時計マニアの心をくすぐる名機、エクセルシオパーク
これまでスイスの名機たちを紹介してきました。
パテック・フィリップ
ユニバーサル・ジュネーブ
数多く存在するスイスが誇る時計メーカーの中でも「エクセルシオパーク」に反応する人はおそらく、大の時計愛好家かもしれません。
時計メーカーが数多くあるアルプスの山間の町、サン・イメールのなかでもエクセルシオパークはかなりニッチなメーカーです。
なぜなら、現在もうその会社は存在しないから。
幻のクロノグラフメーカーだからこそ今なお、エクセルシオパークのムーブメントを搭載した時計を探し求めるファンが後をたちません。
歴史の中に消えてしまったこの会社について今回は見ていきましょう。
エクセルシオパークはスイスで創業したクロノグラフ専門の時計メーカーです。
その歴史が始まったのは1866年。
時計製造を生業にしていた創業一家の会社として始まりました。
時計製造一家、ジャンヌレの名前はスイス、サン・イメールの時計メーカー4社に深くかかわりを持ちます。
モエリス(Moeris)
レオニダス(Léonidas)
ジュールフレッド(Jules-Fred)
エクセルシオパーク(Excelsior Park)
その中でもエクセルシオパークはストップウォッチとクロノグラフを専門にしていた会社としてマニアの間では人気のメーカーとなっています。
エクセルシオパークの起源は若干ややこしいです。
というのも大変似た名前の会社が同時期にサン・イメールに存在していたからです。「ジャンヌレ」と「ジャンヌレ&フレール」という名前の2社は創業日、そして専門分野のクロノグラフも一緒だったので資料を読んでいて混乱してしまいがちです。のちにエクセルシオパークとジュールフレッドとなるこの2社は創業して間もなく、それぞれの道を歩みました。
上の広告記事はジャンヌレ、つまりのちのジュールフレッドのもの。
上の広告記事はジャンヌレ&フレール、つまりエクセルシオパークの広告記事。
1894年にジャンヌレ&フレールという社名でこれまでの時計とは少し趣向の異なる、スポーティーな時計の開発に乗り出しました。特許を取得したこの時計は「エクセルシオール」と呼ばれました。この時計のムーブメントにはアルファベットの「J」のようか形をしたブリッジがあり、これはのちのエクセルシオパークのトレードマークとなりました。
1902年、社名はジャンヌレ=ブレームになり、最初のモデルとなる13類のクロノグラフを発表しました。1918年にはエクセルシオパークが正式にブランド名となりました。この頃メーカーをディレクションしていたのはレースでの時間測定の専門家でした。これを機にスポーツにおいて正確な時間を刻むことのできる時計を様々なところに提供するようになりました。
1922年には32種類のストップウォッチを作りました。このストップウォッチはフットボールやラグビー、ホッケー、水球、ボクシングなど様々な場面で活躍しました。同年5月24日にはムーブメントの一部分の機構で特許を取得しました。このパーツは画期的でエクセルシオパークの代名詞的なものになりました。
会社に大きなターニングポイントとなったのは1938年でした。この年に腕時計用のクロノグラフに本格的に乗り出したのでした。その後40年間作り続けられたムーブメントは見た目も美しく、そして機能は抜群でした。このムーブメントは通称12/13、もしくはキャリバー42と呼ばれています。小さくエレガントなクロノグラフはシンプルさを追求した用のデザインでした。
1970年代に起こったクオーツ危機では多くの名門時計製造会社同様、エクセルシオパークも大打撃を受ました。経営難に陥ってしまったエクセルシオパークはその後、残りの株をギャレットが購入。そして名門時計メーカーの名前はそのドイツの会社の手にわたりましたが、再び表舞台に復活することなく、1984年に幕を下ろしました。
残念ながら今はもう存在しないメーカーとなってしまったエクセルシオパーク。
しかしムーブメントを様々なメーカーに提供していたので、手に入れることはまだ可能です。
1918年から1983年にかけてギャレット、ジラール・ペルゴ、ゼニスに自社のムーブメントを供給していました。現在の時計コレクターの間でも、ギャレットの時計でもエクセルシオパークのムーブメントを搭載したものは人気が高いと言われています。
さて。ここで少し小話を。
エクセルシオパークのムーブメントを搭載していた時計メーカーの中でもコレクター人気を誇っているのがギャレットです。
ギャレットは知る人ぞ知る時計メーカーであり、コレクターにはマニアック向けの名機とも言われています。
1862年にジュリアン・ギャレットが時計製造業が盛んだったラ・ショード・フォンに作った会社がギャレットです。この会社の名前が名声を得たキッカケとなっ
たのが他のメーカーよりも早くアメリカに進出したタイミングでした。
「ギャレットと言えばクロノ」と明言する人がいるくらいクロノのイメージが強いメーカーです。1910年代からはプッシュ・クロノグラフを開発しています。このクロノグラフはリューズと同じ軸の上にプッシュボタンを付けた画期的なものでした。この機構の開発に積極的に取り組んだメーカーとして有名なのはブライトリングです。
ギャレットのクロノグラフを支えたのはその供給元のひとつであるエクセルシオパークでした。特に小判型のエクセルシオパークのキャリバー42を搭載している40年代のものは現在でも人気が非常に高く、入手困難と言われています。
(画像はエクセルシオパークのキャリバー40を搭載したギャレットのムーブメント。1960年代のもの)
幻の名機に魅了されたコレクターは世界中にいます。
ぜひ気になる方は、エクセルシオパーク探しの冒険に出てみてください。