機械式時計・手巻き時計 ~奇跡の復活・天上へと続くゼニス150年の歩み~

■創業

ゼニスはジョルジュ・ファーブル=ジャコが1865年、

スイスはジュラ山脈に位置する、ル・ロックルにて創業しました。
現在はLVMHグループの傘下のひとつとなっており、同じ時計ブランドですと、

ウブロやタグ・ホイヤーなどが同傘下になっています。

ゼニスの時計は多くが、表の盤面から中の機械のムーブメントを眺めることができる
オープンフェイスには、視覚的楽しさがつまった時計になっています。

機械式時計を初めて買う人などには、その機械式時計の計算された
機械の動きを見るだけでも、心躍るのではないでしょうか。

時計好きの方ならご存知かと思いますが、ル・ロックルという地は17世紀より時計産業が盛んな地でした。
それはダニエル・ジャン=リシャールという人が、ロンドンから初めて時計を
持ち込まれたときに修理を担当し、その後時計の解析も含め、このル・ロックル地方に
根付いて、後進を育成したことから始まっています。

17世紀、スイスの時計職人はまだ、一つ屋根の下に職人が集まり時計を作る文化はなく、
個人個人が工房を開いて、時計を作っていた時代です。
相互に交流をすることもないため、大量生産もされていませんでした。

そこでジョルジュ・ファーブル=ジャコは時計製造に関するすべての専門技術を一つ屋根の下に
結集をすることを思いつきます。

彼のアイデアは当時斬新であったため、職人たちを集めるのは苦労したはずです。
しかし彼の熱意に賛同した時計職人が次々に集まってきて、とうとうゼニスは生まれます。
そして同時に1865年時計史上初の、時計の製造を一貫する集団「マニュファクチュール」が誕生したのです。
創業時は「Manufacture de montres」という社名でした。
余談になりますが、ゼニスに続くように、1868年フロレンタイン・アリオン・ジョーンズも
シャフハウゼンにマニュファクチュールを形成し、

IWC社を発足したわけですから、このマニュファクチュールという概念を
生み出したジョルジュ・ファーブル=ジャコは時計史の中で外せない重要な人物にもなります。

さて、そんなあらゆるノウハウが結集しているマニュファクチュールにおいて、
次々と新しい製作工程、機械が生み出されていきました。そして1899年最初の
クロノグラフが発表され、その1年後の1900年、パリ万博で金賞を受賞しました。

1911年、ここで初めて社名に「ゼニス」という名がつけられました。
「ゼニス(Zenith)」という言葉には天空の最も高い頂点を意味があり、最高の時計を目指す
このブランドのコンセプトになっており、星のマークは天頂を意味しています。

創業から1960年代まで数々の賞を受賞し、特にクロノメーターコンクールにおいては、
2333もの受賞記録が残っているほどです。
また、創業100周年を超えた1969年、エスペラント語でナンバー1を意味する
「エル・プリメロ」は史上初の自動巻き一体型クロノグラフとして世に発表され、時計史に名を残すことになりました。

■クオーツショックと英雄シャルル・ベルモ

エル・プリメロなどをはじめとし、1960年代まで名を馳せたゼニス社は、
伝説的名作エル・プリメロを開発した1969年のわずか1年後の1970年から1980年代半ばに至るまで、
非常に苦しい状況に追い込まれました。日本のセイコー社が開発したクオーツによる、クオーツショックが原因でした。

そして1975年、それまでの4年間ゼニスのオーナーであったアメリカ企業
「ゼニス・ラジオ・コーポレーション」によって、機械式時計の製造中止を命じられます。

機械式時計の制作は時間を要し、コストも莫大にかかるのに対して、クオーツは大量生産が可能で、
かつ時間の精度は機械式時計のそれとは比べ物にならないほど正確であり、安価というところが最大の特徴でした。

ですから機械式時計の製造は非効率的かつ、莫大なコストのかかる時代遅れの産物とまでされてしまいます。
当時それほどまでに、クオーツの誕生は時計業界を震撼させました。
一度は抗議した技術者たちも、権力に逆らいきることはできず、
結局ゼニス社は機械式時計の製造を中止し、クオーツ化の道へとたどります。

そんな中、1人だけひそかに決定に対し、逆らっていた人間がいました。
それがシャルル・ベルモです。彼は命令が下された後、工場の機械や数トンにもおよぶパーツが売却されようとしている中、
自分の身が如何なることになっても良いという覚悟で、機械やパーツを隠す決断を下します。
几帳面に機械やパーツを分類し、製作の全工程をノートに写しました。いつか必ず機械式時計が再び日の光を浴びることを信じて。

そしてゼニス社クオーツ化から9年後の1984年、その時はやってきます。
市場が機械式時計の復活を待ちわびていた時でした。シャルル・ベルモは
隠していた機械、パーツ、設計図などをゼニス社に返却しました。

当時機械式時計を制作するための機械代は、総計何億もの莫大な資金を要したのですが、
シャルル・ベルモが隠していた機械のおかげで資金面もすべてクリアすることができたのです。
現在ゼニス社が存続しているのは、シャルル・ベルモの勇気ある行動があったおかげなのです。

■コレクション
1 エル・プリメロ
ゼニスを代表する伝説的ムーブメント、「エル・プリメロ」を搭載したシリーズです。
エスペラント語でナンバー1を意味する名前の通り、当時世界で初めて開発された、
一体型自動巻きクロノグラフムーブメントでした。

さらに、3万6000振動を実現する高振動設計がもたらす高精度は、クロノグラフで世界最高峰とも言われています。
多くがオープンフェイスになっており、機械式時計の「命の鼓動」をその目でいつでも感じることができます。
また、かの伝説的ロックバンド「ローリング・ストーンズ」ともコラボし、彼らがアンバサダーとなって、
このコレクションを身に着けてライブパフォーマンスをしたことでも有名です。また、それにあたって限定モデルも発売されました。

2 エリート
1994年に開発された自動巻ムーブメント。エル・プリメロをベースに、クロノグラフ機構を
省略されて再設計されました。
薄くて耐久性に優れることで定評があります。
これもシャルル・ベルモがエル・プリメロの製造機械を隠していなければ、生まれていなかった名作のひとつです。
薄くて耐久性があるというところが、まるでクオーツ時計に見せつけるかのようで、ゼニスの職人魂が見える作品です。

3 キャプテン
ほとんどが革バンドの時計。値段も50万円代と比較的求めやすいのが特徴。大人向けの洗練されたデザインになっています。

4 アカデミー
コラボレーションや限定モデルの多いコレクションとなっています。
フリー・フォールで著名なフェリックス・バウムガートナーが2012年、3万9千メートルもの上空、
成層圏からのフリー・フォールを成功させました。その落下速度は音速を超え、マッハにまで達しました。
その時全面的にバックアップしていたのが、ゼニスです。アカデミーコレクションでは、
ゼニスは彼の偉業をたたえ、10本限定の時計を製作しています。

5 パイロット
1960年代から1980年代にかけての歴史的なクロノグラフ ウオッチを再現しています。
パイロットコレクションにも関わらず、オープンフェイスのデザインなど、
華奢な一面を残しているところはゼニスらしさ満点といったところでしょうか。

6 スター
女性用の時計コレクションです。丸みを帯びたデザインは品が良く、どんな場所にもつけていけます。
もちろんブランドを象徴するオープンフェイスも健在です。