANCE』のサインがあります。
コピー品(図5)は、チェコ共和国で何年にもわたり製作され続けているものです。
このチェコ製の偽物のサイズは5 x 6インチ(約13cm×15cm)。
フロステッド加工のガラス製で、黒いガラス製の土台に取り付けられ、サインの刻印はありません。
図6は、1930年代にマサチューセッツ州ウースター所在のパーソンズーマジェスティック社によって販売されていた当時の類似品です。
パッカード社製車両のラジエーターに取り付けられているものです。
図8では、チェコ製の偽物にはっきりと型の継ぎ目が残っているのが確認できます。
第二次世界大戦前におけるラリックのオリジナルには、このようなはっきりと目に見える継ぎ目は存在しません。
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花瓶の例
以下に掲載するフロステッド加工のガラス製花瓶の偽物は、たいていの場合ラリックの偽造のサインが付けられています。
サイン偽造の手法は、酸を用いたスタンプや線刻のほか、鋳型によることもあります。
多くの人々が、ラリックの鋳型サインは真作の証明と思い込んでいますが、それは違います。
鋳型サインの偽造の例は、この記事の後半で具体的にお見せします。
ここで示した花瓶のほとんどは現在でも製作されています。
その多くは、1920年代から生産が断続的に行われている作品です。
自然な摩耗のある1920年代の作品に、最近になって偽造サインが付け加えられているケースもありますので、注意が必要です。
現代の卸売用カタログに掲載されているチェコ製ガラスの例は、5頁目に掲載しています。
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図9 コンソリデーテッド・ガラス社製 |
図10 ラリック作 |
図9~10
ラリックによるアール・デコのデザインは、世界中でそのコピー品が作られています。
アメリカでは、コンソリデーテッド・ガラス・カンパニーが図9のラブバードをモチーフとした製品を販売していました。
これは、図10のラリックによるパラキート(Perruches)柄の作品とほとんど双子のように似通っています。
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図11 偽物の花瓶(約8インチ(約20cm)) |
図12 図11に示した花瓶のディテール |
図13 ラリックオリジナル作品バッカスの巫女 |
図11~13
図11の花瓶は、チェコ共和国製の偽物です。
上部と底部のカット面に注目してみてください。このような面は、チェコ製のガラスに典型的なものですが、ラリックの真作ではほとんど見られません。
図11の花瓶には、ここに挙げたフロステッド加工のガラス製のほか、様々な色付きのバージョンが存在します。
裸婦をモチーフにした偽物の多くは、図13のバッカスの巫女と題されたラリックオリジナル作品を大まかなベースとしています。
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図14 |
図15
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図16
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図14~16 さくらんぼをモチーフにした作品
図14は底部にR. Laliqueと偽造の鋳型サインが入れられた偽物。
他のフロステッド加工のガラス製品と同様に、ラリックの作品としてよく出回っています。近くで見ると非常に目立つ型の継ぎ目が確認できる偽物の花瓶です。
図15のとおり、この8インチサイズ(20cm)の偽物花瓶は、模様の彫りにそこそこの深さがあります。
しかし、図16のラリックのオリジナルははるかにリアリスティックで、より強烈な立体的効果を生み出しています。
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図17 偽物の花瓶(約5インチ(約13cm)) |
図18 偽物の花瓶(約8インチ(約20cm)) |
図19 偽物の花瓶(約7インチ(約18cm)) |
図17~19
図17の花瓶はよくあるものですが、ラリックの偽造サインに見られる複数の特徴を備えています。
作品の製作年は1990年中ごろですが、この鋳型を用いた作品の製作は、1920年代から現在までの期間中、断続的に行われています。
図17と図19における土台と縁のカット面に注目です。これはチェコ製品に典型的に見られる特徴であって、ラリックのものではありません。
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図20 偽物の花瓶(約10インチ(約25cm)) |
図21 偽物の花瓶(約8インチ(約20cm)) |
図22 偽物の花瓶(約8インチ(約20cm)) |
図20~22
これら三つの作品は、ラリックの偽造サイン付きでよく出回っている偽物です。図20~22の三作品すべてに、くっきりとした型の継ぎ目があります。
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図23 チェコのフロステッドガラス製品のカタログページ |
図24 チェコ共和国製の偽物の花瓶(8インチ(約20cm)) |
図25 チェコ共和国製の偽物の花瓶(6インチ(約15cm)) |
図26 1960年代の模造品 |
図27 1960年代の模造品 |
図28 ロザス模様のラリックオリジナル作品 |
図26~28
図26と図27は、1960年代から1970年代中ごろにかけて販売されていたラリックの類似品です。
図26は、アンティーク複製品カタログに掲載されている浅鉢で、淡いブルーのオパルセントで、フロステッド加工仕上げされた直径9 1/4インチ(約23cm)の作品です。
鋳出し文字による『Made in France』のサインがあります。これらの作品には、『G. Vallon』と併せて刻印されています。
小売価格は2.50ドル~7ドルで、クリアガラス製かオパルセントかによって価格が異なっています。
図28は、ラリックオリジナルのロザス(バラ窓)模様が施された12インチ(30cm)のプレートです。
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図29 偽物のシーリングライトシェード(直径約14インチ(約36cm)) |
図30 偽物のスコンス(約12インチ(約30cm)) |
図31 偽物のランプ(約17インチ(約43cm))。『Made in France』の陽刻鋳型サイン付き。 |
図29~31
いずれもフロステッド加工のガラスで製作された偽物の照明です。デザインは一般的なアール・デコ様式で、偽造サイン付き、または「サインなしの」ラリック作品としてよく売られているものです。
図31のランプは、陽刻鋳出し文字で『Made in France』と刻印されている点に注目してください。
作品の新旧にかかわらず、本物のラリック製で『Made in France』のサインがあるものは存在しません。
本物のサインの典型はシンプルに『France』とだけ書かれており、Made in Franceとは表記されていないのです。
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図32 別の業者が生産した年代物のガラス作品で、多くの場合ラリックの偽造サインが入っています。このたばこ入れと灰皿、鳥の像は、1920年代ころにチェコスロヴァキアで生産されたものです。いずれの作品にも、『R. LALIQUE FRANCE』と、酸でスタンプしたサインが付けられています。 |
香水瓶の類型と例
収集価値のあるラリックの香水瓶には、二種類の基本的なタイプがあります。
一つは、ラリックや別の小売店が直接販売を行っていた空ボトル。
もう一つが、コティのような香水メーカーやサックス・フィフス・アヴェニュー等の大規模小売店を対象に作られたカスタムデザインのボトルです。
たいていの1945年以前のカスタムボトルには、陽刻鋳型サインが入っています。
1945年より前に販売されていた空ボトルのサインには、一般的に陽刻鋳型のラリックのサインか、線刻サイン、あるいはその両方が付けられています。
1945年以前の空ボトルの多くには、「管理番号」(control numbers)が、線刻でストッパーと底部に入っています(ただし、常にというわけではありません)。
ラリック製の香水瓶の贋作は、長年にわたり製作が続けられています。
著述家のニコラス・ドーズは、その作品「ラリックのガラス」(Lalique Glass)の中で、小説家ミゲル・ザマコイスによる一節を引用しています。
そこでは、コピー品の氾濫する有様が、『目に余る偽造、そして皮肉にも即座に作られる模造品』とラリック作品と関連して描写されています。
新旧問わず、コピー品の多くには偽造サインが入っています。1920年以来、数多くのラリックの香水瓶が、コンスタントに製作され続けています。
比較的近年になって作られた本物のラリックのボトルには、工場のサインにRの文字が付け加えられたものがあります。
これは、その作品が戦後ではなく第二次世界大戦前に生産されたことを示す目印になるものですから注意が必要です。
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図33 台湾製の偽物ボトル |
図34 型の継ぎ目 |
図35 ラリックによるDeux Fleurs(二輪の花) |
図36
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図37
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図36は、日本で製作された偽物の香水瓶で、スズランの花のストッパーが付いています。ラリックの偽造サインが通常入った状態です。
図37が、本物のラリックによるスズランの香水瓶(Clairfontaine)です。本物のボトルは、1920年代から生産が続けられています。
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1945年以前のサイン(本物)
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1945年以前の鋳型サイン
本物の鋳型サインでは、書式が文字のひげ飾り(セリフ)のないサンセリフで、活字体が使用されています。
Franceの表記はあるときもないときもあります。
本物の鋳型サインは、主としてプレス成型のガラス作品に入っています。
プレス成型のガラス作品に付された鋳型サインのほとんどは、表面上に文字が盛り上がった陽刻のものです。
上図はサインを文字に書き起こしたもの、下は現物の写真です。活字体が使われていることに注目です。
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1945年以前の鋳型サイン
サインの中には、鋳造が逆向きにされたものもあります。
この例では、ガラスの陽刻鋳出し文字がプレートの底部に付されています。
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1945年以前の鋳型サイン
Qの文字にしっぽが二つ付いた、典型的な鋳型サインです。
1945年以前の鋳型サインの中には、Qの文字のしっぽが二つついたものも存在します。
この二つのしっぽ付きQが用いられたサインも、他の鋳型サインと同様に陽刻鋳出し文字でなされています。
Franceの表記はあるときもないときもあります。
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1945年以前の鋳型サイン
これは、1945年以前の本物サインにはRの文字が含まれる、という一般的な法則が当てはまらない例のひとつです。
この本物の鋳型サインには、『長いL』と呼ばれるLの文字が使われており、この場合はRの文字が併せて用いられることはありません。
通常の活字体の鋳型サインと比較すると、このサインの使用頻度ははるかに低いです。香水瓶やその他のドレッサー用化粧用品で主に使われているサインです。
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1945年以前の線刻サイン
1945年以前、線刻のサインは、多くの場合プレス成形による作品ではなく、型吹き成形で作られた作品を対象に使われていました。
本物の線刻サインには相当多数のヴァリエーションがあります。けれども、そのほとんどには上の例のような共通の外見的な特徴が見られます。
番号(注文/カタログ/デザイン/製造)は、本物のサインに付けられている場合もありますし、ない場合もあります。
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1945年以前のグラインダー(ホイール)を用いたサイン
1945年以前のホイールを用いたカットの手法によるサインは、小さな研削用ホイールのエッジを使用して加工が行われていました。
研削用ホイールによる文字は、この典型例に見られるとおり、短い直線で構成されているのが特徴です。ホイールカットのサインで最も古いのは、1930年代のものです。
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1945年以前のエッチングによるサイン
R. Lalique Franceの本物のエッチングによるサインです。ステンシルを使用したサンドブラストの手法がとられています。
本物のサインは、ステンシルのつなぎ部分の影響で、文字に隙間が残っているのが特徴です。この手法による本物のサインには、フロステッド加工がなされています。
常に必ず、というわけではありませんが、1945年以前のエッチングのサインには、たいていFranceという単語が含まれています。
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1945年以降のサイン(本物)
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1945年以降の線刻サイン
ルネ・ラリックのReneを表すRの文字は、1945年より後の本物の線刻サインには含まれていません。
1980年以降は、Rの文字を円で囲んだ®の商標もラリックはサインとして使用しています。
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1945年以降の酸エッチングによるサイン
酸でのエッチングによるサインは、文字のすべてが大文字で構成されています。文字間に空白はなく、かなり縁の鋭い書体で、はっきりと刻まれています。
なお、1945年以前に、サインに酸エッチングの方法がとられることはめったにありませんでした。
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偽造サインの表記の特徴
数多くの偽造サインで使われている特有の単語やフレーズ、というものがあります。
これは、1945年の以前以後を問わず、本物のラリックのサインではほとんど全くといっていいほど見られないものです。
次に挙げる単語やフレーズは、目の前の作品が偽造・偽物のサインであることを示す目印になります。
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Paris France
香水瓶にはParisの表記があるものもないわけではありませんが、通常の製品ではそのようなことはありません。
一般的な法則として、Paris, Franceの表記を含むサインを見たら、贋作の可能性を疑いましょう。
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Rene Lalique
1945年以前の作品に通常付けられたサインは、一般的にイニシャルのRのみを含んだものです。Reneと綴られていることは通常ありません。
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Made in France
1945年以前に用いられた本物のラリックのサイン、及び1945年以降の本物サインの大多数は、Franceのみの表記を使用しています。
一般的な法則として、Made in Franceと表記されたサインはまず本物ではありません。
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偽造サインのフォントの特徴
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偽造サインの多くは、1/4インチ(約2.5cm)以上の大きさです。
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本物のサインは、文字の高さが1/4インチ(約2.5cm)を超えることはほとんどありません。
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R. Lalique表記のガラスに付された偽造の陽刻鋳型サイン。文字周りの表面をカットしてつくられています。文字の高さはおよそ1/2インチ(約1.3cm)に及んでいます。 |
ガラス製の花瓶の足部分に付された『R.LALIQUE』の偽造陽刻サイン。文字の高さはおよそ1/2インチ(約1.3cm)に及んでいます。 |
さまざまな偽造サインの例
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酸エッチングによる偽造サイン。 『R. Lalique FRANCE』と表記されています。
1945年以前に酸エッチングの手法を用いた本物のラリックのサインはありません。
1945年以降の本物の酸によるエッチングのサインは、すべて大文字サンセリフの書体によっています。
また、筆記体や、小文字がミックスされたサインはありません。
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典型的な酸エッチングの手法を用いた偽造サインです。
『R. LALIQUE FRANCE』と表記されています。
文字の形が崩れており、Lの文字の下部が隣のAの文字の下部とくっついてしまっています。多くの文字が輪郭のみの状態です。
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線刻による偽造サイン。
『Rene Lalique France Reg #478』と表記されています。
本物のサインでReneと書かれたものは非常にまれです。
1945年以前の本物のサインの大多数は、ReneをイニシャルのRに省略した形で表記しています。
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陰刻(表面から沈んだ形)の偽造サイン。
通常見ないようなセリフ付きの書体です。
輪郭だけがはっきりしており、中はほとんど空の状態です。文字列は奇妙に歪んでいます。
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