ロブマイヤー・クリスタルの歴史

ロブマイヤーの創設

ガラスの職人の子孫であるジョセフ・ロブマイヤーは、1823年にウィーン市の中心部に最初の小さなガラス店を開きました。


彼は典型的なビーダーマイヤースタイルの製品を販売し、すぐに成功をおさめました。

そこで1824年に、ケルントナー通りに新しく大きな店をオープンしました。

彼は、グラスのセットや特別なオブジェから大胆なカットをほどこした花瓶やボウルなどにいたるまで製品のラインアップを広げ、さらに燭台やキャンドル用のクリスタルランプも販売しました。

すでに1835年には、最初のクリスタルのセットが王宮に届けられ、その後まもなくロブマイヤーはハプスブルク家御用達のガラス職人として任命されました。

1883年には、最初の電気式シャンデリアをウィーンの皇居に届けています。

 

ロブマイヤーの発展

ルードヴィヒ・ロブマイヤーの「リキュールセット」1856年

ルードヴィヒ・ロブマイヤーの「リキュールセット」1856年

 

1855年に会社の創設者であるジョセフ・ロブマイヤーが亡くなった後、彼の2人の息子であるジョセフ・ジュニア、そしてルートヴィヒが跡を引き継ぎました。


ジョセフは主に、繊細なカットと美しいエナメル塗装をほどこしたガラス製品で輸出ビジネスを強化しました。

ヨーロッパ以外には、アメリカ合衆国と近東諸国が主な市場で、美しく塗装されたモスクランプがエジプト副王領に届けられました。

このころ、建築家のヨーゼフ・シュモランツ・ロブマイヤーと共同で、「アラビア」、「ペルシャ」、「トルコ」スタイルの精巧な形のエナメル塗装ガラスなど、数多くのオリエンタルシリーズが開発されました。

ルードヴィヒ・ロブマイヤーは、この時代の最高のアーティストの何人かと共同で製品のデザインを担当しました。

彼自身、素晴らしいデザイン能力を持っていたため、ロブマイヤーは「ガラス界のリーダー」としての立場を固めました。

 

世界への進出

ロブマイヤーのグラス

19世紀の後半、ウィーンは商業、芸術、工芸の分野で活況を呈していました。


当時非常に有名な芸術家だったテオ・フィルハンセン(国会議事堂、ムジークフェラインを建設)などと協力して、ロブマイヤーは2つのグラスのセットと燭台をデザインしました。

この段階で、ロブマイヤーは世界博覧会にも参加し始めます。

最初は1862年に開催されたロンドン博覧会でした。

その後、1867年と1900年のパリ博覧会、1873年のウィーン博覧会、1878年のフィラデルフィアと続きます。

アムステルダム、ブリュッセル、シカゴで開催された博覧会でば、ロブマイヤーが展示したグラスと照明製品が最優秀賞を獲得しました。

1881年、ロブマイヤーの美しいシャンデリアがルートヴィヒ2世が建てたバイエルン州のヘレンキームゼー城の大きな「鏡の間」に設置されました。


ルードヴィヒ・ロブマイヤーは、1883年のウィーン電気展示会で最初の電化シャンデリアを発表しました。


同じ年に、ウィーンの宮廷(Redoutensaal)の大きなボールルームに電化シャンデリアを設置し、その後すぐに世界的に有名なホテルザッハーからも依頼を受けました。

 

ステファン・ラスの時代

ロブマイヤーのアートリキュールグラス

19世紀から20世紀に変わるころ、ルートヴィヒ・ロブマイヤーの最年少の甥であるステファン・ラスが会社を引き継ぎました。

彼は20世紀始め、建築家ヨーゼフ・ホフマンとデザイナーコロマン・モーザーによって設立された「ウィーン工房」の最高の芸術家とともに、新しいデザインを考案することに成功しました。

最も著名なのは建築家ヨーゼフ・ホフマンとの共同作品で、1914年のケルン工芸展で高く評価されました。

陶芸家のマイケル・ポウォルニー、ヴァリー・ヴィーゼルティエ、建築家のオズワルド・ハードル、アドルフ・ロースなどの他の著名な芸術家とともに、ロブマイヤーは、ニューヨークのメトロポリタン美術館、ロンドンのビクトリア&アルバート美術館、ウィーン、パリ、アムステルダム、ストックホルムなどの工芸博物館にガラス製品を提供しました。

この革新的なガラス作品のコレクションは、1925年にパリで開催された世界博覧会で展示され、ロブマイヤーはグランプリを受賞しました。

 

第二次世界大戦時代のロブマイヤー

1938年にハンス・ハラルド・ラスが会社を引き継いだのち、第二次世界大戦中もロブマイヤーは経営を維持し、クリスタルのシャンデリアを提供し続けました。

戦後、ハンス・ハラルド・ラスは、ボヘミアからオーストリアに移住してきたガラス職人たちとザルツブルクとクーフシュタインにガラス工場を共同設立しました。


彼は現代的なクリスタル製の照明に最も関心を寄せていました。

ハラルドの最高の作品のいくつかは、クウェート、シンガポール、エチオピア、マレーシアの宮殿に設置されました。

また魅力的なクリスタルのシャンデリアが、ウィーン、ザルツブルク、ルクセンブルグの劇場やオペラハウスに届けられました。

 

メトロポリタン歌劇場のシャンデリア

メトロポリタン歌劇場のシャンデリア

ハロルドの作品の中でも絶対的な存在を誇るのは、ニューヨークのニューメトロポリタン歌劇場のクリスタルのシャンデリアです。

「Exploding Stars(爆発する星)」と名付けられたこのシャンデリアは、1966年に新しいニューヨークのメトロポリタン歌劇場に贈られました。


これは、ナチス体制から救出してもらったことへの感謝の気持ちから、オーストリアからアメリカに寄贈されました。

 

 

ロブマイヤーの現在

ロブマイヤーは200年近くにわたり、ヨーゼフ・ホフマン、オズワルド・ハードル、アドルフ・ロース、マイケル・パウルニー、オットー・プルッチャーなど、当時の主要なアーティスト、建築家、デザイナーと共同制作してきました。


ロブマイヤー家の一人は、デザインの魅力に取りつかれ、1864年にウィーンにオーストリア応用美術館(MAK)を共同設立したほどです。

ハラルドの死後は、息子のピーターとステファンが会社を引き継ぎました。

現在、ロブマイヤーが販売するシャンデリアの90%は、ピーターマリノ、ケリーホッペン、ヘインズロバーツ、エリオットバーンズなどのデザイナーからのカスタムオーダーです。

同社のシャンデリアは、国連、クレムリン、ワシントンのケネディセンター、パリのヒルトンホテル、ハンブルクのフォーシーズンズホテルなどで見ることができます。