ロレックスデイトナ by Pucci Papaleo
ロレックスデイトナ by Pucci Papaleo
ロレックス社のコスモグラフデイトナモデルは、3つの違うシステムを経て今現在まで続いてきました。
バルージュ社のキャリバー72(その後のバージョンで72Bまたは722、722-1、それから727と呼ばれるようになる)、ロレックスムーブメント4030(ゼニス社のエルプリメロがベースになっている)、さらにロレックス独自開発ムーブメント4130、これらがその3つの違うシステムです。これらの3システムで、60年代から今日までのメカニカルクロノグラフの開発を説明することができるでしょう。
では、まず信頼の高いバルージュ社の手巻クロノグラフから見てみましょう。
コラムホイールと垂直クラッチ(カップリングヨーク)が装備されており、60年代初期に生産された腕時計の部品では、最も論理的なものでしょう。
1969年、スイスの時計産業が機械式時計の開発に踏み込みました。
その競争は、世界で初めて振動数毎時36000回という高振動設計の自動巻きクロノグラフ(エル・プリメロ)を発表したゼニス社が勝利しました。
1988年(ゼニス社がクォーツショックにより、しばらく製造を中止していたのちに、ようやく本格的にキャリバーの生産を再開した時)、ロレックスの時計は、エル・プリメロのメカニズムを、新しいコスモグラフデイトナに利用していました。しかし、このムーブメントは大きく修正されており、名前も4030と呼ばれました(当初は、ロレックス社は、基になったゼニス社との話さえ拒んだ)。
キャリバー4030は、コラムホイールと垂直クラッチが搭載されていたこともそうですが、それよりも新奇なものは自動巻きシステム、パーペチュアル機能でした。
現代的製品のキャリバー4130が発表された2000年の飛躍的進歩があった年まで、エル・プリメロ自動巻きムーブメントが12年間デイトナモデルの動力となっていました。
クロノグラフの新たな時代が作り上げられました。
完全にロレックス独自開発による、垂直クラッチi465ブラックを装備したこの機能は、工業化システムの開発を最大限にしたデザインで、時計のマニュアルの動作を簡単にしたものだと言われました。紛れもなく、それが新しいメカニカルクロノグラフ時代の始まりとなりました。
Cal.72Aの世代交代、バルジュー社製Cal.72B
1996年から、バルジュー社製Cal.72Bの機能は72Aのムーブメントとは完全に違ったものになりました。このムーブメントは、マイクロステラ可変慣性バランスホイールの点が、前バージョンとは異なり、バランスホイールの外周に着けられたねじにより、72Aのムーブメントには装備されていたレギュレーターなしでも、規則性に重点を置くことで、慣性調整が可能となりました。
それまでの平ヒゲゼンマイは、伸縮(ヒゲゼンマイの"呼吸")の間中ずっと等時性を保つブレゲヒゲゼンマイに変更されました。
写真に表示されている2つのねじは、可変慣性システムの仲間の一つです。
マイクロステラスクリューが左側にあり(どのペアもバランスホイールからは一番離れたところにあります)、一番分厚いコントロールスクリューが反対の右側あり、他のものはそれに合わせて固定されています。
キャリバー72bは別名722とも呼ばれます。13ラインデザイン(直径30mm)は、毎時18,000振動を保ちます。クロノグラフはカップリングヨークを装備したコラムホイールが肝心です。
クローバーの形をしたバネがついたキフショックアブソーバーが、コントロールスクリューバランスホイールなどを衝撃から守ってくれます。
装飾の種類も違い、ここで取り上げているキャリバーは、鏡面仕上げのスクリューと、ペルラージュ仕上げのブリッジになっています。その他、この型の特徴と言えば、スクリュー式のレバーです。この構造はその後、プッシュ式レバーに切り替えられます。
キャリバー、バルジュー社製722
72Bとバルジュー社製722では、機能的には大きな違いが見られないと思います。
しかしながら、時を経て、メインテナンスをしていた結果、当初とは少し異なる部分が発見されることとなりました。
クロノグラフのパーツを見ると、標準の機能は、ドライビングホイール(写真左側)がセッティングホイール(写真中央)が一緒に搭載されています。
秒針のためになくてはならないドライビングホイールは、常に動き続けており、セッティングホイールと連動してカップリングヨークの周りを回転しています。
スタートボタンでクロノグラフを起動させると、ヨークがセッティングホイールを動かし、それがクロノグラフセンターホイール(写真右側)と連動し、ドライビングホイール(写真左側)に動力が伝わり、その動力がセンターホイールにも伝わります。それからクロノグラフ針が操作し始めます。
ボタンを押したあと、急なセッティングホイールとクロノグラフセンターホイールとのかみ合いにより、秒針をほんの少しだけ前または後ろに動くこともあるでしょう。
"Swiss Made Fabr. Suisse"と記入されているのにも注目してください。
我々が「スタイリスティック」だと表現する要素、ダイヤル面のプレートに記されている"Rolex Genève" の位置により722の機能とアップデート版722-1とが区別されます。(詳細はこの後出てくる写真を拡大したものを確認してください。)
上でも述べたように、722と72Bでは、機能では大きな違いがありません。ロレックス社はその2つに違いをつけず使用し、キャリバーについての産業技術資料の中でさえもそうでした。
今日残されている資料にはどこにも見つけることができませんが、キャリバーの小さな質の向上は、スイス時計産業によって繰り返し行われていました。
実際に、全てを守る耐震バネの代わりに、全く同じサイズで同じ機能のものですが、もっと現代的なものが考えられていました。これらの技術的な向上は、時に、ロレックスの新しい商品にもつながっていました。
キャリバー、バルジュー社製722-1
1967年、バルジュー社の製品をベースにした722-1を搭載したデイトナが作られました。
その時代のたくさんの時計がヒゲゼンマイを守るガードスプリングが搭載されていました。このスプリングは、金属帯が含まれ(写真参照)、ヒゲゼンマイが衝撃によりスライドしてしまうのを防ぎます。この修正は722でも紹介されましたが、必ず決まって全ての機能が使用されるとは限りません。その機能の良さがありながら、経済面での問題があるため、今日の時計には、特定のセーフガーディングスプリングは搭載されていません。
722-1の質はロレックス社により、大きさ(直径30mm、厚6.95mm)も振動数(毎時18,000振動)も全く同一のバルジュー社製72Aで見せられました。
キャリバー722-1が作られ、改良された点は、12時間計を稼働するパーツではないでしょうか。
この構成(上の写真)は、クロノグラフアワーホイール(ダイヤルの6時位置にある)がバレルに繋がり、クロノグラフの作動に直接関係している部分です。
新しく登場したコンベアは、偏心ネジを中心に回転し、翼の形のスプリングで知られるクロノグラフアワーホイール(写真左側)にはなくてはならないもので、キャリバー722のシンプルな機能に代わるものです。
コンベアを回転させる偏心ネジ(写真右下)の完璧に調整された位置で、12時間計ホイールとのかみ合いもさらに良くなっています。
プレート上に刻印された"Rolex Genève" の位置の違いにも注目してみてください。