複雑機構時計の名門『アンジェラス』がクロノグラフ腕時計にかけた歴史

『愛好家がたどり着く忘れ去られたマニュファクチュール』

これがアンジェラスを表現する、一番しっくりくる表現かと思っています。

アンジェラスの歴史を動画でご覧になる方はこちら↓


アンジェラスの歴史


1891年 スイスのル・ロックルでアルバート、グスタフ、チャールズの3兄弟が創業します。

初めの頃は、時計の部品を組み立てて納品するという分業体制の一部の会社だったのですが、そこから得られる技術を吸収し新しいものを生み出します。

アンジェラス創業者


1900年 アンジェラスの時計がパリ万博で金賞受賞

 

1904年 ムーブメントを自社製造

この時の取り扱い時計は、リピーター機能が入ってるものやクロノグラフを専門に手掛けていました。

創業当初から高い技術力を持っていたと言われています。

05 ベルギー万博
06 ミラノ国際博覧会
14 スイス・ベルン国際博覧会

で優秀な成績を収めていきます。

 

クロノグラフ腕時計に力を入れる

アンジェラス シングルプッシュ式クロノグラフ

1925年 シングルプッシュ式のクロノグラフ腕時計を発売します。


ロンジンの13znやバルジュー22の自社ムーブメントの発売から、10年経過しているとはいうものの、30mm前後の小型自社ムーブメントをこの早い段階で出してきているというのは、意外というか驚きですよね。

そして、自社ムーブメントなので、すでに高い技術力を持っていたのだと思われます。

スイスには、他にもたくさんの時計ブランドがありましたが、このように独自クロノグラフムーブメントを作れる会社というのは、ほとんどありません。

 

なぜなら、3針時計のムーブメントと比較して構造が複雑すぎて、別物だからです。

それゆえに、クロノグラフムーブメントを設計することができるメーカーは、あまりなかったんですね。



こうして、腕時計市場でも存在感を高めていったアンジェラスは、1935年 2プッシュボタン式クロノグラフを発表します。

アンジェラス 2プッシュ式クロノグラフ

2プッシュ式は、1933年にブライトリングがプレミエを発表しており、世界初とは言えませんが、ブライトリングのものは量産系ではなくプロトタイプであり、先に量産を確立させたのが皆様ご存知の『ユニバーサルジュネーブ』と意外にも『アンジェラス』だったのです。


それでは他社は、どのようにクロノグラフを販売していたかというと、先ほども言った通り、クロノグラフ機能を持つムーブメントというのは、複雑機構です。

ですので、基本的にはムーブメントを専門的に設計、開発する『バルジュー社』や『ヴィーナス社』から購入し、そのムーブメンとを自社用にコンバートして搭載させていました。


要するに、アンジェラスを含めこの頃同じ時代に活躍していた、レマニア、ミネルバ、エクセルシオパークなどは自社でクロノグラフムーブメントを製造できる、数少ない独立系マニュファクチュールだったのです。



こういった実力が認められるようになったアンジェラスは、1939年にはイタリア海軍を始め各国に軍用時計を納品していくようになります。

 

パネライの時計にアンジェラス製ムーブメントCal.240が搭載

代表的なのが、1954年 イタリア海軍に向けてパネライの時計にアンジェラス製Cal.240ムーブが搭載された皆様一度は見たことがあるであろう『ルミノールマリーナ』です。


軍用に採用されるとなると、確かな精度と堅牢性がないことには採用されませんので、それをも実現していたのでしょう。

実際には、こんな感じですね。


こちらは2005年に150本限定で復活を遂げた蘇り品です。

パネライ アンジェラスムーブメントCal240搭載の復刻版時計

 

ちなみに、1950年台にイタリア海軍が実際に使っていたルミノーマルマリーナが、2020年の11月の香港オークションで出品されたのですが、こちらはなんと2000万円近くで落札されています。

いや〜凄いですね!

パネライ公式サイト 香港オークション 



1942 クロノデイトを発表

アンジェラス クロノデイト

クロノグラフ機構に追加で、12時位置に月表示、6時位置に曜日表示がレイアウトされ、センターにポインターデイトを備えるトリプルカレンダーでした。

さらにこちらは、一般用では世界初の機能です。

元々クロノグラフは複雑機構であるのに対して、そこにさらに追加でデイト表示をも追加するので、超複雑機構を実現できたアンジェラスは、今でこそ知る人ぞ知るブランドになってますが、当時は最先端ブランドの1つだったと思われます。



1948年 Cal.250をベースとしたダトリュクスを発表

アンジェラス ダトリュクス

ダトリュクスは250の進化版であり、ビッグデイトとデイ表示、ムーンフェイズ機構が追加搭載されています。

デイト表示(数字の日にち)が搭載されたのは、アンジェらすが世界初でありここからも他を圧倒する技術力の高さを窺い知ることができます。



その後も、1956年にはデイトアラーム、1960年には、パルスメーター付きのクロノグラフが発表されましたが、1970年代に入ると、クオーツショックの煽りを受けてアンジェラス社も実質的な廃業になってしまいます。

2015年にはブランドが復活して、また新しい時計を発表しておりますがまだまだ他社と比較しても、ブランド力がないのはいがめないと思いますね。


アンジェラスのムーブメント

1939年 Cal.210のクロノグラフ

アンジェラス社から発売された初めてのキャリバーです。
基本スペックはこのようになっております

アンジェラス キャリバー210基本スペック

アンジェラス Cal.210

※アンジェラスCal.210


1940年 ほとんど同時期ではありますが、次期型215が発表されます。
このことから、210はどちらかというとプロトタイプ的な感じだったのかもしれませんね。
210とほとんど変わりはありませんが、リセットハンマーなどの形が微妙に違い堅牢製が向上されています。

アンジェラス キャリバー210と215の違い


バリエーションは
210 クロノグラフ 45積算計
215 クロノグラフ 45積算計
216 3針時計のため省略
217 クロノグラフ トリプルカレンダー 45分積算系 ポイントデイト
217は215にトリカレ機構を追加したものです。

アンジェラス210シリーズのバリエーション


1948年に次期型の250シリーズが発表されます。
250系の基本スペックを見てみましょう。

アンジェラス 250系キャリバー基本スペック

33.3mmあった215ムーブメントをさらに最小化させることに成功します。

サイズが、26.6mmにダウンサイジングされました。

アンジェラス キャリバー250

※キャリバー250


クロノグラフ、デイト表示が実現されていた250ムーブメントに追加でムーンフェイズ機能まで搭載されたものです。

アンジェラス キャリバー252 ムーンフェイズ機構搭載

※キャリバー252 ムーンフェイズ機構搭載

ダウンサイズし、パーツの簡略化に成功したと言われるムーブメントですが、その複雑機構がゆえに、実際には大量生産に向いておらずアンジェラスの中でも、Cal.210以上に入手するのが困難なモデルなのです。


250系のバリエーションを見てみましょう。
250〜258までありますが、実際にはクロノグラフは250と252だけなのですね。

アンジェラスムーブメント250系 バリエーション


アンジェラス 希少ムーブメントランキング


それでは次にアンジェラス 希少性ランキングを発表してまいります。

私の個人的な感覚値の話になりますが、1位が一番入手困難になります。

入手困難度
5位 cal.215
4位 217
3位 210
2位 250
1位 252

多分私の感覚と、皆様の感覚はあってると思うのですが、250と252はほとんど見かけることもありませんね。

また、先ほどもお話しした通り、アンジェラスは自社でもムーブメントを作ることができたので、他社にも提供しています。

そのため、アンジェラスが搭載されてる時計ってのは先ほどのパネライのように、いろんなメーカーが搭載しておりますので、時計ブランドとアンジェラスムーブメントの組み合わせを探すのも面白いですよね。

ちなみに私は、アンジェラスムーブメント・ミネルバブランドの時計を見かけるとときめきます。

ミネルバブランド アンジェラスムーブメント搭載クロノグラフ1

ミネルバブランド アンジェラスムーブメント搭載クロノグラフ Cal215

理由は、どちらもマイナーブランドですが2社が合体することで、オメガレベルに匹敵する個体時計になり得ると勝手に思ってるからです。

いわゆるダブルネームではありませんが、そういった希少性が、メジャーブランドの普及版クロノグラフを凌駕するってことですね。

アンジェラス1900年台前半から中盤のアンジェラスの時計は、私から見ればロンジンに匹敵する技術力を持っていたと考えています。

クオーツショックを乗り越えることができなかったのが残念ではありますが、ヴィンテージウォッチとして見た時にはやはりブランドの凄さを感じますよね。